表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

8

「魔物を逮捕するの?」

「そうですねえ。大人しく捕まってくれる魔物はほとんどいませんから…魔族の中には話が通じるのもいますが。常に異文化交流ですよ。」

はははと疲れたように榊原は笑った。

「捕まえられなかったらどうするの?」

「滅します。」

即答だった。

「…殺すってこと?」

「姿形を無くす、という意味ではそうですね。ただ魔物は散ってもまた集まってきますので。本当の意味で滅することはできないんですけど。」

ふーん、と真希は相槌を打った。

人の生死と関わることなどほとんどない。ましてや殺し殺され、なんてことはテレビの中でしか見聞きしない真希は、魔物の命についてもいまいちピンとこない。

真希は榊原が星だと称した壁の光を見つめた。肩が壁につきそうなので、光はすぐ目の前だ。


チカ


星が瞬いた気がした。


え?


ビョン!


何かが光から出てきた。


「ギャ!」

驚いた真希は、咄嗟に近くに投げ捨ててあった自分の鞄を鷲掴みにすると、壁に叩きつけた。

「なに!?」

「あー、入ってきちゃいましたね。」

床に放り出された真希の鞄を掴んだ榊原は、壁に当たった側を指した。

「ほら、これ。魔物の残骸です。さすが真希さん、素晴らしい反射神経ですね。」

「は?」

ここ、ここ、と榊原が真希に鞄を近づける。

「近い、近すぎる。やめてよ、虫の残骸じゃないんだから。」

子供が己はっ。

真希は手で払った。

確かに真希の使い古された黒い鞄には、黒というよりドス黒いという表現がぴったりの跡が付いている。


…これ、取れるんだろうか。やめてよ、今鞄を買いに行く余裕なんてないんだってば。


「あ、あそこにも。」

榊原がのんびりと指差した先には、ニョロニョロのような黒い物体が壁から入り込もうとしていた。

「やだ!なんでよ!」

真希はまた鞄を持ち上げて力一杯黒い物体に投げた。カシャンと音がしたのは化粧ポーチの何かが壊れた音か。もう知ったこっちゃない。

「なぜかと言いますと、あの星に見えていた光は、穴が空いているからなんです。」

「は?」

「魔物が溶かしにかかっているんですよー。困っちゃいますね。」


おい!!!

真希は榊原に突っ込むか(物理的に)一瞬迷ったが、それより新たに出現するニョロニョロをどうにかする方を選んだ。榊原は後でも殴れる。


「なんとかしてよ!」

「はい、どうぞ。」

榊原がよれよれのスーツから取り出したのは、ハンマーだった。金属製の物ではない。昔懐かしい、ゲームセンターにあるモグラ叩きゲームで使うもの。木の柄はツヤツヤのコーティングがされていて、子供の頭ほどの大きさのハンマー部分は、原色の赤の合皮。クッション性に富んでいて、これならお子様がうっかり手を打っちゃっても安心…って、おい。


「…それは、なんだか聞いた方がいいのかしらね!?」

怒りに我を忘れそうだった真希は、息を思いっきり吐いてから聞いた。

「真希さんにぴったりかと思いまして。得意そうじゃないですか。」

「たしかに、小さい頃はよく遊んだけど…ってちがーう!」

そう言いつつ、真希はハンマーを榊原から引ったくると魔物を殴った。


——ピョロン


間抜けな音がして、魔物は跡形もなく消えた。


「え、すご。なにこれ。」

「魔物退治用のハンマーです。試作段階で却下されてしまったんですが、僕のお気に入りでして。開発部から一つもらってきたんですよ。お役に立てて何よりです。」

榊原は満足そうに頷いた。

なんじゃそれは!

榊原に当たれない苛立ちは、すべて魔物にぶつけた。


数カ所しか空いていなかった穴は、どんどん数を増やしている。真希がスパンと殴ると、軽快な音を立てて魔物は消える。ついでに穴も消える。


——スパン!

——ピョロン


——スパン!

——チャーチャッチャ


——スパン!

——ピロピロピロ


打ちどころがいいといい音が鳴る。

スカるとフシューとガスが抜けたような音がする。


なんとサービス精神のある魔物たちだろうか。

なにこれ、おもしろい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