11話 周りがどんどん騒がしくなる
眠りから覚めたエリアナは、体調が万全になると冒険者として最近動いていない事に気が付いた。
(公爵家に行ったり、ダンジョンに行っても倒れたり。騒がしいだけで何も動けていない⋯⋯。)
エリアナが元気がない事に気が付いているセドリックは
「知り合いの家から、私宛に討伐依頼が来ています。リアも一緒に行きますか?」
と、誘ってみる。
「勿論!」
エリアナの元気な返事に、セドリックは笑い出す。
冒険者として楽しく動くエリアナが、セドリックは大好きなのだから。
討伐依頼を受けたり、魔の森に入って薬草を探してみたり。
エリアナは乙女ゲームの世界など忘れ、セドリックと楽しく過ごしていた。
ある日朝食を食べ終えると、両親がエリアナとセドリックを呼んだ。
リビングには両親が待っており
「エリアナ。体調はもう大丈夫なのかい?」
父のギルベルトが心配そうに話しかけた。
母も心配気な視線を向ける。
「心配かけてごめんなさい。体調も元に戻ったし討伐依頼を受けても平気なくらい元気よ!」
両親はエリアナが元気に答えた姿にホッとする。
「二人を呼んだのは、少し問題が起きたのだよ⋯⋯。」
困り顔の父は、一瞬だけセドリックに視線を向けた。
セドリックは視線に気が付いた。
「問題は私に関係する事ですね?」
ギルベルトはまたも態度に出てしまった事を反省する。
「公爵家から連絡が来たのだが⋯⋯。その⋯⋯。」
父が中々話しを進めない。
「お父様。はっきり話して下さい!」
「王太子殿下から、我が家と公爵家との婚約に異議を出されたのだよ!」
はぁ?!である。
「なぜ王太子殿下が異議を申し立てるのよ!陛下が認めてくれた婚約よ?」
エリアナが倒れた日に婚約が認めれた。目覚めたエリアナがそれを知り、ホッと安堵したのも束の間。
婚約の異議申し立てなんて、エリアナが怒るのも無理がない。
ギルベルトも苦い顔をする。
「解らん。公爵からは、セドリック殿の好きにしろとの言葉を貰っている。」
「セドリック殿はどうしたい?」
セドリックは悩む事無く
「無視します。放おって置いて結構です。」
執事に出された紅茶を飲みながら、平然と答えた。
「セドリック様。宜しいのですか?相手は王太子殿下ですよ?」
母は過去の事もあり、王家に対して恐れを抱いている。
「大丈夫です。私には切り札もあります。陛下は必ず私の味方になりますよ。」
「父が既に動いている筈ですので。結果を届けてくれますよ。きっと。」
セドリックなりに考えがあるようなので、任せる事に決まった。
「今日はギルドにセドと顔を出しに行って来ます。ダンジョンの再挑戦の日程を決めてきます。」
エリアナが両親に伝え、笑顔で見送られた。
元気になったエリアナに両親はホッと息を吐いた。
ギルドに向かう馬車の中では、殿下達の話しをする。
「セドは大丈夫って言ってるけど、放おって置いて本当に大丈夫なの?罰せられない?」
首をこてんとして、心配そうに聞いてくる。
可愛らしい仕草のエリアナの頰を撫で
「私の属性を父は陛下に伝える筈ですので。私の属性を陛下は手放さないでしょうから、殿下がいくら騒いでも無駄でしょうね。」
エリアナはふと自分の属性にも光属性があるのを思い出す。
「私も光属性を持ってるけど、セドとは違うのかな?」
「リアの属性と似てはいますが、少しだけ、違います。エリアナの光は浄化に特化してます。私は治癒に特化しているのです。」
いつの間に?
「水筒を作る時に、無意識でしょうが浄化をかけましたよね?その時の魔力の光が淡い白色でした。私の光の色は金色なのです。」
そうなのね⋯⋯。
「そうですよ?」
「え?もしかして、心の声も聞こえるの?」
驚くエリアナに、セドリックは我慢ならずお腹を抱えて笑い出した。
「心の声は聞こえませんよっ!リアが心の声を口にしたからです。」
2度目の、え?
恥ずかしくなり、プイッと横を向いた。
エリアナはそのまま外の景色を暫く眺めた。
セドリックは静かにエリアナの姿を眺めている。
エリアナが振り向き、
「殿下はなぜ婚約に反対なのかしら?関係ない気がするけど⋯⋯。」
セドリックが苦笑いをし、
「多分、私のせいですね。リアを目覚めさせる為に調べ物をしに王宮に行きました。その時に殿下に会って側付きを外れている事を伝えたのです。」
視線が少し泳いだ!!
