24話 神様のお気に入りとは?
唖然とする両家の家族に、エルランドさん。
皆の視線がとても突き刺さる⋯⋯。
「最初から説明します。」
セドリックが丁寧に説明を始めた。
各エリアを攻略し、最終エリアの討伐も成功した事。
その時に、神様が現れてこの世界の説明をしてくれた事。
エリアナとセドリックは、神様からギフトを授かった事⋯⋯。
セドリックの説明は終わったが、部屋の中は静寂に包まれ誰も口を開かない。
「神様はエリアナを特に気に入っているようです。」
セドリックがそう付け足した。
「はぁー。こりゃまた凄い話しを持って帰ってきたなー。」
エルランドさんが、大きなため息をついた。
「鑑定をした方が良いな。受付に行って来るからちょっと待っててくれ。」
エルランドさんが立ち上がり、部屋から出て行った。
両親達は、何を聞いて良いのか解らずにいる。
直ぐにエルランドさんが魔道具を持って帰ってきた。
テーブルに魔道具の水晶を置き、エリアナから魔力を流すように言われた。
水晶をチラリと覗く。
魔力⋯最大値
属性⋯全属性
スキル⋯生成・鑑定・聖魔法(浄化)
ギフト⋯神様のお気に入り
「ブッッ!!」
エルランドさんが、いきなり吹き出した!
「なんだこのスキルは!!登録した時より色々増えてるぞ!!」
鑑定・聖魔法・神さまのお気に入り
が、追加されていた。
エルランドさんの絶叫に、両親が不安な顔をしている。
「あの⋯⋯ギルドマスター。私達にも見せて頂けませんか?」
ギルベルトが恐る恐る尋ねた。
「そうだな。これは全員認識した方が良いだろう⋯⋯。」
子爵夫妻が水晶を覗いて固まった⋯⋯。
公爵夫妻もエルランドさんの許可を得て、水晶を覗いた。
やはり、固まってしまっている。
エリアナは困った顔でセドリックを見た。
「次は私をお願いします。」
セドリックが同様に水晶に手をかざした。
魔力⋯最大値
属性⋯水属性・光属性
スキル⋯聖魔法(治癒)
ギフト⋯神の加護
セドリックの鑑定も見て、全員が思考が纏まらずにいる。
「どうしたもんか⋯⋯。とんでもないスキルを受け取ったなぁー。」
エルランドさんは、肘置きに肘を突いて頭を抱えた。
エリアナは居心地が悪かった。
「えっと⋯⋯。どうしましょう?」
エリアナがおずおずと問いかけた。
「神殿に知られたら、二人は神殿から狙われる。セドリック殿の治癒は神殿が一番欲しがるスキルだしなぁー。しかも加護付きとなるなら、神殿に入る事を勧められるのは確定だな。」
エルランドがそう説明してくれた。
「治癒魔法で人々を助けるのは、素晴らしい事じゃないの?」
エリアナは素直に答えた。
だが、エルランドが首を振る。
「民を救える治癒魔法は、確かに素晴らしい。だがな、セドリック殿は治癒魔法と神様の加護を受けている。100年ほど前にいた聖女様と同じだ。
まー男性だから、聖人様になるがな。」
エルランドがエリアナを見る。
「神殿にいれられたら、エリアナとの婚約は白紙にされる。聖女、じゃない聖人様の婚約者は神殿が決定するからだ。」
(嘘でしょう?やっとダンジョンを攻略して、神様が強制力を防いでくれたのに⋯⋯。)
エリアナの顔がどんどん青褪めて行く。
セドリックはとても不機嫌になった。
「なぜ私の婚約を他人が決めるのです。リア以外との婚約なんて死んでも嫌ですが!」
セドリックがエルランドに抗議した。
だが、ギルドと神殿は管轄外であり仲がとても悪いのだ。
「俺も神殿は嫌いだ。やつらは金儲けでしか魔法で治療をしないからな。何とかしてやりたいが⋯⋯。」
エルランドも何か手立てがないか、考えている。
「陛下に言っても無駄だろうか?」
ギルベルトがポツリと呟いた。
「陛下はセドリック殿の治癒魔法を知っているのですか?」
エルランドが問いかけた。
「エリアナ嬢との婚約に、アーノルド殿下が不服を申し立ててな。その時に話はした。エリアナ嬢と婚約出来なければ、息子は駆け落ちでもするだろうと。
治癒魔法持ちが他国に行っても良いのかとな。」
公爵がそう説明する。
エルランドが顎に手をやり、暫く黙り込んだ。
全員、エルランドの答えを待つ。
「陛下にお伝えしても、神殿が出てくるとやはり厄介だな⋯⋯。」
エルランドさんも色々と考えるが、結論が出ない。
セドリックが、
「厄介な加護をつけやがって。あの駄神めっ。」
ポツリと愚痴を零した。
その時、セドリックの隣に神様が来た。
宙に浮く子供に、全員の顔が引きつる。
両親達はガタガタ震えだし、抱き合っている。
エルランドさんですら、顔色が悪い。
セドリックは神様を見て、不機嫌丸出しだ。
『酷くない?加護を厄介だなんてさー。』
その軽口に、セドリックがキレてしまった。
「ふざけるな!お前が付けた加護のせいで、リアとの婚約が無くなるかもしれないんだぞ!
