第20話「祖父母の家での夏休み」
7月20日、真琴は両親と弟の勇斗と共に、祖父母の家に向かっていた。車窓から見える景色が、少しずつ深い緑に包まれていく。
「わあ、山がどんどん近づいてくるね!」
勇斗が興奮気味に叫ぶ。真琴も心の中でわくわくしていた。
祖父母の家に到着すると、さくらおばあちゃんが笑顔で出迎えてくれた。
「まあ、まこと、大きくなったわねえ」
さくらおばあちゃんに抱きしめられ、真琴は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「おばあちゃん、元気だった?」
「ええ、元気よ。さあ、中に入りなさい」
家の中に入ると、懐かしい匂いが鼻をくすぐる。土間には、健三おじいちゃんの作った木彫りの作品が並んでいた。
「おじいちゃん、新しい作品できたの?」
真琴が興味深そうに尋ねると、健三おじいちゃんは静かに頷いた。
「ああ、山の精霊をイメージして作ってみたんじゃ」
その日の夕方、真琴は祖父と一緒に裏山を散策した。木々の間を抜ける風が、真琴の髪をそよがせる。
「まこと、この森の声が聞こえるか?」
健三おじいちゃんの問いかけに、真琴は耳を澄ませた。
「うん……鳥の声とか、木の葉がこすれる音とか……」
「そうじゃ。森は生きておる。我々人間も、この大きな生命の一部なんじゃ」
真琴は祖父の言葉に、深く頷いた。
夜、囲炉裏を囲んで家族全員で団欒していると、さくらおばあちゃんが昔話を始めた。
「昔々、この山に住む山姥がいたそうな……」
真琴と勇斗は、おばあちゃんの語る物語に引き込まれていく。窓の外では、蛍が静かに光を放っていた。
翌日、真琴はおばあちゃんと一緒に畑仕事を手伝った。土の感触、野菜の匂い、そして太陽の暖かさが、真琴の心を癒していく。
「まこと、この畑にはね、私たちの想いがこもっているのよ」
さくらおばあちゃんの言葉に、真琴は不思議な感動を覚えた。
夕方、真琴は一人で裏山を散策していた。ふと立ち止まると、風に揺れる木々の姿に見とれる。
(この景色、スマホで撮りたいな……でも、ここには電波が届かないからもってこなかったんだよね)
そう思った瞬間、真琴は自分の中に小さな変化を感じた。スマホがなくても、この美しい風景を心に刻むことができる。そう気づいた時、なんだか体が軽くなったような気がした。
家に戻ると、健三おじいちゃんが真琴を呼んだ。
「まこと、明日は炭焼きを見せてやろう」
真琴は目を輝かせて頷いた。
その夜、布団に横たわりながら、真琴は今日一日を振り返っていた。都会では味わえない自然との一体感、家族の温もり、そして自分の中に芽生えた新しい気づき。すべてが、心地よい疲れとともに体に染み渡っていく。
窓の外では、満天の星空が広がっていた。真琴は、この景色をずっと忘れないだろうと思いながら、静かに目を閉じた。




