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6月26日(土)

秀人は春奈を家まで迎えに行き、一緒に駅を目指していた。

「不思議だよな」

「はい?」

「1ヶ月前には、俺達は話した事もねえ赤の他人だったのに、今はこうして一緒に学校へ行くのが普通になってるもんな」

「そうですね。ずっと覚める事のない夢を見ている気分です」

「詩人みたいな事言うんだな」

秀人はバカにするように笑う。

「あの……秀人君?」

「ん?」

「秀人君が罰ゲームとして、私に嘘の告白をした事……私はもう気にしていませんから」

「は?」

春奈の唐突な言葉に秀人は少しだけ固まる。

「急にどうしたんだよ?」

「秀人君、その事を気にして……私に気を使ってくれてるんですよね?」

「お前、そんな風に考えてたのか?」

秀人はため息をつく。

「俺、お前と一緒にいて楽しいと思ってるのはホントだからな。罰ゲームの事、悪かったとは思ってるけど、それでお前に気を使うとか、そんな風には考えてねえよ」

「本当でしょうか?」

「兄ちゃんの事でも感謝してるって言っただろ?友達の言う事は信じろよ」

「あ、はい」

春奈が安心した様子だったため、秀人は笑顔を見せる。

「お前、相変わらずネガティブな奴だよな」

「ごめんなさい。秀人君を見習おうとは思うのですが……」

「お前、自分が思ってるより、人から好かれる要素、たくさん持ってるよ」

「そうでしょうか?」

「ああ、見た目だけじゃなく、性格も含めてな」

「秀人君にそんな風に言ってもらえて嬉しいです」

「だから、もっと自信持てよ」

「はい!」

春奈の元気な返事に秀人はまた笑顔を見せた。


この日、各クラスで出席を取った後、全校生徒が大講堂に集まり、文化祭の開会式が行われた。

秀人にとっては、初めて見る開会式だったが、やってきた芸人の漫才も、教師による合唱もつまらないものだった。

「和孝、早く舞台ジャックしてこいよ」

「あなたは意地でも俺に恥をかかせたいんですか?」

秀人は終止、和孝をからかい、開会式は適当に見るだけだった。

そんな開会式が終わり、生徒達は教室に戻った後、クラスの出し物に向けて、準備を始める。

当然、3年C組もメイド・執事喫茶の準備に取り掛かる。

接客を行う秀人達は早めに簡単な昼食を取った後、服を着替えた。

「何でこんな格好しねえといけねえんだよ?」

「秀人、結構似合ってるよ」

「お前は似合わねえな」

「あなた、ひどい事言いますね……」

「及川、久保、私はどうだ?」

「俺は似合ってると思うが、和孝は小声で似合ってねえって……」

「言ってないですよ!夢ちゃんも似合ってるよ」

「ありがとう」

「……何で、殴るわけ?」

「名前で呼んだからだろ」

そこで、秀人は違和感を持つ。

「女子、遠野しかいねえのか?」

「え?」

夢は周りを見渡す。

気付けば、接客担当を行うはずの、もう1人の女子がどこにもいない。

「……いないな」

「お前、気付けよ!」

「指示を出したり、忙しかったんだ!」

「……じゃあ、3人でやるのか?」

「コーヒー淹れる人を誰かメイドにしようよ」

「調理担当も忙しいからダメだろ。とりあえず捜しに行くか?」

「学校中捜さないといけないし、それは無理じゃないかな?」

「もうすぐ開く時間だ。とにかく始めよう」

「まあ、途中で戻って来る事に期待するか……」

「そういえば、及川達に説明していなかったが、客が来たら『お帰りなさいませ』だ。男なら『ご主人様』、女なら『お嬢様』を付ける。後、『くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?』と言って持ち帰りかどうかを聞けば良い。後はやりながら私が説明する」

「わかったよ」

「それじゃあ、調理担当、コーヒーと紅茶の準備を開始してくれ。宣伝担当、看板を持って校内を移動してくれ。コーヒーも紅茶も1杯100円だ。お菓子は自由に食べて良い事にする。じゃあ、開始するぞ」