「セド?!何か他に隠してるでしょ?」
エリアナに見破られ、セドリックは正直に話した。
「その時に殿下達が、エイミーに会ってやれだの、エイミーが可哀想だの煩かったので黙らせましたよ。」
「エイミーって、ヒロインの事よね⋯⋯。」
気に病むエリアナを見て、
「あの女の話しをしたくなかったのですよ。リアが気にすると思って。でも、話さない方が気になりますよね。」
「次からは、全部話しますから。あの女とは、何もありませんからね。」
(ヒロインをあの女呼ばわりか⋯⋯。)
セドリックの一貫した態度に、エリアナは安心する。
エリアナが安心した時、馬車が止まりギルドに到着した。
ギルドの入口には、ギルドマスターのエルランドさんが待っていた。
「おはよう。エリアナとセドリック殿。」
「エリアナは、体調はもう良いのか?」
エルランドさんに頭を撫でられながら、体調を心配された。
エルランドさんは、12歳から知っているので私の頭を撫でたがる。
いつまでも子供扱いだが、それも嫌ではない。
「もう大丈夫です。張り切り過ぎて疲れが出たみたいです。」
「エリアナは頑張り過ぎるから、気をつけろよ!」
「ところで、マスター直々にお出迎えなんて、何かありましたか?」
セドリックの問いかけに、エルランドがハッと用件を思い出した。
「お前達二人に会いたいと、ある貴族が来ている。内密な用件らしい。」
小声で用件を教えてくれた。
「誰ですか?」
エリアナの問いに
「この場では名前が出せないが、私の兄の嫁と姪だ。身分は確かだ。会って貰えるか?」
エルランドさんの知り合いなら大丈夫だろうと、面会を承諾した。
エルランドさんを先頭に、マスターの部屋の中に二人で入った。
そこには、母と同年代位の儚げで美しい女性と、少し面影が似た若い女性がいた。
マスターが彼女達を紹介する。
「アスティー辺境領の女辺境伯のリリアーヌ様と、そのご息女のキャシー嬢だ。」
エリアナはキャシーの名前と、アスティー辺境伯の名前を聞き
「騎士団子息の婚約者⋯⋯。」
独り言をポツリと漏らした。
キャシーが呟いた言葉を耳にすると、スタスタとエリアナに近づく。
エリアナの両手を掬い上げ強く握りしめた。
「貴女も転生者ね?」
も?!
も?って言ったわよね!!
エリアナは驚き過ぎて、口をハクハクして言葉が出ない。
セドリックがキャシーの手を叩き落とした。
背中にエリアナを隠すと
「手を叩いた事は謝罪しない。リアに触れるな!」
セドリックは、キャシーを睨みつけて怒鳴った。
始めてセドリックが怒る姿にエリアナは、ビックリした。
(格好良い!と、思った事は不謹慎なので内緒だ。)
「セドリック殿。娘の無作法故こちらが、謝罪する。」
リリアーヌ辺境伯が謝罪を口にした。
キャシーも、
「突然の無作法、申し訳ありません。」
と、頭を下げた。
セドリックの背中からヒョイッと顔を出し、「驚いただけだから、大丈夫。」
エリアナのそんな仕草に、リリアーヌとキャシーが可愛い!と、騒ぎ始めた。
セドリックは謝罪されても不機嫌なままだし、リリアーヌ様達は二人ではしゃいでるし⋯⋯。どうしたら良いか解らず、エルランドさんに助けの視線を向けた。
「ゴッホン!!」
「とりあえず、全員ソファーに座るように。お茶を出すから、それから口を開く事!良いですね!」
エルランドさんの指示に従い、全員ソファーに座る。
セドリックはエリアナの腰に手を回し、ピッタリとくっついている。
リリアーヌ様達からの温かい視線を向けられ、エリアナは居心地が少し悪い⋯⋯。
「さて、話しをしようか。」
エルランドさんに促されて、リリアーヌ様が会話を切り出す。
「まず、エリアナさんは転生者ね?」
その質問に、肩がビックとなる。
「なぜそれを聞くのです?辺境伯に何の関係があるのですか?」
答えたのはセドリックだった。
エリアナは転生者を隠したいのだ。セドリックはエリアナを守りたかった。
セドリックがエリアナをギュッと抱きしめ、辺境伯を睨む。
「セドリック殿はエリアナさんを守りたいのね。」
「私も転生者だし、キャシーもそうなのよ。」
エリアナはセドリックの腕の隙間から、二人を覗き見た。
「転生者が多くない?」
エリアナの呟きに、リリアーヌが笑い出した。
「そうよね!こんなに転生者がいるって、変よねー。」
クスクス笑いながら、隙間から覗くエリアナに視線を合わせた。
「大丈夫よ。エリアナさん。キャシーはきっと貴女の役に立つわ。」
そうエリアナに告げたリリアーヌ様は、紅茶を口にした。
エリアナはキャシーへと視線を向けると、視線が合った。
「エリアナ様。私の話しを聞いて、どう思うかを教えて下さいますか?」
そう問いかけられ、エリアナはセドリックの腕の中から顔を出した。
キャシーをじっと見つめるエリアナは、
(悪い人ではなさそう。先に転生者である事も告げてくれたし⋯⋯。)
「解りました。お話を聞きます。」
セドリックから離れようとするが、更に強く抱きしめられ無理⋯⋯。
仕方なく、このままで話しを聞く事にする。




