第14話「初夏の風に揺れる心」
6月3日、学校が終わり、真琴は千鶴と弦一郎と一緒に帰り道を歩いていた。初夏の風が、木々の葉をそよがせている。
「ねえ、みんな。今週の土曜日、町の清掃ボランティアがあるんだって」
真琴が言うと、千鶴と弦一郎は顔を見合わせた。
「そうね。私も親から聞いたわ」
千鶴が静かに答えた。
「ふむ、地域貢献か。悪くないな」
弦一郎も興味を示した。
「私、参加しようと思うんだ。みんなも一緒にどう?」
真琴の提案に、二人は笑顔で頷いた。
「いいわね。一緒に行きましょう」
「ああ、俺も行く」
三人は土曜日の約束をして別れた。家に帰った真琴は、リビングでくつろいでいた。そこへ、勇斗が駆け込んできた。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん! 見て見て、学校で作ったの!」
勇斗は得意げに、粘土で作った小さな動物の置物を見せた。
「わあ、かわいいね! 勇斗」
真琴は弟の頭を優しく撫でた。その時、母の美里が台所から顔を覗かせた。
「まこと、ちょっと手伝ってくれない?」
「うん、わかった」
真琴は少し緊張した面持ちで立ち上がった。最近、母と二人きりになると、何だかドキドキしてしまう。女の子として成長していく自分の体のことや、将来のことなど、話したいことはたくさんあるのに、なかなか切り出せないでいた。
台所に入ると、美里は夕食の準備をしていた。
「まこと、野菜を洗うのを手伝ってくれる?」
「うん、わかった」
真琴は流し台に立ち、慎重に野菜を洗い始めた。しばらく無言で作業を続けていると、美里が静かに話しかけた。
「ねえ、まこと。土曜日の町の清掃ボランティア、参加するの?」
真琲の手が少し止まった。心の中でどきりとする。
「うん、友達と一緒に行こうと思ってるんだ」
美里は嬉しそうに微笑んだ。
「そう、それはいいわね。地域のために何かするって、とても大切なことよ」
真琴は母の言葉に、少し誇らしげな気持ちになった。
「ママも参加するの?」
「ええ、もちろんよ。家族みんなで行きましょう」
その夜、真琴は布団の中で考え込んでいた。土曜日のボランティアのこと、母との会話のこと、そして自分の変化していく体のこと。様々な思いが胸の中でぐるぐると回っている。
「私、ちゃんと役に立てるかな……」
そんなつぶやきとともに、真琴は静かに目を閉じた。窓の外では、さくらんぼの実がほんのりと赤みを帯び始めていた。