夢の言葉を合図に3年C組のメイド・執事喫茶がオープンした。

しかし、しばらく待っても客は誰も来なかった。

「まだ最初だし、外の屋台に客が集中しちゃうよね」

「このまま、客が来なければ楽なんだけどな」

「及川、少しはやる気を出せないのか?」

「この間にもう1人を捜しに行けば良かったね……。まあ、見つかる可能性は低いけどさ」

退屈な時間をしばらく送っていたが、少しずつ校内にも人が来ているのか、廊下を通り過ぎる人の数が多くなる。

「やってるのかな?」

その時、同い年に見える男2人が中を覗く。

「お帰りなさいませ、ご主人様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

「お、本格的だな」

夢の対応にその客は機嫌を良くしたようだ。

「遠野、何事にも本気になれる奴だよな」

「秀人はやる気なさ過ぎるよ」

その時、女の客が来た。

「和孝、行け」

「あなたが行きなさいよ!」

「おい、対応してくれ」

「もう……お帰りなさいませ、お嬢様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

「ホントに執事だー」

「あ、あの人、かっこいいんだけど!変わってくれない?」

その客は秀人を指差す。

「俺の立場って……」

その時、別の女性客が来た。

「……まあ、やるしかねえか」

秀人はため息をついた後、接客を始める。

「お帰りなさいませ、お嬢様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

そして、秀人が接客を始めてから、数分後、廊下が騒がしくなり始める。

「本当だ!及川君がいる!」

「及川君、かっこいい!」

そんな声が廊下から聞こえ、和孝は笑う。

「秀人、モテモテだね」

「さっきから女性客が多くねえか?」

「みんな、秀人目当てなんだよ。秀人、この前の1件で印象変わってから、ファンが増えたもんね」

「おい、客が来たぞ」

「たく……お帰りなさいませ、お嬢様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

秀人が執事姿で接客しているという噂がまず校内に広まり、それが次第にイケメン執事がいるという噂に変わっていった結果、女の客が次々にやって来た。

「おい、もう1人、接客増やさねえと、さすがに無理だろ」

「わかってる。全く、いつになったら戻るんだ?」

「多分、逃げたみたいだし、戻らないんじゃないかな?」

「あの?」

春奈の声が聞こえ、秀人は振り返る。

「すごい人ですね。それに秀人君、似合ってますよ」

春奈は笑顔を見せる。

「部長の集まりがあって、遅れてしまいました」

「……春奈って、今日は1日暇か?」

「はい、今日はもう、何もする事ないですよ」

「この際、別のクラスの奴でも良いんじゃねえか?」

秀人は夢に笑顔を見せる。

「及川、さすがにそれは……」

「別に問題ねえだろ。それとも規定違反になるのか?」

「いや、そんな事する人いないから、規定も何もないと思うよ……」

「だったら、何も問題ねえだろ」

「何の話でしょうか?」

状況が飲み込めず、春奈は首を傾げる。

「立石、折り入って頼みがあるんだ」

「何ですか?」

「春奈ちゃん、メイド服とか興味ない?」

「え?」

「まあ、簡単に言うと、接客が1人逃げたから、代わりに春奈がやってくれると助かるって事だよ」

「……え!?」

春奈はまだ、状況が飲み込めていないのか、慌てた様子を見せる。

「でも……」

「あ、また客だ……和孝、頼む」

「はいはい」

「見ての通り、対応し切れてねえんだ。手伝ってくれねえか?」

「……私で良いんでしょうか?」

「お前なら、問題ねえよ」

「……わかりました」

「立石、だったら、この服に着替えて来て欲しい」

夢がメイド服を差し出すと、春奈は少しだけ考えた後、受け取った。


夢から簡単な説明を受けた後、春奈はトイレでメイド服に着替え、戻って来た。

「どうでしょうか?」

「……似合い過ぎてる」

「久保、どういう意味だ?」

「あ、別に夢ちゃんが似合ってないわけじゃ……」

和孝と夢を横目に、春奈は不安げな表情で秀人を見る。

「秀人君、どうでしょうか?」

「ああ、似合ってるよ。よし、じゃあ、何とか対応しよう」

「はい!」

「春奈、早速、男の客だ」

「あ、はい!お帰りなさいませ、ご主人様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

「うわ、可愛い!」

「君、彼氏とかいるの?」

「すいません、ここじゃナンパは禁止なんだ」

秀人は威圧するように睨む。

「ああ、悪い……」

「ご主人様、あちらにお座り下さい」

夢は春奈に代わり、対応を始めた。

「秀人君、ありがとうございます」

「礼は良いから、接客してくれ。ほら、また客だ」

「あ、はい」

春奈が接客を手伝い始めてから数分後、今度は噂を聞いた男の客もやって来て、行列が出来る程の盛況ぶりになっていた。

中も満席となったが、代わりに客が帰る度に新たな客を入れると出来るようになり、秀人達は接客に追われる事なく、簡単な雑談をする余裕が出てきた。

「秀人、ホントにモテモテだね」

「お前がもてねえだけだよ。それに春奈目当ての客の方が多いんじゃねえか?」

「私は別に……」

「及川も立石もルックスが良いからな。こうして、並んで見るとお似合いのカップルに見えるぞ?」

「え!?」

「バカ、つまらねえ事言うなよ!」

秀人と春奈が照れた様子を見せると、夢は嬉しそうに笑った。

「でも、遠野さん目当てで来ているお客さんもたくさんいますよ?」

「そうか?私、こんな格好、似合わないと思っているんだが……」

「そんな事ないですよ」

「夢ちゃんも隠れファン多いからね」

「久保、今は接客中だから殴らないが、名前を呼んだ分だけ後で殴るからな」

「……マジですか?というか、そう考えると、俺って必要ないよね?」

「必要ねえなんて今更気付いたのか?」

「あなたね……」

そんな秀人達のバカなやり取りも客の笑いを誘い、3年C組の評判はさらに広がっていった。

「俺、トイレ行って来るね」

その時、和孝は夢の様子を気にしながら、教室を出た。

秀人は客の対応をしていたが、そんな和孝の様子を見て、ある事を確信する。

「遠野、和孝が逃げたと思うから、すぐに追いかけろ。しばらくは俺と春奈で接客する」

「え、大丈夫か?」

「客のサイクルはそこまで早くねえし、1組の客に2人とかで対応してる今の状態なら大丈夫だ。それより、和孝を連れ戻せ。あと、ついでに少し休憩してきても良いからな」

「それはさすがに……」

「俺達も後で休憩させてもらうよ。それより、早く和孝を捕まえに行けよ」

「ああ、わかった」

夢は慌てて教室を出た。

その時、夢と入れ違いで、また客が入って来た。

制服を着ているため、秀人はすぐに同じ学校の生徒だと気付く。

「やっと入れた……」

行列で長い時間待ったため、その男子生徒は疲れたようにため息をつく。

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。くつろいでいきますか?それともすぐにまた出掛けますか?」

