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6月6日(日)

秀人は昼前に目を覚ますと、簡単に支度を終え、家を出る事にした。

「秀人、バッチリ決めて来い!」

「秀人君、今夜は赤飯よ!」

「行ってきます。あと、夕飯はいらねえって言っただろ?」

両親の声援を簡単にかわし、秀人は待ち合わせ場所に向かった。

本に載っていたアドバイスから、秀人は待ち合わせ場所に20分程、早く着くように家を出た。

しかし、予想以上にスムーズに移動した結果、30分も早く到着してしまった。

秀人は待ち合わせまで時間を潰そうと考え、待ち合わせ場所を軽く見た後、近くのコンビニに向かう。

しかし、少しだけ考えた後、足を止めた。

「おかしいな……」

秀人は慌てて、待ち合わせ場所に向かうと、そこにいた春奈に近付く。

「立石?」

「あ、及川さん!」

春奈は嬉しそうな笑顔を見せる。

「待ち合わせ時間って12時だよな?」

「はい、そうですよ」

「今って、11時半だよな?」

「そうですね」

「何でこんな早くにいるんだよ?」

「及川さんを待たせてはいけませんので……それに及川さんも早く来てくれました」

「ああ、じゃあ……ちょっと早いけど昼飯食いに行くか」

春奈が何時からここにいたのか気になったが、秀人はそれ以上詮索する事なく、近くのパスタ屋に向かった。

時間が少し早い事もあり、2人はすんなりと席に通された。

「ここ、素敵な店ですね」

「俺も初めて来るけどな」

「この店、何で知ったんですか?」

「あ、えっと、口コミだよ」

マニュアル本を読んだ等、言えず、秀人は苦笑する。

2人はメニューを開くと、何を頼むか考える。

「……決まったか?」

「あ、はい、カルボナーラにします」

「じゃあ、注文するか……」

2人はそれぞれ注文すると、少しの間、話題がなくなり、無言になってしまった。

「……あの?」

「ん?」

そんな沈黙を破ったのは春奈だった。

「私、男の人と……こうしてデートするの初めてなので……」

「俺も初めてだけど?」

「え?」

「だから、そんな緊張しねえで良いよ。正直、俺も何すれば良いか、よくわかってねえしな」

その言葉に春奈は少しだけ安心した様子を見せる。

「そうですね。わかりました」

その時、店員が料理を持ってきたため、2人は食べ始める。

少しした後、春奈の様子を見て、秀人は手を止める。

「立石?」

「はい!?」

春奈は異常に驚いた様子を見せる。

「フォークとスプーン、逆じゃねえか?」

「あ……ごめんなさい」

春奈は慌てて、持ち替える。

「何か、見られてると思うと緊張してしまって……ごめんなさい」

「いや、謝る事はねえよ。それに、いつも昼一緒じゃねえか」

「はい、そうなんですけど……」

春奈は泣きそうな表情を浮かべる。

「あ、そうだ……」

春奈は目を閉じ、大きく深呼吸をする。

その様子はデートの誘いをしてきた時と似ている。

「どうした?」

「あ、えっと……」

春奈は少しの間、目を泳がせた後、秀人と目を合わせる。

「これから、秀人君とお呼びさせて頂いても、よろしいでございましょうか!?」

「え?」

秀人は意味がわからず、固まる。

「あと……私の事も名前で呼んで頂けると、幸いでございます!」

「全体的におかしな敬語になってるけど、大丈夫か?」

顔を真っ赤にしている春奈を見て、秀人は思わず笑ってしまった。

「急にどうしたんだよ?」

「あ、その、恋人同士なら名前で呼び合うべきだとお母さんに言われまして……」

「お前、親の言う事は絶対なのか?」

「いえ、私も名前で呼び合う方が良いと思いましたので……ごめんなさい」

