【謁見】
【アストリア王国(Astoria)】
→ 星の加護に導かれた幻想と叡智の大国
→ 魔導・天文・歴史の中心地であり、複数の都市国家を従える大陸屈指の王国
【王都:バルディア(Baldia)】
•都市分類:アストリア王国の首都、政治・魔術・学問の中心地。
•位置関係:中央大陸の要衝に位置し、四方へ魔導列車ルーンラインが走る。
•主な特徴:
•天文塔や記録院、魔術研究機関が集積。
•王城「星冠宮」が中心に聳え立ち、星の冠を象ったドームを持つ。
•各大貴族の邸宅が整然と立ち並ぶ「銀光街」は、カグヤの実家・セレスタリア公爵家もこの区域にある。
•魔法インフラ:
•街全体に魔導灯(星導石)による照明システム。
•魔術流通に対応した市街ネットワーク。
•市民意識:高い教育水準と誇りを持ち、「星の民」としての気位を重んじる。
•エリュシオン学園との結びつき:入学出来た時点で王国政府機関への登用、各機関への研究者等に重用される人材が多い。
そんなこんなで3人と、学園長より報告書を抱えた1人は無事に王都に到着した。
フィリア
「列車の旅!凄く楽しかったね!あっー!美味しそうなパン屋さん!カグヤちゃん、リオ!あのパン屋さんでお昼ご飯を食べよう!」
リオ(ジグムントを伺いつつ)
「あー、たぶんそんな時間は無さそうだな」
輝夜
「ふふっ…フィリアさん、でしたら私の家に来た時に一緒にパン作り…する?」
フィリア
「…!カグヤちゃんもパン作りするの!?」
カグヤ
「そうね…クロワッサン、塩パンみたいなシンプルなものならレシピを見なくても大丈夫よ」
フィリア
「じゃあ約束だね!何を作ろうかな〜♪」
ジグムント(フィリアの様子を観察しつつ)
「…では参りましょうか」
足取りの非常に重いリオと他3名は歩みを進め始めた。
フィリア(王都の街並みをキョロキョロしながら)
「今日はリオのお家に向かうんだよね?」
ジグムント
「そうですね、フィリア嬢の申された通り、本日は国王陛下へお目通り頂きます」
フィリア(びっくりした様子)
「あれ!?リオのお家に行くんじゃ無いの?」
ジグムント&リオ(以下、目線のみでの会話)
「お前、説明してないのか?」
「えーと、説明してないというか、機会が無かったといいますか…現に自分は"家名"無しですし…」
「お前ねぇ…」
カグヤ(怪訝な表情)
「フィリアさん、この国の事情・成り立ち、歴史…そういった事は知らないのかしら?」
フィリア
「うーん、講義で少し習ったぐらいかな?それがどうしたの?」
カグヤ
「なるほどね…リオに家名が無いのは気づいていたのかしら?」
フィリア
「…!だからカグヤちゃん、"家名"無しとか言ってたんだ!カメイってなんの事なんだろう?って思ってたんだー」
と、そんなやり取りを交わしながら、4人は銀光街を抜けて王城への門に辿り着いた。
フィリア(心底びっくりした様子)
「えぇっー!!リオのお家ってもしかして、お城の中にあるのっー!?」
リオ&カグヤ&ジグムント
(もう突っ込むのも面倒だ)
(いきなり国王への謁見になるのね…さすがに少し説明してあげないと可哀想ね…)
(この無垢な少女が本当に"歌姫"なのか…?)
