〜亡国姫は高らかに歌う〜亡国の旋律は夢に続く調べかな
フィリアの耳朶には旋律が…草花の歌が遥かな遠くで流れていた。
いつの時代だったのか、果たしてそれは現実か、自分という存在は…
…セレナ…?フィリア…?
音と理、歌と数式が呼応し、それは旋律となり、
世界はもう一度、選び直される。
リオ「フィリアが覚悟を決めたぞ!アレクト、ここが踏ん張り所だ!」
アレクト「わかりましたよ!どうなろうと付き合いますよ…!」
リオ「とにかくフィリアが歌詞を読み解くまで時間を稼ぐ!」
ーーー演算術式、展開…!
リオ「セレクト…オーダー…!」
ただただ、世界は静かだった…
燃え盛る空の残滓も、砕け散るガラスの草花も、
全ては彼には届いていなかった。
リオは、ただ静かに、
**術式空間**の構築を始めていた。
『光律の波動、万象に告げよ──』
『この手が示すは、調和の方程式』
『世界よ、遍くものの安寧を描け』
『滅びの咆哮を鎮めよ、星辰の揺籃』
『七因の螺旋、反転せし時の門』
『運命の数値、今ここに修正せよ』
『我は記録する者、我は紡ぎなおす者』
『ただ一人のために、ただ全てのために』
『犠牲なき選択を、理に叛いて求める』
『失われた涙の方程式』
『願いと誓いが交差する座標軸』
『選べ──未来に、誰を連れてゆくか』
『詠唱拒否』
『構文矛盾──感情干渉──強制演算』
『全魔術式、詩的拡張プロトコルにより否定』
『世界は歌う、けれど声を持たない』
『だから我は、選ぶ──その沈黙を破る一撃を』
『最適解拒否』
『選択肢:喪失・犠牲・分断』
『再計算──最終定義:“選べない者こそ、選ばねばならぬ”』
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アレクトは──息をのんだ。
その姿は、まるで神代の魔術師王。
理と情、希望と絶望の狭間に立ち、あらゆる可能性を呑み込みながら、
それでも“最も困難な一手”を選ぶ男の背中だった。
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「始原因子、開示。
光子位相、律動数式に同期。
詠唱──要らない。言葉では、追いつかない」
リオの周囲に、詠唱を破棄された術式環が幾重にも浮かび上がる。
銀の文字列、紅の記号、蒼の因果線。
無数の魔術記号が、空間上で詩のように踊り始める。
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アレクトの記憶には、古い時間が蘇る。
それは太古、魔法文明がまだ歌と祈りだった時代。
“あの方”は、いつもそうだった。
誰よりも不器用で、誰よりも人を想い、
“自らが傷つく魔法”を選ぶ人だった。
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「術式展開──演算…完了…!」
リオの瞳が、緋に染まった。
それは怒りでも、狂気でもない。
静かなる誓い。理の臨界を越えた、“選択の意志”。
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術式は名を得る。
『選択演算式・セレクト=オーダー』
“あらゆる因果の中から、最も多くを救う道を一つ、選べ”
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そして、世界が応えた。
空間が収束し、リュミエール王女の動きをもが、静止した…。
未来の可能性が圧縮されていく。
その代償は、リオ“自らの未来”の断片。
アレクト(内心):「……まただ。この方は……また、自分だけが苦しむ道を……!」
涙は流れない。記録体に涙腺はない。
けれど、その記憶核は震えていた。
リオ「仕事はキッチリしてやったぞ!フィリア…!頼んだぞ…」
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やってくれるんでしょうか!?リオ様!?