やっとリアを物語から引き離せたと思っていたのに⋯⋯。更に厄介事を負わせやがって。加護を今直ぐに外せ!!」
セドリックのあまりの剣幕に、神様は口を開けて驚いている。
神の加護とお気に入りは、神様からの最大のギフトなのだ。
だが、そのせいで二人を不幸にしている。
エリアナの顔を見ると顔色がとても悪い⋯⋯。
『ご、ごめんなさい⋯⋯。二人に最大の贈り物を渡したかったんだ。二人を好きになったから⋯⋯。』
神様はポロポロと泣き出してしまった。
セドリックの怒りはそれでも収まらない。
「泣いても加護を外すまで許す事はない!」
セドリックの厳しい口調に、神様はビクッと肩を揺らした。
エリアナはセドリックを抱きしめ、落ち着かせる。
『加護は死ぬまで外れないんだ⋯⋯。』
その言葉に、エリアナが絶望する。
膝から崩れ落ち、呆然としている⋯⋯。
「やっと、やっと⋯⋯。」
やっと物語から離れられる⋯⋯。そう思っていたのだ。
エリアナは言葉を発する事が出来なかった。今迄頑張った事が無駄に終わったのだ。
『あ、あのさ⋯⋯。なぜセドリックとエリアナの婚約が無くなるの?』
神様のその言葉に、全員が「はぁ?」
である。
「神殿が聖女や聖人を取り込むからです。民の為の治癒を施すのが神殿です。
神様を崇める神殿が加護持ちを迎えたいのは当然ですから。」
エルランドの説明で、神様が納得する。
『セドリックが聖人になるからだね!なら、聖人にならなければ良いだけだろう?』
「それが出来ないから悩んでるんだよ!」
セドリックがまたキレてしまった。
『ご、ごめんなさい。そうじゃなくて、聖女が別にいれば良いだけだろう?
エリアナの薬の生成には、セドリックの光魔法と神の加護が必要になる。だから、セドリックの加護はなきゃ駄目なんだ。』
エリアナが神様の言葉を聞き、ある事に気が付いた。
エリアナは、神様に視線をゆっくり向けた。
「もしかして⋯⋯。全て私の為なの?」
震える声で神様に問いかける。
『セドリックが加護持ちに値しなければ、エリアナの身近な人に授けるつもりだったんだ。
でも、セドリックは良い奴だし、エリアナのことを大切にしてて大好きだからセドリックに加護を授けたんだよ?』
神様はニッコリ微笑み、エリアナを見つめる。
(全て私の為なの⋯⋯?なぜそこまで⋯⋯?)