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王城:星冠宮【謁見の間】控室にて
フィリア(あわあわしている)
「ふぇええっ!!!???リオのお父さんは王様で…国王様に今からお話しする事になってて、リオはこの国の王子様で…」
フィリアは思考が止まってしまった様である。
カグヤ
「あなた、言葉が足らな過ぎると思うわよ、普通に考えて一般人が自国であっても王侯貴族と面会する機会なんてないのよ…?それを今の今まで何の説明もせずに連れて来るなんて……呆れたわ…」
リオ
「いやいや、フィリアに会いたがってるのは母上で、そもそも俺は1人で帰ってくるつもりだったんだぜ?」
ジグムント(あっ…しまったな。ついつい稽古に熱が入って、リオと"歌姫"の懸案を共有するのを忘れてたな。まあ、こいつは一度ヴァルに絞られた方が良いか…)
コンコン…控室の扉がノックされた。
侍従長
「失礼致します…謁見の準備が整いましてございます…」
そうしてリオにとって物理的にも精神的にも重い扉が開かれたのであった。
ジグムントは臣下の礼を取り、アストリア王国の重臣達の居並ぶ謁見の間は静寂に包まれていた。
侍従長
「アストリア王国、国王、【パクス】ヴァルディオス・アストリア陛下の御成りに御座います」
侍従長のよく響く声の後、ヴァルディオス王が静かに玉座へと腰掛けた。
侍従長
「…顔をお上げ下さい」
侍従長の声が静けさを割った刹那――
控えていたリオが、すっと右手を挙げた。
リオ(やや緊張気味に一礼し、口を開く)
「陛下、発言しても宜しいでしょうか?」
ヴァルディオス
「…聞こう」
リオ
「まずは…“杖”の件について弁明を。えー結論から申しますと…杖を喪失しましたが……あれは、必要な代償であり──」
ヴァルディオス王(答えず、数秒間リオを見つめる)
そして、視線を少しだけフィリアに向けた後に重々しく言い放った。
ヴァルディオス王
「杖の件は……後でかまわん」
リオ(は…?どういう事だ…?縁談の話をする為に謁見の間に通された訳…ないよな…)
「……では、今日の召喚はいったいどういった…」
ヴァルディオス王
「……それよりも、お前は“呼び出された本質”を理解しておらぬようだ」
リオ
「……と言いますと?」
(眉をひそめ、姿勢を正す。父王は"杖"の喪失などまるで意に掛けぬ様子である)
ヴァルディオス王
「エリュシオン学園、学園長から報告書が……上がってきている」
(王の指が、玉座脇に置かれた厚みのある革張りの資料に触れ、金の魔術印が浮かび上がる)
ヴァルディオス王(静かに)
「……ジグムント、読み上げよ」
ジグムント(膝をつき、留め具を解く)
「──拝命」
書面の魔術刻印が一瞬、淡い金の光を放つ。
リオ(なんの報告書なんだ…?図書室…の事か?)
カグヤ(なんだか、居てはいけない場面に居合わせてしまったみたいね…)
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【ジグムントが淡々と報告書を読み上げ始めた】
第一報告:媒介を介さない気象操作とされる事例
「──干ばつの年、少女が夜に歌うと、翌朝には露に濡れた田が戻る。
発声周波と共鳴するかのように、雲層が形成された……」
リオ(少女…歌…)
カグヤ(目を薄く開ける)
ジグムント(抑揚を保ちつつ続ける)
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第二報告:豊穣と祝祭の歌
「フィリア・ノートによる“祈り”の舞と歌……」
リオ(フィリア…)
カグヤ(視線を上げる。眉間にうっすらと皺が寄る)
ジグムント
「……農作物被害率、参加年:0%。非参加年:20%の減作。
自然界との“波長共鳴”が存在する可能性……」
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ジグムント(やや声色を低めて)
第三報告「龍との邂逅──未確認個体、“蒼鱗の古代龍種”セイルグラードと交信──」
リオ(龍…)
カグヤ(瞳の奥で動揺が揺らめく。だが、表情は崩さない)
ジグムント(淡々と読み上げ続ける)
「水害の折……少女は恐怖なく龍の前に立ち、歌った。
そして、龍は牙を納め、奔流を止め、少女の前で……頷いた」
ジグムントの報告により騒めき始めていた謁見の間の空気を再度、沈黙が支配した。
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リオ(龍…伝説…歌姫…)
カグヤ(…不味い流れになっているわね…)
ヴァルディオス(無意識に拳を握る)
