「勉強会と好意」
あのカンニング事件をきっかけに、
吉野のクラスはまとまりだした。
カンニングをしたクラス
ということで他の教師やクラスから白い目で見られたことから
クラスに一種の連帯感といったものが生まれたのである。
そして、
クラス全体が
--期末試験で他のクラスを見返してやりたい--
という雰囲気で包まれた。
そこで、
弘子の提案により各班で勉強会を開くことになった。
吉野の班は
弘子とサクラナのほかにカンニング事件の首謀者大野康夫、
その共犯者多田健児、
そして、
おとなしく内気な奥村好美というメンバーであった。
この中では、
吉野は一番勉強ができたので、
吉野が教師役となり他の五人が生徒役となった。
勉強会は弘子の家で行われた。
彼女の家は、
さすがに代議士の家だけあって、
なかなかの豪邸で門を入ってから百メートルぐらいして
はじめて屋敷に辿り着くという広さであった。
もちろん、
中にはメイドがいてお菓子、
ジュースなどを運んできてくれた。
勉強会は彼女の屋敷の二階にある子供部屋で行われた。
そこは20畳近くの大きな部屋で、
普通のおもちゃ屋には置いていないような外国製の変わったおもちゃが
たくさんあった。
そのため、
勉強会というよりお遊び会とでも言ったほうがよいくらいであった。
それでも、
宿題が多いときなんかはけっこうまじめに皆勉強したものだった。
そして、
この勉強会を通じ吉野はサクラナと次第に仲良くなっていった。
ただ、
吉野は勉強を教える際には、
サクラナにばかり優しくしないようにと気を使い、
かえって男に対する教え方の方が優しいぐらいであった。
が、
それがかえって女子の好感を生んだようで、
サクラナをはじめとする女子三名は吉野を慕っているようであった。
しかし、
それが単なる好意であるか否かは吉野には良くわからなかった。
そのため、
吉野はサクラナに対してその思いを告白することは出来ずにいた。