リュミエール王国へ
――書庫・第一階層「亡国の庭園」
そこは、花が咲き乱れる美しい世界だった。
だが、どこか異様だった。草花は全てガラスでできており、触れればヒビが入る。
リオ・フィリア「ここは……?」
アレクト「かつて“歌と花”で魔法を紡いだ王国
《リュミエール》の記憶だよ。300年前に滅びた、セレナ――失礼、今はフィリアだね…あなたの前世の故郷だ。」
フィリア「前世…?って?」
アレクト「リオ、フィリア、もう自分達でも判ってきているだろう?普通の人間には記憶の世界は耐えられないよ…」
フィリアの身体が震えた。
リオ「そんなトンデモ事実すぐに飲み込めないだろ…」
フィリア「でも、リオ…アレクトの言葉、私わかるかもしれない…
だって、懐かしいのに、すごく悲しい。まるで、この庭が……泣いてるみたい」
そのとき、ガラスの花畑の中心に、
**一本の枯れた“歌う大樹”**があった。
根元には封印された本。
開かれることを待ち続けていた本。
⸻
リオ「この本が、この階層の鍵なのか……?」
アレクト「そう。だけど厄介なのは、“この記憶の持ち主”がまだ理解出来ていないことだね…、
リオ、その本を手に取ってごらんよ」
リオ「記憶の持ち主……?ってこの本もガラスなのか…」
本は持ち上げる時を待たずしてリオの手の中で、粒子となって崩れ去ってしまった…
アレクト「彼女だよ…」
空気が冷たくなった。
瞬間、枯れた大樹の上から現れた影。
音と魔法の揺らめきで形を成す、王女の姿。
⸻
幻影の亡国姫「この国は、滅んではいけなかった……!私は、まだ歌っているのに……」
その哀しみは狂気と化し、世界も時間も反転し始める。
アレクト「リオ! 彼女はこの世界を逆流させるつもりだ…!我々は異物と認識されたぞ…!杖を構えろ!」
リオ「アレクト、大丈夫だ!
歌ってくれ、フィリア。君が歌ってくれるなら、
この記憶を…俺はこの世界を救える…!」
フィリア「でも、一体何を歌えばいいの…こんなに悲しい感情…私、あのお姫様の顛末を知ってる気がする…ううん…思い出した…」
(私がお姫様もこの美しかった世界も見殺しにしたんだ…!)
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【幻影の亡国姫】
リュミエール王女(記憶体)
•種族:記憶の亡霊(記録体)
•特徴:感情と執着に縛られた記憶の集合体
•能力:幻想生成魔法、時間逆流結界
•備考:セレナと深く関わっていた王女。自身の国の滅亡を受け入れられず、記憶の中で同じ“運命の瞬間”を何度も再生している