「だから、何で謝るんだよ?」

秀人はこの時、和孝に言われた事を思い返していた。

必要以上に仲良くならないようにする事を考えれば、春奈の提案を受けるべきではない。

お互いに呼び合う時は名字のままにした方が無難だ。

しかし、不安げな表情を浮かべる春奈を見ているうちに、秀人の頭からそんな考えが少しずつ消えた。

「春奈?」

「え、はい!?」

「こう呼べば良いのか?」

「はい!」

春奈は顔を真っ赤にしながら笑顔を見せる。

「ありがとうございます……秀人君」

恥ずかしそうに自分の名を呼んだ春奈を見て、秀人はまた笑った。

「ほら、早く食わねえと冷めちまうよ」

「あ、はい」

春奈は顔を下に向けたまま、食事を再開した。

「あと、ついでに敬語もやめたらどうだ?」

「え?」

「俺、言葉使い悪いのに、お前だけ敬語って何か変だろ?」

「そうでしょうか……?」

春奈はまた顔を真っ赤にする。

「秀人君……これ、おいしいね!」

「いや、かなり無理してるように見えるんだけど?」

秀人はため息をつく。

「まあ、それがいつもの話し方ならしょうがねえか……」

2人はその後も簡単な会話をしながら、食事を終えると、すぐ出る事にした。

「いくらですか?」

「ここは俺が出すよ」

レジの前で、秀人は財布をポケットから出す。

「ダメです。私も払いますよ」

「いや、別にここ安いから……」

「ダメです。秀人君に悪いです」

「でも……」

「奢ってもらうなんて、申し訳ないです」

「……じゃあ、割り勘にするか」

秀人はため息をついた後、2人でお金を払い、店を出た。


店を後にし、2人はデパートに入ると、案内に目をやる。

「どこから行く?」

「秀人君はいつも、どこに行きますか?そこに行きたいです」

「俺はいつも本ぐらいしか見ねえんだけど?」

「じゃあ、最上階の本屋から行きましょう」

「本屋って2人で行くもんじゃねえだろ」

「秀人君が普段、どんな本を読んだりしてるのか知りたいんです。今日はお互いの事を知るって目的じゃないですか」

「じゃあ、エレベータ混んでるし、エスカレータで行くか」

はしゃいでいる春奈に合わせ、2人は最上階の本屋から回る事にした。

「でも、良いのか?」

「はい?」

「俺、もう18になったし、アダルト系の本を買ってるとか言っても、引かねえか?」

「え?」

秀人の言葉に春奈は顔を真っ赤にする。

「あ、その……年頃の男の人なら普通だと思います。私も興味がないわけではありませんので……秀人君がお望みでしたら……」

「おいおい、何言ってんだよ!?」

春奈が暴走し始めたため、秀人は慌てて止める。

「ただの冗談だよ」

「え?」

「ちょっとからかってみただけなんだ。悪かったな」

まだ顔が赤い春奈を見て、秀人はこの手の冗談を2度と春奈に言わないようにしようと決意する。

「和孝がマンガをたくさん持ってて、いつもそこで読むから、俺が普段買ってるのは小説だな」

「小説ですか?」

「意外か?」

「あ、はい、少しだけ……。秀人君、スポーツもやってますし……」

「部活には入ってねえから、結構時間あるし、通学の電車の中とかでも読んだりしてるんだよ」

2人はそんな事を話しながら、小説のコーナーに向かう。

「どんな小説を読むんですか?」

「俺はホラーとかミステリーかな。春奈も小説、読むのか?」

「はい、よく読みます。私が読むのは恋愛小説やファンタジーですけど……」

「全然違うジャンルだな」

「そうですね……」

春奈は少しだけ悲しそうな表情を見せる。

「私、怖い話や難しい話は苦手で……ごめんなさい」

「いや、別に春奈の趣味に文句を言ってる訳じゃねえんだ。人それぞれ違うとこがあって当たり前だろ?」

