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モブな私は自由なはず‥‥うるさいですわよ!ヒロインども!!  作者: おかき


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12話 貴女はいらない

「自己紹介からするわね。

アスティー辺境伯の長女のキャシーです。

エリアナ様と同じ15歳。そして、転生者よ。」


「私は5歳の時に前世を思い出したわ。

でも前世の記憶は、何となくの記憶しかなかったの。

この世界が【ダン恋】の世界だと気が付いたのは、騎士団長子息との婚約の話がきたときね。」

キャシーが少し渋い顔をした。

エリアナは気になり、キャシーをじっと見つめる。


「エリアナ様はダン恋の小説を知っていますか?」

キャシーの問いかけに、エリアナは頷いた。

「読んだ事はありますか?」

また頷く。


「ダン恋は、面白かったですか?」

エリアナは首を左右に振った。


「駄作よね。あんな話を書くなんてね。」

キャシーは話しながら気落ちして行く。


「あのー。キャシー様はあの本が嫌いなのですか?本の話をする度に気落ちしてるみたいだし⋯⋯。」


キャシーは覚悟を決めたように両手をグッと握っている。


「あの駄作の作者が、前世の私なのよ⋯⋯。」


え?!


この世界って、え?って事ばかりね⋯⋯。

キョトンとキャシーを見るエリアナに。


「あの本は頼まれて書いたのよ!私は冒険者や魔法をメインにした本を書いていたの!」

キャシーは自身の書いた本の題名を次々と告げる。


エリアナがセドリックの腕の中から突然抜け出し、勢い良く立ち上がった。


「私の大好きな作品!!嘘でしょ?え?私全部本を持っているわっ!」


キャシーがエリアナに素早く近寄り、両手を握ってきた。


「本当!ありがとう!」

エリアナの手をブンブン振り、お礼を伝える。


セドリックが、キャシーからエリアナを奪還する。

キャシーは自身の書いた作品のファンを目の前にし、大喜びだ。


「キャシー。話が進まないわよ。」

リリアーヌ様の一言にキャシーとエリアナが静かに席に座り直す。

セドリックは抱き込むのを止めたが、腰の手は離す気はないようだ。


「改めて。」

キャシーが咳払いをし、話の続きをする。


「ハーマン公爵子息は、エリアナ様が転生者であると知っているようですが、物語の話をされましたか?」

エリアナは頷いた。


「あの作品は、どうしてもダンジョンとか冒険者の話に恋愛要素を入れてくれと頼まれた作品なの。私自身、恋愛小説を書くのが苦手なのよ。

売れないって思ったけど、ストレートな恋愛が受けて続編まで出たわ。」

はぁー。とキャシーがため息を吐いた。


「騎士団長子息との婚約は断ったの。ストーリーが変わるかもしれないけど、脳筋は嫌なのよね。」


「で⋯⋯。様子がおかしくなった私に、お母様から転生者かと聞かれて全てを話したの。お母様も転生者だから。

両親からは様子見を提案されたの。それで、暫く王都の状況を見ていたのよ。」


キャシーがセドリックに視線をやる。

視線を受けたセドリックも、キャシーをじっと見る。


「ハーマン様がまさか早々に婚約するなんて、焦りましたわ。もしかして、ヒロインと婚約したのかと。

でも子爵令嬢だし、私の作品にはいない人物だし⋯⋯。」

キャシーはエリアナを見ながら、ある提案をする。


「続編を読んだなら、ダンジョンの攻略方法を知ってるわよね?

最後のアイテムがなければ、ヒロインの攻略は成功しない。ならば、先にダンジョンに入ってさっさとアイテム回収しちゃいましょ?私が作った話だから、裏ルートも知ってるから2日もあれば回収出来ちゃうわよ?」

自慢気に話すキャシーに、エリアナは冷めた視線を向ける。


「ダンジョンは自分の力で攻略して踏破してこそ意味があります。裏技なんて使いたくないわ。」

エリアナの言葉にキャシーは、納得いかない。


「さっさと攻略しないと、ゲームの強制力かヒロイン補正があるなら、ハーマン公爵子息を奪われちゃうかもしれないわよ?

ヒロインに奪われたらどうするの?」


エリアナは首を左右に振る。


「もし⋯⋯。もしも、そうなったとしても仕方ないわね。セドがヒロインを選ぶとしても、それはセドの自由だし。私にヒロイン以上の魅力がなかったからよ。」


「仕方ないって!アイテムさえさっさと回収すれば、ヒロインに奪われないのよ!