⸻
ジグムント
「──以上を踏まえ、当該少女は“歌姫”と見做され、リオによる指導、学園による監視、王国政府との情報共有を進言する……」
報告書の魔術光が消え、ジグムントは報告を終えた。
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世界が沈黙したかのような空気の中。
玉座の王──ヴァルディオス王が、重々しく言葉を落とす。
ヴァルディオス(数秒間リオを見つめる)
「さて…私は“お前の口”からも話を聞きたい」
リオ(やや沈黙した後、静かに口を開く)
「フィリアは…普通の少女…だと思います…。歌を──歌を歌うと、確かに魔力に起因するであろう、事象は起こっている様に思えますが…具体的には学園図書室にて彼女は“色”を与えました」
ヴァルディオス王(興味を隠さず)
「……“色”とな?お前の視界はモノクロだったと認識していたが…」
リオ(うなずき)
「はい。私の視界は今でも大部分がモノクロに写っております…」
ヴァルディオス(視線のみでリオに続きを促す)
リオ
「図書室の本が、彼女の歌に共鳴と思われる反応を見せ、螺旋状に展開しました。
その最奥には、“古の記憶”が存在しており…そして、彼女はそれを“歌声”で解き放ち、その際に私は"杖"を失いました」
ヴァルディオス王の驚愕の表情と数秒の沈黙の後、静かに語り出した。
ヴァルディオス王(低く、凍り付くような声音で)
「……私は、“平定王”などと──民からは謳われ、称号を得ておる…」
平定王〈Pax〉その名に込められた意味は――
•パクス(Pax):ラテン語で「平和」だが、それは“制圧の果てに与えられる秩序”を意味する。
•ヴァルディオス(Bardios):古代語で「烈火・嵐を統べる者」
ヴァルディオス王
「この意味が、お前には理解るか…?」
重く、威圧の魔素すら孕んだ王の言葉に場が再び張り詰める。
ヴァルディオス王
「“平和”とは何だ?
──それは、“戦乱”の上に成り立つ幻想にすぎん」
「“龍"を制し、世界の"理"を歌で改編し…"記憶"を呼び醒ます存在…もしそんな存在が制御不能であったなら。伝説に謳われる"災禍"を喚ぶ存在であったなら。
お前は、それがどれほど“危険”な存在であるか、本当に理解しておるのか……?」
今や謁見の間に居並ぶ者達は、フィリアに向けて警戒心に満ちた視線を無遠慮に叩きつけていた。
ヴァルディオス王(目を見開き、叫ぶ)
「リオよ!貴様は、その“光景”を側で見ておきながら──なぜ、“報告”をせぬのだ!!」
烈火の如き重圧を孕みアストリア国王より、大音声の叱責が謁見の間に反響した。
―謁見の間・静謐の雷鳴
ヴァルディオス王
「……フィリア・ノートよ」
(場が凍り付く。玉座の王は、決して視線を逸らさぬまま少女を見据えていた)
ビクっと、ピンクブロンドの髪がかかる小さな肩が揺れた…
ヴァルディオス王
「私は、歪曲した言い回しや、腹芸は好まぬ……
故に、単刀直入に問う……!」
アストリア国王の声が、魔力のような重圧とともに響き渡る。
「──そなたは、その"異質"な力を何に使う?」
沈黙。誰も息を吸うことすら躊躇うほどに。
「……世界に害を為そうとしておるのか?
それとも──その“威”をもって、世界を掌握しようとでも企んでおるのか?」
玉座より放たれた声は、雷より静かに、しかし確実に少女を射抜いた。
⸻
リオ(思わず前に出そうになり)
「…くっ…!」
カグヤ(肩を震わせながら)
(……なんて問いを……
これは、王族や貴族にすら“覚悟”を問う時にしか発せられぬ言葉……!発言ひとつが命取り…まさかフィリアが……この“玉座の重圧”にさらされるなんて…)
(この空気、この問い。王国の意志が……この場のすべてが、彼女を“断罪する理由”を求めている)
(フィリアは邪悪な存在なんかじゃないわ…!なのに、その存在が問われている…)
(彼女の“在り方”そのものが、今、試されている)
(これは……まるで重要戦犯に対する“最終通告”の形。逃げ道も、取り繕う余地もない)
(──だからこそ、誰かが盾にならなければ…)
(ならば……私が……!)
(カグヤ、凍りついた空気を引き裂くように一歩前へ)
コツン…
高鳴る足音が、広い謁見の間に響いた。
重臣たちが驚愕と共に視線を向ける。
氷のように冷たく、気品を纏ってきた令嬢――その氷が、今、熱により砕けていく。
氷結令嬢が玉座に向かい膝を折る──その所作は流麗であり、まるで名画を切り取った様に美しく…その光景を目にした者達は、時が止まったかのように、ただ魅入られていた。
氷結令嬢は初めての"友"を救う為に、重圧に抗い、氷を砕いて立ち上がります。