「そうですけど……」

「そうだ、今度、俺が読んでた小説、貸してやるよ。食わず嫌いみたいなもんで、読んでみたら楽しいかもしれねえだろ?」

「……あ、そうですね。じゃあ、私が持ってる小説と交換しませんか?」

「ああ、そうするか……って、恋愛小説とか俺、似合わねえ気がするんだけど?」

「そんな事ないですよ」

秀人はそこで両親の事を思い出す。

「……お袋と親父に見つかったら、まず何か言われるな」

「え?」

「あ、別に何でもねえよ。小説、交換してみるか」

「じゃあ、明日、読み終わった小説、持って行きますよ」

「わかった、俺も何か持って行くよ」

「はい、お願いします」

春奈は嬉しそうに笑った。


それから2人はデパートの中を見て回り、お互いの趣味や好み等を確認し合った。

当初、秀人は本屋しか行きたい場所がなかったため、夕飯時まで間が持つかと心配していたが、春奈との会話は尽きる事がなく、時間はあっという間に過ぎていった。

「大分歩かせちまったけど、疲れてねえか?」

「あ、大丈夫ですけど……」

「時間も結構経ったし、そろそろ夕飯にするか?」

その時、秀人は足を止め、辺りを見回している5歳ぐらいの男の子に目をやる。

その子の近くに親らしき人はいない。

「迷子ですかね?」

秀人と同じ方へ春奈も視線を送る。

「そうかもな」

「声、かけてみましょうよ」

「あ……そうだな」

2人はゆっくりと男の子に近付く。

「君、1人ですか?」

「……ママがいなくなっちゃったの」

「そうなんですか?」

「お前、子供相手にも敬語なんだな」

「え?」

「あ、何でもねえよ。とりあえず、あっちに案内があるから、そこで放送してもらえば良いんじゃねえか?」

「そうですね。……ママを捜しますので、一緒に来てくれませんか?」

春奈は優しい表情を見せた後、男の子の手を握る。

そのまま、男の子を連れて、2人は近くの案内を目指した。

「今日はママと買い物ですか?」

「うん」

移動している間、春奈は男の子に話しかけ、不安がらせないようにしていた。

「あそこが案内ですよね?」

「ああ、多分そうだと思うけど……」

「ママ!」

男の子は春奈の手を離し、そこにいた女性に抱きついた。

「丁度良かったな」

「そうみたいですね」

女性は秀人達に近付くと頭を下げる。

「ありがとうございました」

「いえ、大した事していませんから。君、もうママから離れたらダメですよ?」

「うん!」

元気な返事を聞き、春奈は笑顔になる。

そのまま親子と別れ、秀人達はデパートの中にあるレストランに入った。


夕食時で混んでいたため、2人は少しだけ待たされた後、テーブルに通された。

「春奈、足痛くなったりしてねえか?」

「はい、大丈夫です」

デパートの中を歩き回った事により、春奈が足を痛めていないか、秀人は心配だった。

「今日、歩いてばかりだったな」

「でも、おかげで秀人君の事、色々と知る事が出来て楽しかったです」

「そっか」

2人はメニューを少しだけ見た後、店員を呼び、料理を注文した。

「あ、秀人君?」

「ん?」

春奈は少しだけ迷った様子を見せた後、口を開く。

「秀人君、進路決めましたか?」

「え?」

「進学、考えていないと言っていましたので……」

「ああ、そうだな……」

秀人は少しだけ考えた後、その質問に答える事にする。

「俺の親父、高卒なんだけど、ゲームクリエイターとして成功してるんだ」

「そうなんですか?」

「お袋は専業主婦って感じで……とりあえず、2人共、学歴に拘らねえんだ。俺、特にやりたい事もねえから、進学は考えてねえんだけど、だからって就職するつもりもねえし……まあ、簡単に言えば将来の事、何も決めてねえって事だ」

