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モブな私は自由なはず‥‥うるさいですわよ!ヒロインども!!  作者: おかき


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41話 賢さに身分は関係ありません

学園に入り暫く経った頃。


ようやく姉のマリナが滞在している伯爵家に行く事が出来る。

明日は学園のお休みの日。エリアナはお義兄様を治療するために伯爵家に向かうのだ。


明日は大好きなお姉様に会える!

朝からエリアナはご機嫌でいた。


だが、今日は朝の騎士科が終わると領地経営科での授業が一日続く。


明日の事でご機嫌半分。

領地経営科での事を考え、うんざり半分だった。


セドリックや殿下達とは教室の前で別れ、エリアナは一度ため息を吐くと、教室へと入った。


領地経営科のクラスの雰囲気は最悪としか言いようが無かった。


この教科を選ぶ者は、将来の家門の当主になる者が主に選択する。

家門の次男次女も、将来家に残り当主を支える為にこの教科を選択する。


他は、将来の夫や婿入り先を支える為に学びたいと選択した者が殆どだ。


中には平民の者もいる。

貴族の学園に平民が入れるのは特待枠で、貴族の支援を受け学園卒業と同時に支援してくれた貴族家に仕える事になる。

平民にとって、将来を約束された出世コースなのだ。


エリアナとケイシーがいる学年は、貴族の後継は二人しかいない。

平民は三人。他は他家に嫁ぐか婿入りする者だ。


そう。運の悪い事にクラスはエリアナを敵視する者ばかりだった。

クラスの中にはギルドに所属する者もいるが、エリアナのギルドでの噂は良い方と悪い方と別れてしまう。


(この雰囲気だと、悪い方を聞いているのね……。まぁ、どうでも良いけどね。)


平民の三人だけは、エリアナを敵視もしなければ他の貴族達と一緒にいない。

関わらない事を選んでいた。


(このクラスで一番賢いのは、この三人ね。初日から誰とも関わらず三人で過ごしている。状況判断をする能力が高いのね。)


入学式の正門での事を目撃したクラスの者は。


エリアナはエイミーとセドリックの恋仲を引き裂き、セドリックを誑かし婚約した悪女とされていた。

しかも、学園に入り王太子殿下も誑かした挙句、殿下にお願いして婚約者であるイザベルを謹慎させた。


学園ではそんな噂が広がっている。

らしい……。


(意味が解らない……。)


エリアナは席に座りながら、空気の悪さにため息を吐いた。


ケイシーも改善されないクラスの雰囲気に、うんざりしていた。

側にいるケイシーはエリアナがそんな人間で無い事を知っている。

姉と自分を救ってくれた、恩人なのだ。


(貴族のくせに噂に惑わされるだけなんてね……。次期当主の二人も、たかが知れてるわね。)

ケイシーはクラスにいる伯爵家と男爵家とは将来的に縁を持たない事を決めた。


始業の鐘がなり、授業が始まる……。

授業中だけは煩わしさから解放される時だった。



授業が終わり休憩の時間になった時に、エリアナとケイシーがふとある事に気が付いた。

いつもは休憩時間になると、エリアナに対し不躾な視線やひそひそと囁やき合う声がするのだが……。

今日はそれが無い。

とは言わないが、少ないのだ。


今迄チラチラ見ていた生徒が、いっさいエリアナ達を見ない。


不躾な視線も囁やきもない。

エリアナとケイシーは顔を見合わせて、不思議そうにする。


(静かならそれで良いわ。)