私が貴女を助けれるのよ?」


エリアナは俯き、顔をあげない。


「ハーマン公爵子息と婚約解消されてもいいの?ヒロインに奪われて良いのね?!」


余りの言い様に、セドリックが反論しようとした⋯⋯が。


部屋中に冷たい魔力が流れた。

エルランドは、ため息を吐いた⋯⋯。


リリアーヌは眉を上げ、エリアナを観察している⋯⋯。


キャシーは魔力に鈍いのか、全く気が付いていない。

未だにダンジョン攻略を話し続けている。


「うるさいのよ⋯。」

エリアナがポツリと呟いた。


キャシーは「え?」と、エリアナの雰囲気が変わった事にやっと気が付いた。


エリアナは顔をあげ、キャシーを冷たく見据える。


「煩いって言ったのよ。セドとヒロインがどうなろうと知らないわよ!ヒロインをセドが選ぶなら、それまでよ。」


「私は子爵家の後継。領地領民を守り抜く責務があるのよ!恋愛だけで領民は守れない。セドと婚約解消したとしても、また誰かと婚約するだけよ。」


キャシーは

「貴女はそのつもりでも、ハーマン公爵子息はどうなるのよ!可哀想じゃない!」


「キャシー様。貴女が言ったのよ。ヒロインを選んだらどうするの?って。

私は次を見つけるわ。セドがヒロインと結ばれるならね。」


「それじゃあ、ヒロインの思うツボじゃない!」


「ヒロインヒロイン煩い!貴女が話す世界に、名前のない私は関係ない!

貴女は自分の婚約をしなかったくせに、私に強制しないで!

物語ならば、貴女はリリアーヌ様に劣らない程の魔法と剣技を持つはずよね。

なのに、私の魔力にも気が付かないなんてね⋯⋯。」


「私はただのモブなのよ!貴女達のようなメインじゃないの!だから、放おって置いて。」


エリアナの魔力がどんどん濃くなる。


「それに、私はズルをしてダンジョン攻略はしない。自分の力で攻略するわ。貴女とは分かり合えないわね。」


エリアナの言葉にキャシーはショックを受ける⋯⋯。


エリアナはリリアーヌに視線をやる。

「ご息女様は、私には必要ありません。

尊敬する両親を見て、私は私として、この世界で生きてきました。物語に左右されるつもりはないのです。

私が大切なのは、子爵の領民達のみ。」


エリアナはカーテシーをし退室しようとする。

セドリックがエリアナの手を握り引き留める。


「リア。言ったはずです。私は貴女以外は要らないと。

私を勝手にあの女とくっつけないで下さいね。エリアナと同じです。私は私。物語の人物とは別です。」


セドリックの言葉に頷き、手を繋ぎ振り返る事なくマスターの部屋を出て行った。


残されたキャシーは、呆然としている。

言われた言葉が上手く飲み込めないでいた。


「エリアナ嬢の魔力は凄いわね。」

リリアーヌの言葉に、エルランドが答える。


「エリアナの先程の魔力は、本気じゃないですよ。ただムッとした程度ですからね。」


リリアーヌは驚きつつも、エルランドに続きを促す。


「エリアナが軽く魔力を出しただけで、ギルドの建物や周りが一瞬で吹き飛びますよ?

もし本気で魔力を放出した場合、被害の範囲は王都の半分は壊滅ですね。

魔力量は、貴女より遥か上ですし。14歳でS級モンスターを単独討伐してますから。」


話しを聞き、リリアーヌが息をのむ。


エルランドがリリアーヌを見ながら話しを続ける。


「エリアナは全属性持ちですが、魔力操作も何もかもが規格外です。まーエリアナについての話は機密ですので、他言はしないようにお願いしますね。」


リリアーヌは頷き、キャシーを見た。

未だに呆然としたままだ。


「キャシー。エリアナ嬢は相当な人物ね。頭も切れるし、何より貴族としての誇りをきちんと持っている。領民を一番に大切にする考えは嫌いじゃないわ。」


エルランドはリリアーヌの言葉に同意する。


「エリアナは12歳になると冒険者になった。領地領民を豊かにする為にね。子爵家の当主は領民が魔物と戦うのを嫌う。大金を払ってでも、冒険者に依頼するのです。

エリアナはその役目を自ら買って出た。幼いながらに、見事な考えです。」


「甘ったれたキャシーには、到底及ばない相手だよ。私はエリアナをずっと見てきた。

キャシーを必要とする訳が無い。

今日のリリアーヌ様の態度も、キャシーの一方的な話にもはっきり言って幻滅しかない。」


キャシーはエルランドに突き放された事実に青褪めた。


「そうね。今日の私達のした事はいただけないわね。」

リリアーヌは少しだけ落ち込む。娘の為にと動いた事が裏目に出てしまったのだ。

子爵家に行って謝罪しようと考えていた。


「子爵家には行かない方が良いよ。エリアナの逆鱗に触れるかもしれないからね。」


「なぜ?逆鱗とはなんだ。」


リリアーヌの問いに。

「子爵夫人の名前は、エリザ様だ。リリアーヌ様と揉めて修道院送りとなった人の妹だよ。」

エルランドが紅茶を口にしながら答えた。


リリアーヌは知らなかった。

キャシーの話に気を取られ過ぎて、エリアナの母親がエリザだと気が付いていなかった。


「エリアナは全て知っている。貴女が会いに行けば、エリザ様は昔を思い出す。それが解っていて行けばどうなります?」


リリアーヌはエルランドの話に納得した。


「キャシーがどうしてもエリアナに関わりたいなら、学園に入るまでに冒険者ランクを上げる以外に手はない。」


エルランドはそれ以上口を開く事は無く、紅茶を口にした。


キャシーの出す答えを待つ事にして。


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