「手編みのマフラー」
そのうち、期末試験が始まった。
皆これまでになく真剣に取り組んだ。
もちろん内申書を左右する重要な試験であったこともその要因に違いないが、
皆をそうさせた一番の要因はやはり例のカンニング事件であった。
そして、
その甲斐あってか、
クラスの平均点はいずれの科目も吉野のクラスが一番であった。
特に、
吉野の班は出来が良かった。
そこで、
吉野たちはクリスマスも近付いていたので祝勝会を兼ねて
弘子の家でパーティを開くことにした。
その時、
それぞれが持ち寄ったプレゼントの交換が行われた。
吉野は姉に頼んで買ってきてもらった人形を持っていったが、
それは好美のところにいった。
吉野のところには、
サクラナの手製のピンク色のマフラーがきた。
そのマフラーはピンクだし、
しかも、
型がなんとなく古臭く、
普通ならとても身に着ける気がしない代物であったが、
サクラナのお手製であることがそんなことを忘れさせた。
吉野はそのマフラーを今でも持っている。
サクラナに未練があったからだ。
ただ、
妻の由美にはそれをいえないので、
亡くなった祖母の形見であると嘘をいってある。