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東京都放浪記 ハンガリー→トルコ→ギリシア→イタリア→エジプト  作者: みらいつりびと


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エジプトの洗礼

 エジプトを旅する多くの日本人が下痢をする。

 2、3日立ち寄って、ピラミッドを見るだけなら罹患しないかもしれない。しかし、1週間以上の旅になると、ほとんどの日本人が下痢に見舞われるのではないだろうか。

 ボトルに入ったミネラルウォーターではなく、現地の水道水を不用意に飲んだから、などという明確な理由があるわけでもないのに、下痢をしてしまうのだ。

 サッカラからカイロに戻ってきた夜、わたしは激しい下痢をした。

 エジプトの洗礼を受けたのだ。

 オールドカイロのとある食堂で晩ごはんを食べた。

 鶏肉のグリル、サラダ、パンというなんの変哲もない夕食だ。

 サラダがだめだったのかもしれない。

 なんという名前かわからない鮮やかなグリーンの葉物野菜の一部が、少しばかり痛んで深緑に変色していた。

 あまり気にせずに食べてしまった。

 真夜中、うなされて目が覚めた。

 その直後、強烈な腹痛に襲われ、便意を催し、わたしはトイレに駆け込んた。

 わたしは腸の中が空っぽになるまで何度も下痢をして、その後もちょっと水を飲んだだけでもトイレに行きたくなるという状態に陥った。

 エジプトへ行くと下痢になる、という情報はネットで調べて知っていた。

「エジプト下痢」という名前までついている。要するに軽度の食中毒で、 細菌やウイルスに汚染された飲食物が原因だ。水道水の状態が悪いエジプトでは、野菜の清潔さを見極めるのはむずかしい。

 今後、生野菜は食べるまいと心に決めた。

 ルクソールへ移動しようと思っていたのだが、闘病日になってしまった。

 便意は午前中いっぱい断続的に到来し、正午すぎにおさまった。

 午後にはミネラルウォーターを飲めるようになった。

 コレラなどの深刻な病気ではなく、ただのエジプト下痢だったようだ。

 夕方になって食欲も湧いてきたが、食べたいものは日本のお粥だ。

 そんなものはカイロにはない。

 スーパーマーケットへ行き、チョコレートウエハースとバタービスケットを買った。

 恐る恐る食べてみた。日本のお菓子よりかなり甘味が強いが、食べられないことはない。

 怖れていた下痢はもう襲ってこなかった。

 げっそりとしていたのだが、糖分を取って、少し元気が出てきた。

 その夜、日本食が食べたい、と熱烈に思った。

 白いごはん、うどん、そば、ラーメン、寿司、天ぷら、鶏の唐揚げ、梅干し、ほうれん草のおひたし、コロッケ、とんかつとキャベツの千切り、親子丼、牛丼、カレー、なんでもいい。

 日本のごはんなら、どんなものでもいい。

 翌日の昼、カイロの日本料理店に入った。

 焼き鳥が美味しかった。メニューには寿司もあったが、念のため注文は避けた。

 下痢はやって来なかった。

 完全に健康を取り戻した。

 6月1日の夜、わたしはナイル川中流域の観光地、ルクソールへ移動することにした。

 ラムセス駅からアスワン行きの寝台列車ナイル・エクスプレスに乗る。

 かなり高額の運賃を支払わなくてはならないが、南エジプトへの外国人の移動手段は限られていて、航空便を除くと、これしか選択肢がなかった。

 列車の個室にはベッドや洗面台があり、枕、シーツ、毛布は清潔そうに見えた。

 19時45分に発車。

 夕食がついていて、鉄道員が部屋に運んできてくれた。

 白米、パン、鶏肉のグリル、じゃがいもとにんじんの炒め、ピクルス。

 味は可もなく不可もなくといったところ。ピクルスは食べなかった。

 部屋は冷房が効いていて、寒いぐらいだった。

 食後、わたしは寝具にくるまった。

 列車はかなり揺れたが、ベッドの寝心地は悪くなく、わたしはいつしか眠りについていた。


 カイロ滞在中、37,900円使った。ヨーロッパと比べると、物価はかなり安かった。

 移動費20,700円。大半が寝台列車代だ。

 宿泊費4,800円。

 食費9,300円。

 その他3,100円。

 これまでの総支出1,147,300円。

 旅費残金8,852,700円。  

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