秀人は春奈と目を合わせる事なく、笑った。

「ごめんなさい」

「何で謝るんだよ?」

「いえ、悪い事を聞いてしまったと思いましたので……」

「別に良いよ。ところで、春奈は進路決めてるのか?」

「あ、はい」

秀人の質問に春奈は恥ずかしそうに話を始める。

「舞台俳優になりたいと思っています」

「舞台俳優?」

「はい。聞いた話では、難しい職業だそうですが……」

「だから、演劇部に入ってるのか?」

「はい、そうです」

「でも、何で舞台俳優なんだ?」

「あ、その……」

春奈は少しだけ答えに戸惑う。

「……ずっと夢だったんです」

「子供の頃からのか?」

「えっと……小学校の3年生ぐらいから持っている夢なんです」

「10年近く前の夢を今も目指してるってすごいな」

「舞台を見に行きまして、その時にとても感動したんです。それで、私も舞台に立ちたいと思いました」

「そっか。お前、劇の評判良いんだし、その夢、案外楽に叶えられるんじゃねえか?」

「そうでしょうか?」

秀人の言葉に春奈は嬉しそうに笑う。

「俺、将来の夢なんてねえからな……」

「今、持っていなくても、小さい時は将来の夢、持っていましたよね?」

「どうだったかな……」

春奈の質問に答えようと、秀人は昔の事を思い返す。

そして、今まで気付かなかった事が不思議なぐらい、大きな違和感を感じた。

「……秀人君?」

「え?」

春奈の心配するような表情を見て、秀人は自分がどんな顔をしていたのか理解する。

「どうかしましたか?」

「あ、悪い……」

その時、店員が料理を持って来たため、少しの間、話を中断する。

「ちょっと変な事に気付いただけだよ。大した事ねえから心配するな」

「秀人君、そんな雰囲気じゃなかったです」

「ああ、まあ……」

春奈が納得のいかない表情だったため、秀人は話す事にする。

「小さい頃の記憶、思い出せねえんだ」

「え?」

「俺……確か、小4かそれぐらいの時、今の家に引っ越して来て、その時に転校してるんだ。その後の事は覚えてるんだけど、その前の事になると何も覚えてなくてな」

秀人は春奈を安心させるため、笑顔を作る。

「今、その事に気付いたから、少し驚いちまったんだ。心配させて悪かったな」

「あ、いえ……ごめんなさい」

「いや、春奈は悪くねえだろ。何で謝るんだよ?」

「私、秀人君を困らせるような事ばかり聞いています」

「別に気にするなよ」

「私、こんな事では秀人君に嫌われてしまいますよね……」

春奈はため息をつく。

その様子を見て、秀人もため息をつく。

「春奈、そのネガティブな考え方、変えられねえのか?」

「え?」

「何でもかんでも悪い方に考える事ねえだろ。世の中、良い事ばかりじゃねえけど、悪い事ばかりでもねえんだし」

秀人は春奈の目を見て、強い口調で続ける。

「ポジティブに生きなきゃ、やってられねえだろ」

そこまで話を聞き、春奈は笑顔を見せる。

「そうですね。秀人君の言う通りだと思います」

春奈は秀人の顔をじっと見る。

「どうした?」

「あ、いえ……こうして秀人君と一緒にいられる事が、まだ信じられないんです」

春奈は穏やかな表情を見せる。

「秀人君、私のどこを好きになってくれたのでしょうか?」

「え?」

まさか、春奈からこの質問をされるとは思っていなかったため、秀人は困ってしまう。

「えっと……だったら、春奈は俺のどこを好きになったんだ?」

「え?」

秀人は時間稼ぎをしようと、反対に質問を投げかける。

「だって、俺達、全然話した事ねえだろ?それに俺、ルックスだって良くねえし」

「秀人君はかっこいいです!」

大きな声を出してしまい、直後に春奈は顔を赤くする。

「……私、学校に行くのが嫌になった事があるんです」

「まあ、誰でもあるんじゃねえか?」

「私、昔から友達作るの苦手なんです。いつも1人で……変わろうとは思うんですけど、上手くいかないんです。部活でも先輩に嫌われてしまって、同じ学年の方もみんな辞めてしまって、また嫌な事が増えてしまって……」

春奈はそこで、秀人を真剣な目で見る。

「落ち込んでいた時、秀人君がグラウンドでフットサルをしているのを見かけたんです」

春奈はその時の事を思い出すように目を閉じる。

「残り時間もあまりないのに、大きな点差が付いていて、秀人君のチームの人はみんな諦めていました。でも、秀人君は決して諦めないで、ずっと前向きで、周りの人にも明るく声をかけて……」

