第21話「炭焼きの煙と心の炎」
7月22日、早朝。真琴は健三おじいちゃんに起こされた。
「まこと、起きるんじゃ。炭焼きを始めるぞ」
真琴は眠い目をこすりながらも、期待に胸を膨らませて起き上がった。
朝もやの立ち込める中、真琴は祖父と共に炭焼き窯へと向かう。途中、祖父が静かに語り始めた。
「炭焼きはな、まこと。木の命を別の形に変える、神聖な仕事なんじゃ」
真琴は祖父の言葉に、深く頷いた。
炭焼き窯に到着すると、祖父は丁寧に窯の準備を始めた。真琴も手伝いながら、祖父の一つ一つの動作を注意深く観察する。
「まず、木を適切な大きさに切り、窯に詰めていくんじゃ」
祖父の指示に従って、真琴も慎重に木を窯に入れていく。その作業の中で、木の香りが鼻をくすぐり、なんだか神秘的な気分になる。
窯に火を入れる瞬間、祖父は真琴に向かって言った。
「まこと、火を扱う時は敬意を持つんじゃ。火は生命を象徴するものじゃからな」
真琴は緊張した面持ちで、祖父と一緒に火を起こした。炎が窯の中で踊り始めると、真琴は思わず息を呑んだ。
時間が経つにつれ、窯から煙が立ち始める。その煙の匂いが、真琴の記憶を呼び覚ます。
(そうか、おじいちゃんの服にいつもついてるあの匂い、これだったんだ)
真琴はふと、都会では感じることのできない、大地とつながっている感覚を覚えた。
昼頃、さくらおばあちゃんが昼食を持ってきてくれた。三人で窯の前に座り、おにぎりを頬張る。
「まこと、炭焼きの仕事はどうじゃ?」
おばあちゃんが優しく尋ねた。
「うん、すごく面白いよ! でも、難しそう……」
真琴は正直に答えた。健三おじいちゃんは静かに微笑んだ。
「難しいからこそ、やりがいがあるんじゃよ」
午後、窯の温度管理に真琴も参加した。祖父の指示に従って、窯の開閉を行う。その作業の中で、真琴は少しずつ炭焼きの奥深さを感じ始めていた。
夕方近く、祖父が真琴に向かって言った。
「まこと、炭焼きは待つことも大切なんじゃ。今夜は、窯の番をしてみるか?」
真琴は少し驚いたが、すぐに頷いた。
「うん、やってみる!」
夜になり、真琴は窯の前で火の番をしていた。静寂の中、窯からかすかに聞こえる音に耳を澄ます。
(木が炭に変わっていく音かな……)
星空の下、真琴は自分の中に芽生えた何かを感じていた。都会では味わえない、自然との一体感。そして、伝統を受け継ぐことの意味。
真琴はふと、自分の将来について考え始めた。環境保護の仕事に就きたいという夢。その夢と、今ここで感じていることが、不思議とつながっているような気がした。
夜が更けていく中、真琴の心の中で、小さな炎が静かに燃え続けていた。それは、これからの人生を照らす、大切な灯火になるのかもしれない。




