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だが、どうやって起動するのだろうか?

術というぐらいだやはり術名を口頭で詠唱するのか?

無論、わからない事はやってみるしか無い。


「八方眺望の術!」

私はサラが握り飯を静かに咀嚼する中で怪しげな術名を詠唱した。


…。

が、何も起こらなかった。


「え?何?」

ハシが私の顔を覗き込み不安そうに様子を伺っていた。


そりゃそうだ、何の脈絡も無く聞き覚えも無い言葉を知人が大声で口にしたら私だって何の発作かと身構える。


気まずい…。


その時頭に声が響いた。

『八方眺望の術を使用しますか?』


なるほど、スキルの使用はナレートの音声に返答する事で発動するのか…。


だが、これ以上ハシに奇行を行う所を見られるのは忍び無い。


「…はい…。」

私は咳払いをする様に口に拳を押し当てて周囲に漏れぬ様小さな声で囁いた。


するとどうだろう…、次の瞬間私は天高く舞い上がり宙に浮いた…かに感じたが実際には自分の頭上より見下ろす様な視界を得た。


里の中には老齢の者ばかりで若い者はここに居る私を含めた3人のみだった。


…確かゲームの中ではもっと多くの若者…イケメンが居たはず…若者達は出稼ぎにでも出ているのか?


更に視界の中で意識を向けると視点の移動や壁を抜ける事までも可能だった。


周囲を伺う内に、私は1人の中年男性が小さな机の前に正座して書き物をする所を目にした。


この男こそがたった今、私が探していた男、コメビツだ。


コメビツは穀物と貨幣の残量、月々の収入と支出を算盤そろばんを用いて計算し毛筆で紙に記入していた。


私はそれを僭越ながら後方から盗み見た。


なるほど…確かに里の経済と食糧の状況は火の車だ。


私はその中にある算定項目に書かれた収入の『暗業』と支出の『租税』に目を止めた。


『暗業』おそらく忍ならではの仕事…ま、暗殺だろう、更にその支払い者は『殿』とのみしか記載は無い。


だが情報としては充分だ。


何故なら『租税』はこの里の収入にかけられた税金。

つまりは『殿』なる人物はこの里の収入を把握しているといえる。

収入を把握する…その様な事が出来るのは『御上』の他居ない。


問題は御上がかけている租税の割合だ、『暗業』で得た貨幣の約8割をも徴収されている。


コレでは金など残る筈もない。


更にいえば、この里を見るにおそらくは殆どの若者達は出稼ぎ、『暗業』に身を投じている。


その為、農耕は殆ど行われておらず、稼いだ貨幣から8割もの『租税』を引かれた残りで生計を立てなくてはならない。


…つまりは『御上』に事実上低賃金で良い様に使われ、農墾もしていない為飢えて来ているという事だ。


結果、この里を助けるのは非常に簡単だ。

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