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コメビツとゆうこの厳格な雰囲気の男が私に対して態度が違うのは単純に彼にとってヤスケがたった一人の息子だからだ。
私は会釈するとその場を通り過ぎた。
「あ、トックリ〜!僕の事待ってたの?」
そこへ空気を読まないハシが戯けた。
「何で俺がお前を…とゆうかハシ、トックリさんだ、さんを付けろ、さんを」
トックリは片眉を下げハシを見た。
「ヤスケ〜、トックリがまた僕の事をやらしい目で見てくるよ〜…アハハ」
ハシは私の方を向きトックリに身体を添わせて戯れた。
ハシの戯れにコメビツは青筋を立てながらも静かにその場を去った。
ハシは更にトックリの首筋に頭を擦り付けてふざけた。
「ヤスケ?」
ハシは一向に何も言わないヤスケ…私に違和感を感じて振り返った。
私はヤスケを演じる事を忘れて直視を続けた。
「何でもいいから先を続けろ!」
思いのまま本音が漏れ出てしまった。
「「え?」」
ハシとトックリは私の反応に困惑して固まっていた。
「じゃない…さ、先を急ごう」
私はヤスケという役を思い出し訂正した。
クソ…目の前のご馳走を見逃さなくてはならないとは…。
「あ、うん…じゃトックリまたねー!」
ハシはトックリに手を上げて再び歩み出した。
「さんを付けろハシ…それから、もし彼女、サラに会いに来たのなら木材庫だ」
トックリは主人公サラの居所を告げてから背を向けた。
「サラは家族と友人を同時に亡くしたばかりだ察してやってくれ」
トックリは去る前に振り返ると主人公への気遣いを忘れぬ様に釘を刺した。
ハシは私の前を意気揚々と楽しそうに歩き掘立て小屋の様な建物の前で足を止めた。
「ヤスケ…トックリはコメビツ様…ヤスケの父上が言ってる事理解して無いわけじゃ無いよ?」
ハシは背を向けたまま話した。
「え?」
私は唐突にコメビツとトックリの話を持ち出したハシにどう返答すべきか分からなかった。
「実際うちの里はお金は無いし、食糧の備蓄だってギリギリ…だからこそ今、トックリは里を変えようとしてるんだ」
背を向けるハシの顔は見えなかったが真剣な表情をしている事は伝わって来た。