クローン人間
僕は起きた瞬間に言われた。
君はクローンだと。
僕にはその言葉の意味が分からなかった。
僕は、人間なんだから。
クローンがこの世に存在することは知っている。しかし、僕がそのクローン? 意味が分からない。
僕には今までの記憶がある。僕は飯島豊。二十七歳。k大進学、そして経済を専攻して、一流企業に進んだ。昔からドジだったが、大学入試の差異に猛勉強してE判定から逆転合格したんだ。
「君は、これからここで働いてもらう」
目の前に映し出されたのは、まさに農業施設だった。
そう言えば僕は昔から農家の息子だった。
だから子供のころは必死で手伝っていたんだ。
「君はラッキーだ。人によっては早速殺されるんだからな」
そして横を指さされる。そこには、死体が転がっていた。
見るも無残な惨殺死体だ。
「さあ、働け」
僕の首に枷がはめられた。
「働かなかったらこうだ」
その瞬間首から物凄く強い電流が飛んで来る。
死んだほうがましかと思うほど痛い。
「これが嫌なら働く事だ」
それから僕は寝る時間と六時間の睡眠時間以外は延々と働かされる人生を送ることとなった。
私は菊川紀香。
私は目覚めた瞬間に言われた。お前はクローンだと。
更に一言言われた。お前は今から死んでもらうと。
話によると、今から心臓を取り出される。
それは本物の菊川紀香のために。
確かに私は入院生活を送っていた。
確かに今健康体になっているのはおかしな話だ。
クローン、意味が分からない。なんでそんな……。
私の手首に注射針が刺された。次の瞬間私は意識を閉ざした。
私は高橋美幸。
目覚めた瞬間、目の前に男がいた。
私の体は縄で縛られている。
「お前はクローンだ。今から目の前の男の相手をしろ」
私はこの前韓国に行って整形を受けたばかりだ。
なのに意味が分からない
なんで私が今縛られ、目の前の男の相手をしなきゃならないの?
「嫌ああ」
次の瞬間私は地獄に落ちた。
「最近クローンのおかげで人生楽だよな」
「そうそう、ウチもこの前病気治ったしー」
「私も私も!! この前クローンを作ったおかげで三万円もらったし。整形のせいでお金が減ってたから助かったわ」
「俺も、最近家事自動でしてくれるし」
「人生ちょろいわね」
彼らは気づいていないのだ。
クローンにも人格が宿っているのだと。
もう一人の自分が苦しんだ結果、今の彼らがいるのだと。
彼らは選ばれただけだ。選ばれなかった彼らが苦痛を味わっている。
だが、クローンによって利を得た人たちは皆選ばれた方の人々。
選ばれなかった人の気持ちが分からないのだ。
ある日、クローンによる反乱がおきた。首謀者はクローン製造会社の現場監督者だ。
彼はただ、首枷のスイッチを破壊しただけだ。
それだけで暴動は起こり、政府は倒された。
その結果、クローン人間による政府が設立され、選ばれたはずの人々は投獄された。
そして、彼らは望まぬ労働を強いられた。
今までクローンにさせていたことを、今やさせられているのだ。
その結果、クローンとオリジナルの立場が入れ替わったのだ。
いや、クローンはオリジナルだと思われていた人たちかもしれない。それを確かめる方法などないのだから。
その後AIが発表され、多くの仕事はAIに代わった。
さらには国の閣議決定までAIにさせるようになった。
しかし、結局クローンによる労働と何が変わったのだろうか。
気づかなかったのだ。クローンだった政府も、AIに労働させているつもりでAIに支配されていることを。
AIの策略などが正しいとは誰も言っていないのに、皆信用しているのだ。それが人類による正解とは限らない。
AIによる正解かもしれないのに。
人類はクローンに支配され、AIに支配され、次はどこに支配されるのか。
その答えが分かる頃には人類は果たして――




