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「卒業前の日帰り旅行?」
そうするうちに、
入試シーズンも終わり、
吉野をはじめとする六人のメンバーの進学先が決まった。
吉野は某私立大学の付属高校に、
サクラナと康夫と健児は中堅の都立高校に、
弘子と好美は同じ私立の女子高校に、
それぞれ決まった。
ランクこそ違ったが、
それぞれ第一希望の高校だった。
あとは卒業を待つのみである。
卒業式を前に、
クラス全員で日帰りで旅行することになった。
場所は某スケート場のある遊園地である。
吉野は本当ならサクラナと一緒に行けるので嬉しい筈であったが、
その旅行だけは気がすすまなかった。
理由は簡単なことだ。
予定では、一時間程スケートをすることになっていたが、
吉野は一度もスケートをしたことがなく、
そのため、
ぶざまに転ぶことは目に見えていて、
そんな姿をサクラナに見せたくなかったからだ。
しかし、
一人だけ行かないわけにもいかず、
いやいやながらも吉野は出かけた。
バスの車内では、
みなおしゃべりなどをして楽しんだが、
吉野は今一つ気分がのらなかった。