「じゃあ、くつろいでいく」

「ご主人様、お嬢様、こちらの席へお座り下さい」

秀人と春奈が対応すると、一緒にいた女子生徒が首を傾げる。

「お嬢様、どうかしましたか?」

「あ、いいえ。執事の方もメイドの方もルックスが良くて、これなら行列が出来るのも納得ですわね」

「え?」

「えらそうな奴だが、悪気はない。気にしないでくれ」

「ご注文は何になさいますか?」

「そうだな……俺はコーヒーだ」

「私は……」

女子生徒は少しだけ困っているような表情を見せる。

「飲めなかったら、俺が飲む。だから、頼みたい物を頼め」

「じゃあ、紅茶をお願いしますわ」

「紅茶は嫌いだ」

「頼みたい物を頼んで文句を言われるなんて納得いかないわ」

2人のやり取りを見て、秀人は笑う。

「ホントのお嬢様みたいだな」

「失礼な事、言わないで欲しいわ」

「いや、俺もそう思うから構わない」

「連れとして、ここは弁解するのが普通じゃないかしら?」

「コーヒーと紅茶、すぐにお持ちします」

秀人は笑いを堪えながら、コーヒーと紅茶を持って、その席に戻る。

「ごゆっくり、おくつろぎ下さい」

それからしばらく時間が経ち、夢が和孝を連れて戻って来た。

「捕まえたぞ」

「もう、見逃してくれても良いじゃん」

「お前がいなくなったら、さらに忙しくなるからダメだよ」

「そんな……」

和孝は肩を落とす。

「私達は簡単に休憩を取ってきた。2人も少しの間、休憩して来たらどうだ?」

「ああ、そうさせてもらう……って、この格好で外に出るのか?」

「その格好なら、宣伝にもなるはずだ」

「わかった……じゃあ、行ってくるな」

「私も行って来ますね」

秀人と春奈は接客を夢と和孝に任せ、教室を後にした。


秀人と春奈は外に出た後、何を食べようか考えていた。

「やっぱり、着替えた方が良かったな……」

「それでは時間がかかってしまいます」

「お前、何か食いたいのはあるか?」

「たくさんあって、迷ってしまいます……」

「じゃあ、1つずつ買って適当に分けるか」

「はい、そうしましょう!」

「俺はそば飯食いたいけど、お前はどうする?」

「えっと……」

春奈は屋台を見回す。

「明日もあるんだから、そんなに迷うなよ」

「あ、そうですね。じゃあ、たこ焼きが食べたいです」

「わかった」

2人は食べ物を買うと、空いていた場所で食べる事にした。

それぞれ、執事とメイドの格好をしている事もあり、通りがかる人は2人の事を物珍しそうに見ていた。

「執事とメイドのカップルがいるよ」

「しかも美男美女なんだけどー!」

時々、そんな声も聞こえ、春奈は顔を赤くする。

「ごめんなさい」

「何で、お前が謝るんだよ?」

「私と一緒にいるせいで、誤解を生んでしまっています」

「それは俺も同じじゃねえかよ」

「でも、今だけは誤解を生んでしまっても、一緒にいたいです。こうしていられるのは今だけですから」

「別にまた遊びに行ったり出来るだろ」

「いえ、秀人君に恋人が出来てしまったら、一緒にいられなくなってしまいます」

「は?」

春奈の唐突な話に秀人は固まる。

「何でそんな話になるんだよ?」

「秀人君を見に、たくさんの方が来ていましたので……」

「というか、お前目当ての奴もいただろ?そもそも、お前に恋人が出来るって事もあるんだからな」

「それはないと思います」

「前に話してた初恋の人と再会する事だってあるかもしれねえだろ?」

秀人は軽くため息をつく。

「まあ、今はこうして一緒にいても、問題ねえんだし、先の事はなるようにしかならねえだろ」

「そうですね」

「ほら、さっさと食って戻らねえと」

「あ、はい」

2人はそば飯とたこ焼きを食べ終えると、教室に戻った。


文化祭、1日目が終わり、和孝は大きく背伸びをした。

「今日は疲れたね」

「和孝、役立たずだったろ」