エリアナはこのクラスに馴染む事は選ばず、放置する事に決めていたのだ。



実は、大人しくなった生徒は家の者に呼び出され、エリアナとの事を問いただされていたのだ。


セドリックとエリアナとの婚約は、公爵家からのたっての希望であった事。


セドリックはエイミーを心底軽蔑し、嫌っている為恋仲などあり得ない事。


また、王太子殿下がエリアナやセドリックといる事は王家の意思である事。



学園での噂ばかりを信じ、調べもせずに他者を見下す。

叱責されて当然なのだ。

各家の当主は我が子の思慮の浅さに呆れつつも、これ以上のエリアナに対する失態は許さない事を厳命していた。


話の内容は全て他言する事は許されず、叱責された生徒達はエリアナに対する自身の失態を後悔する。

だが、他言出来ない為どうやってエリアナに謝罪するかを考える。

入学してからのエリアナへの態度を考えると、謝罪するタイミングを見つけられずにいた。


クラスはモヤモヤする生徒達が大半な為、違う空気の悪さに包まれていたのだ。





チラリとエリアナのクラスを覗きに来たのは、セドリックだった。

エリアナのクラスの様子を確認すると、安心したのか自身のクラスに戻ろうと振り返った。


振り返った先には、殿下とアーネットとメレニーがいた。

「何処に行くかと思ったら……。エリアナ嬢のクラスに手を回しただろう?」


殿下の呆れた声に、セドリックはニッコリ微笑んだ。


「当然対処します。自分達で気が付けば手を回す事も無かったのですよ?でも、頭の悪い者ばかりですからね。

リアを煩わせる者は、排除するだけです。」

ニッコリ笑うが、三人は呆れ顔でセドリックを見る。


「私で済んで良かったと思いますよ?私が手を回さなければ、母が動いたでしょうから。母はリアをとても可愛いがっています。母が動く方が大事になりますよ?」


セドリックの言葉に、殿下が

「確かに……。」

殿下がポツリと呟いた。


アーネットとメレニーは顔を青褪めさせるが、セドリックと殿下だけは何事も無い様子でクラスに戻る。

アーネットもメレニーも、エリアナとケイシーが静かに過ごせるならば……。

と、セドリックの行動を無理矢理に納得する事にした。





セドリックはアーネットを使い、ケイシーから授業の様子をいつも細かに聞いていた。

騎士科の一部の生徒と領地経営科のクラスの話を聞いて、対処するタイミングをセドリックは見計らっていたのだ。


愛するエリアナが静かに過ごせない煩わしさを排除するべく、ハーマン公爵家の名を出し領地経営科に在籍する家門に軽い抗議の書面を送り付けたのだ。


送り付けられた各家は、突然のハーマン公爵家からの手紙に慌てふためく。

中を確認すると、自身の子供達の失態が書き連ねられている。

当主を始め、家族が慌てふためくのも無理は無かった。

ハーマン公爵家だけでなく、王家の名も記されていたからだ。


当主は我が子を呼び出し、状況を説明させる。

顔を青褪めさせる両親に、ただ事では無いと流石に生徒達も察する。



セドリックの裏の手回しで、エリアナの周りは暫くは静かになるのだった。


もう一つ、セドリックが手を回した家門があった。

平民を特待枠として後ろ盾となり、学園に入学させていた家門だった。


セドリックは三家に、家門が選んだ平民の判断能力の高さと家門に対する忠義心の強さを褒めた手紙を送ったのだ。

当然そこには、他家の失態も書き連ねてある。


平民を特待枠にしていたのは、伯爵家と侯爵家二家。

三家には、ハーマン公爵家から噂に惑わされる事なく婚約者であるエリアナに対し、不躾な態度もせず自身の立場を守る為に最善の手を打った事が褒められていた。


平民は小さな失態で貴族から簡単に切り捨てられるのだ。

判断能力の高さは貴族ですら難しい。


誰の味方もせず、侍る事もしない。


平民だけで貴族学園を過ごす事は、かなりの勇気が必要となる。

それを選ぶ事が一番の安全策ではあるのだが、貴族の中で平民が孤立する判断は中々出来ない。

権力に逆らえないからだ。


手紙には選んだ平民の素晴らしさ、そして後ろ盾となった家門の素晴らしさを暗に褒める書き方をした。


セドリックからの文の最後に記された名前に伯爵家も侯爵家の二家も驚愕する事となる。


記された名前はセドリックではなく、ハーマン公爵家の当主パトリックの名前だからだ。


各家は平民三人を各々呼び、生徒達を事更に褒めた。

当主から説明を受け、自分達の判断が適切であった事に安堵した。

平民の彼等は、家族の為に稼ぐ為に貴族と関わる事を選んだ。

平民からすれば恐ろしい貴族学園に入るのだ。


絶対に失敗は許されない。


三人は特待枠で知り合い、仲良くなると同時にいつも自身の考えを話し、三人で対策を出し合っていた。


三人は後ろ盾となってくれた家門の為に、必死に学び恩返しをし家門の支えとなりたかった。

だが入学してから領地経営科の空気は悪く、平民の自分達はどうするべきか悩む毎日。


エリアナの事は、冒険者ギルドの仲間に聞いて知っている。

領地の民の為に冒険者になり、子爵家の為に尽くしている事を。

平民からすれば、素晴らしい理想の令嬢だった。


ギルドでのエリアナの話も、家門を貶められたからだと真実を聞いていた。


孤立するエリアナの味方になりたかったが、他家の貴族が敵に回ると考えると声をかける事も出来なかった。

ならば、誰にも付かない。

誰の味方もしない。

三人で話し合って決めたのだ。


当主からは褒められたが、エリアナに味方しなかった事で繋がりを持つ事が出来なかった。



「エリアナ様と話をしたかっなぁー。俺の知り合いの冒険者は、エリアナ様と会話をした事があるって自慢するしさー。

エリアナ様とクラスが一緒だから、話せると楽しみにしていたのに……。」


テーブルに顔を伏せ、そう呟くのはトニーだ。伯爵家を後ろ盾にしている。


同じテーブルには、侯爵家が後ろ盾のマークとジルもいた。


「本当にな!領地経営科の空気の悪さには、うんざりだよ。

エリアナ様が噂通りの人じゃないのは、見てて解るじゃん!綺麗で頭も良くて優しくて。しかも、Sランクの冒険者で領民を大切にしているしさー。

俺だったら、エリアナ様の領地に喜んで移住するよ。」

ジルが興奮しながら、エリアナについて語っている。


「あの男爵令嬢達の話を不思議に思わない貴族は何なんだろうな?

