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「未熟なやさしさ」


 卒業式の日の好美の告白により、

 吉野は自らの告白の機会を逸してしまった。

 吉野が好美に会って教室に戻った時には

すでにサクラナの姿はなかったからである。

 もちろん、

 そのことで好美をせめる気はまったくなかった。

 むしろ、

 好美の告白に驚きと戸惑いを感じていた。

 吉野は好美のそんな気持ちにはこの時まで気付かないでいたからだ。

 ただ、思い当たるふしはあった。

 冬休みのことである。

 好美が吉野の家を突然尋ねてきて

吉野が当時大のファンであった人気歌手のサイン入り色紙を持って来たのである。

 今にして思えばあれはひとつのサインであったのかもしれない。

 

思えば、

 好美は吉野が好きな歌手の雑誌のグラビアの切抜きを持ってきてくれたり、

吉野が大好きな推理小説を貸してくれたり、

自分から掃除当番を代わったりもしてくれたりと、

とても親切だった。

 吉野はとまどいながらもそんな好美の気持ちが嬉しかった。

 自分を好きになってくれた好美に何かしてあげたいと思った。


 どうしたらいいんだろう?


 この時、

 吉野が経験豊富な男であったなら、

 迷わず、

 このまま何もしないでいただろう。

 しかし、

 吉野はこういう形で告白を受けたのは

はじめてだったのでその扱いに困ってしまったわけである。

 そのときの吉野にはこのまま何もしないでいることが

悪いことのようにも思われた。

 そこで、

 考えたあげく、

 好美を一度だけデートに誘うことに決めてしまった

--実はこの決断がサクラナとの関係の躓きのはじめであることを

吉野は知る術もなかった--。


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