春奈の言っている内容がいつの事か思い出せなかったが、秀人は黙って話を聞く。

「秀人君の言葉に、みんなが勝てると信じて……試合終了間際で逆転して、試合に勝った後、秀人君は照れくさそうな表情でみんなに囲まれて……」

春奈の顔はいつの間にか笑顔になっている。

「それを見て、私も頑張ろうと思えました。結局、今でも友達を作ったりは出来ていませんけど……」

「それ……俺は別に試合を楽しんでただけだろ?」

「それでも、私は頑張れたんです」

そこで、春奈は照れくさそうに、また顔を赤くする。

「それから、ずっと秀人君の事が気になっていました。廊下ですれ違った時に振り返ってしまったり、教室の前を通る度に姿を捜してしまったり、それで見つけたら足を止めてしまったり……」

話を聞きながら、秀人は今まで春奈の存在に気付かなかった事を申し訳なく感じていた。

「秀人君、とても優しい人だと思いました」

「優しい?」

秀人は思わず笑ってしまった。

「お前、優しいの意味、間違って使ってねえか?」

「そんな事ないです。思いやりがあって、困っている人や助けを求めている人にすぐ気付いて、それは優しいという事だと思います」

「おいおい、誰の事言ってるんだ?俺、言葉使いは悪いし、面倒くさがりだし、どこをどう見たら、そう感じたんだよ?」

「……秀人君を見ていたら、そう感じました。さっきも迷子の男の子を助けていました」

「助けたのはお前だろ。それに俺、1人だったら迷子とか無視するっての」

「そうでしょうか……?」

秀人に強く否定され、春奈は少しだけ自信を失くした様子だ。

「でも……私、秀人君の事をずっと見ていて、気付いた時には秀人君の事を好きになっていました。だから、秀人君から好きと言ってもらえて、とても嬉しかったです」

「そっか……」

「私、きっと秀人君を困らせてしまう事、多いと思います。今日もたくさん困らせていると思います」

「だから、そういう考えを止めろって。もっと自分に自信持てよ。少なくとも、今日、お前と一緒で俺は楽しんでるし、困ったりなんかしてねえからな」

それは嘘ではない、秀人の本心だ。

「本当ですか?」

「ああ、ホントだよ。というか、そんな事言われたら、俺で良かったのかって俺まで心配になるからな」

「そんな……秀人君と一緒で今日一日楽しかったです」

「その台詞、そのまま春奈に返すよ」

秀人の言葉に春奈は納得すると嬉しそうに笑う。

「やっぱり……秀人君、優しいです」

「どこがだよ?それより飯、食わねえか?」

今のところ、2人は全く料理に手をつけていない。

「あ、はい。頂きます」

「頂きます」

2人はお互いに軽く笑った後、少しだけ冷めてしまった料理を食べ始めた。


結局、ここでも2人で会計を済ませた後、2人は店を出て、帰る事にした。

「お前、妙な所で頑固だよな」

「え?」

「普通、奢るって言われたら、素直に喜ぶもんじゃねえのか?」

「ダメでしょうか?」

「まあ、俺としては助かるから良いけどな」

2人はそんな事を話しながら、駅に入る。

そして、すぐに来た電車に乗った。

「あ、秀人君?」

「ん?」

「いつも学校へ行く時、何両目に乗っていますか?」

「改札が1番近いドアの所に乗るけど?」

「じゃあ、明日から一緒に学校、行きませんか?」

「え?」

「私、三枝谷駅で待ってますから」

「俺、いつもギリギリの時間だし、先に行けよ」

春奈が降りる駅まで1駅だったため、電車はすぐ到着した。

「今日はありがとうございました。楽しかったです」

「ああ、俺も楽しかったよ」

「じゃあ、また明日」

「ああ、またな」

春奈と別れ、秀人は1人になると、今日あった事を思い返し、少しだけ笑った。

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