#6
階段の踊り場の窓から風に乗って一枚の紙が飛んできた。誰かのイタズラか、ただのゴミか。足元に落ちた紙を拾い上げる。(なんだこの小っ恥ずかしい内容は。…俗に言うポエム?と言うやつか。)A4サイズの紙に1センチ四方ほどのサイズの文字がぎっしりと書き連ねられている。本来あまり上手くないであろう字を丁寧に書いている一文字一文字を見るに、これは中々気持ちがこもっているもののようだ。(ポエム…というよりはラブレターなのか?)
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縁って本当あるんだって感じたんだ。
すっぱい葡萄を眺めてた僕はあの日
きみと出会って変わったと思いたい。
だから僕は君をたくさん笑わせたい。
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一通り目を通して冒頭を読み返す。『僕』と言うのはやはり男の子なのだろうか。そして終わりの文脈をみるに、この手紙は一枚ではないようだ。
長く続いた雨が上がったせいか今日は真夏日のような暑さだ。そのせいか頭が少しぼっーとしてくる。文字の輪郭がぼやけてきた中で、ある文章が浮かび上がってきたように見えた。
「え!?こ…これって…。」
驚き、胸が高鳴った。そして使命感に駆られるように、この手紙を認めた人物のヒントを得るべく慌てて窓から体を乗り出した。上を見上げると何も変わった様子はなく、照りつける太陽が白く眩しい。太陽から目を逸らすように今度は下を見ると、今しがた拾った紙と同じようなサイズであろう紙が数枚、太陽の光を受けて光って見える。その光景に目を輝かせながら期待を膨らませる。そして数秒後、期待通りその紙を拾い歩く人物が現れた。
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同時刻───。校舎裏を何気なく歩いていると一枚の紙が落ちてきた。ゴミか悪戯かと思いハエを払うかのように片手でそれを掴んだ。ゴミにしろ悪戯にしろ誰がやったか突き止めてやる。そんなつもりで掴んだ紙に視線を落とす。
(手紙…か?)
そうなると話は別だ。これの落とし主は故意に落としたものではないのかも知れない。であれば、落とし主に返してあげなければ。何か個人が特定できる情報はないだろうか。そう言った何の悪意もない親切心から手紙の内容を読み始める。そこから目が離せなくなる。自然と口角が上がり笑みが溢れる。
「これは面白い…。」
不敵な笑いと共に頭の中で即興の音楽が大音量で鳴り始めた。
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