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「封筒の中身と池田」


 声の主は池田だった。

 吉野の後をつけてきたのである。

 「今、出る」

 吉野は個室から出ると、持っていた便箋を吉野に渡した。

池田はそれをしばらく見ていたが、首を傾げながら、  

 「ふ~ん、これのどこがおかしいんだ?可愛いじゃないか」

 と言った。

 吉野はそれに答えず、

黙って写真の入った封筒を池田に渡した。

 池田は封筒から三枚の写真を取りだし、

ふむ、ふむと言いながら一枚、一枚じっくり見た。

 そして、

 「ほら」

 と言って、吉野に写真を渡した。

 一枚はサクラナが妹らしい女の子二人と写っている写真であり、

一枚は弘子と二人で写っている写真、

最後の一枚はサクラナ一人だけの写真である。

いずれの写真も最近撮られたものらしいが、

黄色いTシャツに、麦藁帽子をかぶり、ジーンズをはいて、

妹らしい二人の少女と一緒に笑っている写真が吉野は気にいった。

 吉野は写真を見終わるとそれらを池田に返した。

池田は写真を受け取ると、

 「ありがとう。でも、これはいらないよ。処分してくれ」

 と言いながら便箋と吉野が気にいった写真一枚を吉野に渡し、

 にっ、と笑った。

 「給食がなくなっちゃうよ。教室に戻ろう」



 その日、吉野は家に帰ると自分の部屋に閉じ籠り

一枚の便箋と写真を見ながら考えた。



 「この絵ひとつ書くには最低一時間はかかるだろう……

普通ならこうまで丁寧に絵を描かないだろう……

ここに彼女の人柄が現れている。だとすると、

サクラナは噂になっているほど性格は悪くないかもしれない……

きっと、根はいい子なんだ。

でも、何故、彼女はあのときあんなこと言ったんだろう……?

もしかすると……

彼女はおれの気持ちに気づいていたのかもしれない?

考えてみれば彼女をいつも見ていたのだから

彼女が気づいたとしても不思議ではない。

だから、

自分に気があると思ってつい口をすべらせてああ言ったんだ。

ところが……

返ってきたのはそれを否定する言葉だ。

それで、かっこうがつかなくなってああ怒って見せたんだ。

多分、彼女が怒ったのはそのせいだ。

そうに違いない。

だとすると、それは自然なことで彼女は決して傲慢なんかじゃない。

むしろ、

“あんたが欲しいんじゃないの”

と鋭い所を突かれて逆上した自分の方がよっぽど悪い……

それにしても、

池田はどうしてこれをくれたのだろう?

池田も自分のサクラナに対する気持ちに気づいていたのかもしれない。

だから、

あの時、

「にっ」

と笑ったのかもしれない。

それにしても、いつ、悟られたのだろう?

昨日の朝、自分がコロンをつけて朝早く登校してきた時か?」        


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