23話 神様に愛される二人
神様も一緒に眠るという貴重で珍しい経験をしたエリアナだが、そんな事に興味は無かった。
エリアナは朝早くから起きて、神様からのリクエストである、おにぎりを沢山用意していた。
神様とセドリックを起こして、朝食を出す。
目の前に出されたおにぎりを見て、
『おにぎりは異世界で色んな味があったなぁー。僕も食べてみたいなー⋯⋯。』
神様の独り言を聞いたセドリックがエリアナを見る。
「色んな味があるのですか?」
セドリックは密かに、おにぎりが気に入っていたのだ。
「沢山あったわね。コンビニ⋯は、解らないか。お店で売ってるおにぎりも種類は沢山あるし、家庭で工夫していて売ってはいないけど色々なおにぎりがあったわね。」
セドリックが何やら考えている。
神様は私達を無視して、何個も塩にぎりを食べている。
「食べ過ぎじゃないかしら⋯⋯。」
エリアナが神様に言った時には、既に残りが少なくなっていた。
夢中になり過ぎて食べ過ぎた神様は、申し訳なさそうにしょんぼりする。
「神様。おにぎりは美味しかったですか?」
エリアナが笑顔で神様に問いかけた。
『うん!美味しかったよ!また作ってくれる?』
(今日の神様は可愛いわね。)
エリアナはクスリと笑うと食器を片付けた。
「あ!神様にもアイテムの使い心地を聞いてみていいかしら?」
エリアナは意見は多い方が良いと、神様にも聞く事にした。
『全部良かったよ!椅子も痛くないし、テーブルが低いから僕にも調度良いし。
ただ、寝袋?はもう少しフカフカが良いな!』
(神様は小さいから、テーブルは低くて良かっただけか。子供の大きさだもんね。)
「寝袋は考えてみますね。」
エリアナがそう返事をすると、
「寝袋はあのままが良いだろうな。」
セドリックは神様の意見に反対らしい。
『フカフカの方が寝心地良いじゃないか。』
「だからです。」
神様がキョトンとなった。
「冒険者は寝ていても危険を察知しなければならない。見張りがいても、もしかしたら見張りが寝てしまうかもしれない。
深く熟睡でもしたら、死ぬだけだ。」
セドリックの言葉に神様も何故反対されたのか気が付いた。
『そうだね。ごめんね。』
しょんぼりする神様は子供の姿なので、セドリックも後味が悪いのか苦笑いだ。
「神様専用のフカフカ寝袋を作るから、元気だして!」
(昨日は一発殴りたかったけど、神様は悪い人じゃなかったし。
人ではないけど⋯⋯。)
神様はエリアナの言葉に、パァーット明るい顔になった。
ニコニコ笑顔の神様は、めちゃ可愛い!
『ありがとうエリアナ!』
エリアナに抱きつこうとした神様だったが、セドリックに首根っこを掴まれてジタバタしている。
「リアに抱きつくのは、許しません。」
神様をポイするセドリックは、神様の代わりにエリアナを抱きしめた。
セドリックの腕の中で笑うエリアナは、神様から見ても可愛らしい女性だった。
神様がエリアナを見つめ、ほんのり頬を赤らめた。
それに気が付いたセドリックが神様に釘を刺す。
「リアは私の婚約者であり、未来の伴侶です。神様とて譲りません。宜しいですね?」
セドリックの言葉に、エリアナに見惚れていた神様が残念そうな顔をする。
『エリアナを私の花嫁にしたいくらいには、気に入っているよ。
でもエリアナの気持ちが一番だし、誰かから奪う事はしないよ。』
エリアナは「花嫁」の言葉に、驚いていた。
「私って気に入られてたの?」
神様に問いかけた。
『素直で可愛らしいし、そして良い子だよ。』
神様が笑顔でエリアナに伝える。
「沢山お願い事言ったり、邪魔って言ったのに?」
神様は頷いた。
『お願い事は過去にも幾人かに聞いた事がある。でも私欲が殆どだし、僕の世界を壊すような事ばかりだったよ⋯⋯。
そんなお願いは聞かなかったから、エリアナだけだね。お願い事を叶えたのは。
リリアーヌは勝手に転生したから、お願いなんて無かったしね。』
エリアナは首を傾げた。
「私も私欲なお願いじゃない?アイテムを出してとかスキル欲しいとか、セドへの強制力を消してとかだし⋯⋯?」
やっぱり私欲だなー。
エリアナはそう考えていたが。
『全部誰かの為でしょ?アイテムと強制力はセドリックの為。鑑定スキルは、お姉さんの婚約者の為でしょ?』
エリアナは姉の事を出され、バッと神様を見た。
『知っているよ。お姉さんの幸せの為に婚約者の体を戻してあげたいんでしょ?
エリアナが薬草を調べてるのを、僕は知っているよ?