「全くだ」

「そんな事言うなら、サボらせて下さいよ!」

秀人達の様子を見て、春奈は笑う。

「立石もありがとう。とても助かった」

「いえ、私もお手伝い出来て楽しかったです」

「しかし、及川と立石の人気のおかげか、今日も買い出しに行く必要があるな」

「じゃあ、スーパーが閉まる前に行くか?」

「私も一緒に行きますよ」

「いや、及川と立石には頑張ってもらったし、2人は帰ってくれ。買い出しは久保に付き合ってもらう」

「俺ですか!?」

「私を名前で6回も呼んだからな。買い出しに付き合ってくれれば、今回は勘弁してやるぞ?」

「はい、喜んで行きます!」

「という事だ。立石は明日、演劇部の発表もあるし、早く帰って、体を休めてくれ」

「はい、わかりました。じゃあ、秀人君、帰りましょうか」

「和孝と遠野の2人でホントに大丈夫か?」

「昨日も及川と2人で大丈夫だったんだ。心配するな」

「じゃあ、先に帰るからな」

秀人は帰り支度を済ませると、春奈と一緒に学校を後にした。


「今日は楽しかったです」

「お前は明日の方がメインなんだからな」

帰りの電車の中、春奈はまだ興奮が冷めていないのか、上機嫌だった。

「でも、無理言って悪かったな。ホントに助かったよ」

「結局、もう1人の方は戻って来ませんでしたね」

「まあ、明日の午前中、接客やらせるって遠野が言ってたよ」

「そうですか」

春奈は眠そうな表情で欠伸をする。

「今日、疲れただろ?今夜は小説読んだりしねえですぐに寝ろよ」

「はい、そうします。最近は忙しくて、小説もなかなか読めないんですよね……」

春奈はため息をつく。

「犯人が誰なのか、気になっています」

「まあ、明日が終われば、少し余裕が出来るだろ?それから続きを読めよ」

「はい」

その時、三枝谷駅に到着し、2人は電車を降りる。

「秀人君も今日は疲れたはずです。送ってもらうのは申し訳ないです」

「俺は体力あるし、大丈夫だよ。いらねえ心配するな」

「……それじゃあ、お願いします」

2人は駅を出ると、寄り道する事なく、真っ直ぐ春奈の家を目指す。

「私、秀人君のおかげで、今を頑張る事が出来ます」

「大袈裟な事言うなよ。元々、お前は頑張れる力を持ってたんだよ」

「そんな事ないです。全部、秀人君のおかげです」

「たく、お前の中で俺ってどれだけすごいんだよ?」

「秀人君、実際にすごい人です。将来は教師になる夢を叶えて、誰からも愛される人になると思います」

「……どっかで聞いた台詞だな」

秀人は昔の事を思い返す。

「……俺が兄ちゃんに言ってた言葉だ」

「え?」

「兄ちゃん、スポーツ万能で成績も良いって周りから評判だったんだよ。きっと将来はすごい人になるんだって思ってた。だから、あの事故で兄ちゃんが亡くなった時、代わりに俺だったら良かったのになんて考えたりもした」

「秀人君、そんな事考えないで下さい」

「わかってる。春奈が言ってくれた通り、兄ちゃんが助けてくれたんだもんな」

「それに、きっと秀人君がお兄さんの事をそう思っていたように、お兄さんも秀人君に対して同じような考えを持っていたと思います」

「そうか?」

「もしも、事故に遭ったのが秀人君だったら、お兄さんも自分が身代わりになれば良かったと考えるはずです」

「そっか……そうかもな」

秀人は納得すると、少しだけ笑った。

その時、春奈の家に到着し、2人は足を止める。

「今日もありがとうございました」

「明日も迎えに来るからな。あ、明日は朝食軽めにしろ。何か屋台で食いたいのあるんだろ?」

「はい、そうします」

「じゃあ、今日はすぐ寝ろよ」

「はい、おやすみなさい」

春奈の笑顔に秀人も笑顔を返した後、その場を後にした。

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