「なぜ⋯⋯。」エリアナは声が震え、言葉にならない。
『僕はね、世界を創るだろ?幾人かの転生者をこの世界に呼んだんだ。エリアナがいた異世界だけじゃない。存在する幾つもの世界から転生してもらった。
初めは皆喜んでくれたけど、やっぱり欲深くなっちゃってさ。僕の世界を穢してしまうんだよ。』
神様はしゃがみ込むエリアナの側に来た。
エリアナの頭を優しく撫でながら話を続ける。
『エリアナは転生者だと気が付いても、誰にも知られないようにしていたね。僕は不思議だったんだ。転生者と名乗り出れば、家も領地も潤うのに、何でそうしないのか⋯⋯。
僕は気になってエリアナを覗いていたんだ。』
神様がエリアナの前に降り立った。
『エリアナはいつも誰かの為に頑張っていた。勿論自身の為でもあるよ?でも、違う。誰かの為に一生懸命のエリアナは綺麗だった。
私が見てきた誰よりも、輝いていたんだ。僕はエリアナの生きる姿を、作り上げる物語を見たくなったんだ。』
エリアナは神様の話を一言も忘れないように胸に刻む。
涙に濡れる頬を神様が拭った。
『お姉さんの事を何とかしてあげたかったけど、僕は干渉出来なくてさ。エリアナの助けをしたくて、この道を用意したんだ。』
セドリックを神様が真剣な眼差しで見つめる。
『セドリックの加護は、エリアナの為だけに贈ったんだ。セドリックが死ぬ事があったなら、エリアナの側の誰かに贈る。
エリアナの為だけの加護だ。』
セドリックは何も言えずにいた。
神様のエリアナに対する想いは、愛や恋ではない。
エリアナの全てを、生きる様を気に入っているのだから。
お気に入り⋯⋯。
その言葉通りなのだ。
エルランドが意を決して、神様に問いかけた。
「神様。一つお聞きしたい事があります。」
神様は声をかけてきたエルランドに顔を向けた。
『何?答えれる事なら聞くよ。』
「聖女をどうやって現すおつもりでしょうか。それに⋯⋯。
聖女が現れたとして、エリアナとセドリックを守る術となりますでしょうか。」
エルランドの問いに。
『今直ぐに聖女を作る事は危ないかなー?エリアナと仲良い人物が相応しいじゃん?しかも、魂が綺麗でなければならないし⋯⋯。』
神様も悩んでいた。
『良い事を思いついた!エリアナは学園に通うでしょう?そうしたら友達?仲間が出来る。その中から僕が聖女に相応しい人物を選ぶよ。
ダンジョンならば僕の力も使えるし、魂の見極めもしやすい。エリアナの仲間じゃなくても、選ぶかもしれないけどね。』
エルランドが神様の話を聞いて、策を練る。
「解りました。学園のダンジョンを今年は封鎖します。エリアナはダンジョン攻略者として、来年は全ての生徒達の補佐をし同行してもらう。
ダンジョン内でのエリアナとの相性等、神さまの選定をしてもらうには調度良いだろう。」
エルランドの話は、乙女ゲームを来年の入学と同事に再度スタートさせる事になる。
「エルランドさんの案は物語を学園と同事にまた始める事になるのでは⋯⋯。」
セドリックは話ながらエリアナに視線をやる。
子爵夫妻、公爵夫妻もそれに気が付き、心配そうにエリアナを見る。
(神様が私の為に沢山の事をしてくれた。私の思いを叶える為に⋯⋯。)
エリアナは自分の両頬を、パシン!と叩いた。
「決めました。エルランドさんの案を受け入れます。私の為に神様がしてくれた事に報いる為にも。お姉様とお義兄様の為に。
そして、セドの為にも頑張ってやるわっ!!」
エリアナは両手に拳を作り、気合を入れた。
『アハハハ!やっぱりエリアナは最高だよ!』
そう言ってエリアナの周りをクルクル飛び回った。
神様はエルランドの前に飛んで行くと、とんでもない話をした。
『あとさー。多分勘違いしてると思うけど。
神の加護より、お気に入りの方が格は上だよ?お気に入りは僕を好きに使えるんだからさ!セドリックをエリアナより格上にするわけないじゃん!』
重大な話を言うだけ言うと、神様は勝手に消えた⋯⋯。
その場に残されたものは暫く動けなかった。
エリアナに視線を全員が向けたまま固まる様は、エリアナにとって恐ろしい⋯⋯。
エリアナは暫く皆の視線を集め、居心地の悪い中全員の意識が現実に戻るのを待った。