でも、この世界では薬草に対する意識が低いから、本も余りないよね。
魔法があるからある程度は治せるけど、魔法で治せない者は見放される。この世界は魔法に頼り過ぎだからね。』
そうなのだ。
魔法に頼り過ぎると、自己治癒能力が下がり魔法が効きにくくなってしまう。
魔法は便利だが、長期の病にはむいていないのだ。
治癒魔法はセドリックしか使えない。
魔法は痛みを取る回復魔法とか、強制的に異物を排除するとか体の負担が大き過ぎるのだ。
「私が持つ治癒魔法では治らないのですか?」
セドリックがエリアナに問いかけた。
「お義兄様の病は、魔法が効きにくいの。それなのに何度も魔法をかけた結果、効果が出なくなってしまったのよ⋯⋯。
幸いあちらのご両親はお義兄様を見放す事なく看病をしているけど。お姉様は少しでも婚約者のそばにいたい⋯⋯からって⋯⋯。」
エリアナは姉の思いを知っている。
回復しないとしても愛する人の側にいたいと⋯⋯。
少しでも婚約者と一緒にいたい姉は、あちらの邸にずっといるのだ。
涙するエリアナをセドリックが抱き寄せ、背を擦る。
「私の治癒魔法では駄目でしょうか?」
セドリックがエリアナの顔を覗き込み問いかけた。
「早い段階でなら、きっとセドの魔法で治せたと思う。でもお義兄様は治癒魔法に耐えれる体力がもうないの。体力を戻さない限り、セドの魔法は使えない⋯⋯。」
セドリックもエリアナも黙ってしまった。
無理にセドリックが治癒魔法をかければ、逆に死に向かってしまうのだと⋯⋯。
『エリアナ。ちゃんとお兄さんは治るよ?エリアナが薬草を見つける事が出来たら治るから。スキルを使って薬を作るんだよ!』
神様はセドリックの腕に包まれたエリアナの頭をなでなでする。
「うん。頑張って薬草を見つけるね!」
エリアナの泣き笑いの笑顔に、またまた神様が見惚れる⋯⋯。
セドリックがエリアナの顔を隠してしまった。
嫉妬深いセドリックに、神様が笑い出す。
『そろそろ僕は帰るね!エリアナも、セドリックもまたねー!』
神様はそう言うと、フッと消えてしまった。
白い空間が消えると、最終エリアの場所だった。
「神様に会ってしまったわね⋯⋯。」
エリアナが確認するようにポツリと呟いた。
「会ったよ。お願い事もちゃんと叶えてくれましたしね。
ただ⋯。リアを気に入ったのは気に入りませんが。」
少しだけ拗ねたようなセドリックに、エリアナがクスリと笑う。
「ダンジョンも攻略したし、出口を出たら踏破したことにはなるわ!早く帰りましょう!」
エリアナはセドリックの腕を掴み、石板に魔力を流した。
石板により、ダンジョン出口に転移させられた。
二人が現れた先は、ダンジョン入口の扉の前だった。
のだが⋯⋯。
目の前には、驚いた顔のエルランドさんとエリーお姉さんがいた。
後ろにはエリアナに優しくしてくれる冒険者達がいたのだ⋯⋯。
「エルランドさんに、エリーお姉さんまでいるなんて。何かあったのですか?」
エリアナが急いでエルランドの前に立つ。
「ばっかやろーっ!何があったかじゃないんだよ!お前らが六日経つのに戻らないから、何かあったかと心配して皆で潜るところだったんだぞーーっ!」
エルランドさんの大絶叫に、エリアナは両耳を塞いだ。
「六日ですか?私達は二日しかダンジョンで野営をしていませんよ?」
セドリックの話に、エルランドさんが考え込む⋯⋯。
「ダンジョンで二日。外では六日か⋯⋯。お前達から話を聞かないと理由は解らん。」
エルランドさんが後ろを振り返り、
「お前等も悪かったな。無事に二人が帰って来たから、解散だ。報酬はきちんと出す。
ギルドに帰ったらエリーから受け取ってくれ。」
「あー!後、セドリックとエリアナがここに潜っていた事は内密だ。解ったな。」
エルランドが冒険者達に念を押した。
「大丈夫。誰にも言わないよ。俺らは小さい頃からエリアナを見てる。エリアナの味方だから、不利になる様な事はしない!」
そう話す男性は、Aランクパーティーのリーダーのヤヌスだった。
エリアナの父より年上で、エリアナを娘のように構ってくれる一人だ。
「ありがとうございます。ヤヌスさん。」
エリアナはヤヌスに頭を下げた。
「無事なら良いさ!」
そう言うと手をひらひらさせて、他のメンバーと帰って行った。
エルランドさんとエリーお姉さんが、エリアナとセドリックを見て大きなため息を吐いた。
「三日もあれば帰って来ると思っていたら、帰って来ないし。よっぽどのことがあったかと心配したんだぞ!」
エリアナの頭を撫でながら、エルランドは安堵の息を吐いた。
「とりあえず帰って話を聞こう。」
四人は馬車に乗り込み、ギルドへと向かった。
「エリアナとセドリックはエリーと一緒に裏口から入れ。」
ギルドの裏口に回り、エリアナ達は降ろされエリーと一緒にギルドマスターの部屋にこっそり入る。
が、またしても目の前にいる人物にエリアナとセドリックが驚く。
ギルドマスターの部屋には、セドリックの両親とエリアナの両親がいたのだ。
セリーヌ夫人はセドリックを、エリザはエリアナを抱きしめた。
言葉も無く抱きしめ涙する二人に、エリアナとセドリックは謝罪をした。
エルランドが戻り、全員席に着いた。
「まず、無事に帰ってくれて良かった。」
エルランドが口を開いた。
「何があったか聞かせてもらおうか。」
エルランドさんの視線は、嘘を許さないと強い眼差しで私達を見てくる⋯⋯。
エリアナは神様の話をして良いのか迷っていた。
セドリックがエリアナの手をポンポンとし、エルランドに視線を合わせた。
「ダンジョンで神様にお会いしました。」
セドリックの一言に、全員が唖然としていた。
これから聞く話の内容が重大な事を知り、頭を抱える事になるのだが⋯⋯。
エリアナは迷い、セドリックは覚悟を決めていた。
二人は神様からのスキルを受け取っているのだ。
ギルドマスターのエルランドに話すことは、エリアナを守る為になるとセドリックは確信していたのだ。