俺等平民が聞いても、嘘ばかりなのが解るのに……。」


マークが男爵令嬢達の話を思い出して、トニーとジルに問いかけた。


トニーとジルも暫し考える……。


「「「貴族の考えは理解出来ない。」」」


平民三人が考えても答えが出ない時にいつも口にする言葉だった。


三人は各当主から褒美として金一封と喫茶店で好きな物を食べて良いと言われお店に来ていた。

沢山のケーキを頼み、家族へのお土産のケーキも買って良い許可も貰っていた。


このお店は、エリアナのお店なのだが誰も知らない。

このお店は、紹介された者しか入れない秘密のお店なのだ。

秘密のお店としている事にしたのは、セドリックだ。

エリアナに関わる者だけを案内出来る店として学園に入ってから開いた。


ハーマン公爵家からの御礼として、特待枠の平民にこのお店の許可を与える事も記した。

当主達には、本人に話さないように伝えてある為この三人は真実を知らない。


当主達には母のセリーヌがエリアナ監修のもと開いたお店を紹介してある。

これも秘密のサロンとして、密かに社交界での話題の中心にある。


これで、この三人は後ろ盾の家門から絶対的な立場で守られ事になる。


セドリックはこの三人を手に入れたかったのだ。

この三人はエイミーや殿下の側近達がいる、貴族科にも在籍しているからだ。


王太子殿下と現側近。

そして、セドリックは盗み聞きをしていた。


「こんにちは。お邪魔するよ。」


三人に突然声をかけて来たのは、セドリックだった。

後ろには、王太子殿下と男子生徒が四人いた……。


平民が公爵家や王太子殿下と同じ場所にいるだけで不敬とされる事もある。


三人は今にも倒れそうな顔色で、椅子から崩れ落ちてしまった。


殿下の後ろに控えていた生徒が、三人を助け起こし椅子に座らせた。

訳が分からない三人だが、生きた心地はしない。


セドリックが側にいる四人に声をかけ、殿下と共に奥に消えた。


残っていた四人の生徒に声をかけられたトニーとマークとジルは、殿下とセドリックが向かった奥の個室へと連れて行かれた。


扉を開けられ、中に入るように言われた。

三人は死刑台に向かう気持ちとなっていた……。


中に入ると、大きな円卓のテーブルがあり正面にセドリックと王太子殿下が座っていた。


「名前はトニー君、マーク君、ジル君で間違いないかな?」


セドリックの問いかけに、小さく頷く三人……。


「とりあえず座ってくれ。」


殿下とセドリックを正面に、三人が並んで座る。助け起こしてくれた四人が別れて三人を挟むように座った。


執事の様な人が入り、お茶やケーキを置いて出て行った。

美味しそうなケーキも、今は何の感情も起きない置物と化していた。


「楽にしてくれ。と言っても無理だよね。単刀直入に話そう。私達に協力して貰いたいのだ。」

セドリックが三人へと話しかける。


「私達に協力って……。何も出来ないですよ?平民ですし……。」


トニーが恐る恐る返事をするが、セドリックが首を振る。


「君達が婚約者であるエリアナへと行った対処法は見事だった。あのクラスで上手く立ち回ったのは、君達三人だけだね。

エリアナも君達の対処に対して、関心しているはずだよ。」


セドリックの言葉に、三人はお互いを見遣り落ち込んで行く。

あからさまに落ち込む三人に、殿下が声をかけた。


「どうしたの?セドリックの話に何か思う事があったのか?」

心配そうに声をかける殿下に、三人はハッとなり頭を下げた。


「「「申し訳ありません!!」」」


三人は不敬な態度をしてしまったと、今度は顔を青褪めて行く。


「この部屋では爵位や平民とか気にしないで欲しい。良いね?

で、何を落ち込んでいるの?」

再度、殿下が尋ねてきた。


「エリアナ様の話しが出たので……。私達はエリアナ様が噂のような方ではないと知っています。知っていたのに、エリアナ様の味方にもならず、クラスの皆に説明もしなかった。

卑怯にも、傍観者に徹したのです……。だから……。」


トニーの言葉を聞いたセドリックは、

「自分達を卑怯者であったと言いたいのかい?」

そう問いかけた。


三人はその言葉に、小さく頷いた。


「あのクラスでまともなのは、君達三人だけだとエリアナが言っていた。

君達が行った行動は間違いではない。最善策なんだ。でも、平民が孤立する事は恐怖でしかない。

君達三人の行動は、後ろ盾の家門を守り自身も守る行動だが平民である君達が孤立する事を選択するのには、勇気がいったはず。

エリアナも私達も君達の行動を素晴らしいと思っているよ。

これからは、私達が守るから。平民が怯える学園生活にならないように努力しよう。」


セドリックの言葉に、自分達の後ろ盾をしてくれる家門を守れた事に安堵する。


エリアナ様は自分達を嫌わずにいてくれた。


何より、公爵令息に褒められた事を嬉しく思う。


「良かった……。でも…怖かった……。」


ジルがポツリと零した一言に、三人は泣き出してしまった。


毎日毎日、貴族の権力に怯えながら学園に通っていた。


恐怖から解放され、安堵の涙を流したのだ。


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