18/83
「好対照の弘子」
そんなサクラナと反対に、
弘子の人気は高かった。
彼女は美人というより可愛らしい顔をしていた。
ショートヘアーに、
真ん丸顔、
大きな瞳、
やや上を向いた鼻に、
小さめの受け口がバランスよく配置されていて、
一見するとすごく可愛いかった。
それに明るくて、上品な雰囲気も漂わせていた。
だから、
下町育ちの生徒が多い吉野のクラスメイトのなかでは
彼女はとても垢抜けて見えたのである。
実際、彼女は保守系の衆議院議員の三女で、
どうして公立の中学校に入ったのか
不思議なくらいであった。
この点、
彼女の弁によると、
父親がスパルタ思想の持ち主で
たくましく育てるために公立中に入れたと言うことであったが、
私立中の入試に落ちたという噂もあり、
真偽のほどは定かでなかった。
そんな弘子であったが、
吉野は彼女のことはあまり好きではなかった。
好みの顔でなかったこともあったが、
彼女のでしゃばりで見栄っ張りなところがいやだったからだ。