↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のために全てを奪われた男は復讐を決意する ~でも勇者がへっぼこ過ぎてその前に死にそうなんですけど~  作者: 水無月 黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/53

第二十一話 魔王の災厄2

真面目に想像すると、ちょっとグロいかもしれません。

 我輩は魔王である。

 先日おっかないニンゲンがやって来て、たくさんの魔物が殺されてしまったのである。

 我輩も何度も何度も殺されて……ううっ、ブルブルブル……

 恐ろしいニンゲンだったが、勇者ではなかったのである。我輩、殺されはしたが甦ったのである。

 何度も何度も殺されたのであるが……うううっ、もう殺されたくないのである。

 そこで、戦力を増強することにしたのである。

 犬系の魔物が全滅してしまったので、今度は猫系の魔物を集めてみたのである。

 我輩の趣味である。

 まずは百獣の王、ゴールデンライオンちゃん。

 次に獅子にも劣らぬ巨体、ホワイトタイガーちゃん。

 闇夜をかける黒い影、ダークネスパンサーちゃん。

 剣のごとく鋭い牙、セイバージャガーちゃん。

 この四体にそれぞれ眷属を十体引き連れて警備しているのである。

 そして、我輩の護衛としてもう一体。

 地獄からの使者、ヘルキャットちゃん。

 ヘルキャットちゃんは暗殺特化型の魔物なのである。

 小さな猫に見えて、敵の背後に忍び寄って急所を一撃で仕留める凄腕暗殺者なのである。

 そして、隠れた敵を見つけ出す凄腕ハンターなのである。

 こんなに可愛くて、とっても頼りになる護衛なのである。

 ヘルキャットちゃんがいれば、この前のような不意打ちは喰らわないのである。


「フーッ!」


 ヘルキャットちゃん? 急にどうしたのであるか……


――ポトリ


 ヘ、ヘルキャットちゃん!? く、首が、首が……あ。


「よう、また会ったな、魔王。とりあえず、死んどけ。」


 アギャァーーー!!


◇◇◇


 勇者一行を追ってネルンスト帝国に行く前に、俺は一度北の荒野の魔王の様子を見に来ていた。

 勇者達は報告だ何だで寄り道するだろうし、目的地は分かっているのだからわざわざ後を付ける必要はない。

 勇者達の目的はダンジョン攻略ではないとはいえ、勇者を強くするためにそれなりに時間はかけるだろう。

 俺としては強くなった勇者の能力が確認できればよいから、それほど急いで追いかける必要もない。

 そんなわけで、再びグラシア共和国にやって来た。

 ノルムのギルドで状況を調べると、ここしばらくは魔物の襲来の頻度が減っているらしい。

 この前俺が魔王を殺したから、魔物の侵攻が一時的に止まった、とかだったら良かったんだが、そこまで甘くはないだろう。

 次の大攻勢に備えて魔物が戦力を蓄えている、というのが大方の見方だった。

 だから、魔物の襲来が少ない今のうちに人類側も戦いの準備を進めている。

 その一環として北の荒野の偵察の依頼(クエスト)が有ったので受けてきた。

 確かに前回来た時よりも強そうな魔物が増えていた。

 ダンジョンの魔物と違って、野生の魔物は魔物同士で争うことが珍しくない。

 弱い魔物は強い魔物の餌となるのだ。

 強い魔物が増えたことによって、これまで主戦力だったゴブリンとかオークとかが攻め込むどころではなくなったのだろう。

 まあ、この辺りのことは冒険者ギルドに報告するとして。

 魔王は前回とだいたい同じ位置にいた。

 この場所に何かあるのか、最前線との位置関係で最善だったのか。

 それとも、単に逃げ隠れするという発想がないだけなのか。

 ただ、周囲を固める魔物は前回とは変わっていた。

 トラとかライオンとか、強そうな魔物が数も多くいた。

 後からちょっかいをかけられると面倒なので、端から全部倒して行った。

 気付かれないように一体一体丁寧に始末して行ったからだいぶ時間がかかってしまった。

 だが、苦労した甲斐あってしばらくこの辺りは安全だ。

 ついでに魔王も殺してみた。

 殺しても死なないことはよーく知っている。

 だが、ふと思ったのだ。

 この前はいくら切り刻んでも魔王が復活することを確認したが、他にもやりようがあったのではないだろうか?

 そこで、色々と考えて、準備もしてきたのだ。

 さっそく試してみよう。


 まず、取り出したのは安物の剣。

 これをまだ復活していない魔王の死体の心臓めがけてぷっ刺す!


――グサリ!


 これでしばらく様子を見よう。

 果たして心臓に剣が突き刺さったまま生き返ることができるのか?


――ビクン!


 お、そろそろ復活する時間だな。


――ズルリ……バタン!


 突き刺さった剣が抜けた。


「我輩、復活……アギャァー!」


 とりあえずもう一度ぶち殺して魔王を黙らせた。

 やはり剣を刺したくらいでは復活を止められなかったか。

 まあ、このくらいは想定内。次に行ってみよう。


 俺は再び魔王の死体の心臓に剣を突き刺した。

 ただし、今回はただ突き刺しただけじゃない。体重をかけてさらに剣を押し込んで行く。

 魔王の死体を貫いて、地面に深く突き刺さった剣。これならば簡単には抜けないだろう。

 次いでだから、もう一つやっておくか。

 俺はももう一本剣を取り出し、魔王の死体に向かって振り下ろす! えい!

 よし、上手いこと首を切り離したぞ。

 胴体から離れた頭を転がして、少し離れたところで剣をぶっ刺して地面に縫い付ける。

 これでどうだ?


――ビクン!


 魔王の死体が痙攣する。復活の予兆だ。


――ビクン! ビクン! ビクン!


 死体の動きが大きくなる。

 だが、大地にしっかりと刺し込まれた剣は微動だにしない!


――ビクン! ビクン! ズボッ!


 うおっ、何だ、抜けた!?

 いや、剣は地面に刺さったままだ。

 魔王の死体の方に大穴があいて剣から抜け出していた。

 なるほど、復活する前の死体が多少損壊しても関係ないか。

 気が付くと、頭の方も剣から外れて胴体に近くに来ていた。

 頭が銅と繋がり、見る間に傷口が塞がって行き……


「我輩、復かアギャギャギャァー!」


 やはり一筋縄ではいかないか。次行こう。


 神話の中には不死身の怪物というやつも出て来る。

 確か、大地から生命力を得ていて地面に触れている限り死なないという話だった。

 その怪物の倒し方は、地面に触れないように空中に持ち上げた状態で殺すことだ。

 魔王はきっちり死んだ後で復活しているからまた違うんだが、まあ試すだけ試してみよう。

 まず、魔王の死体を用意した槍でぶっ刺す。(ケツ)から頭まで串刺しだ。

 槍から抜け落ちた時のために網をかぶせて、その網を槍の上の方で縛っておく。

 後は槍を地面に突き立て、倒れないように固定して完成!

……なんか、鳥が木の枝にぶっ刺したカエルみたいだな。

 これでしばらく待ってみる。


――ビクン!


 魔王の死体が痙攣した。やはり復活するようだ。


――ビクン! ビクン! ズルズル


 魔王の死体が槍をずり落ちたが、網に引っかかってそれ以上落ちない。


――ビクン! ビクン! ベロン!


 魔王の死体が大穴を開けて槍から外れた。だが、網に引っかかったまま地面には落ちない。

 とはいえ、ここまで来れば……


「のわぁ、まだいるのであガガガガ!」


 やっぱり復活したか。まあ、期待はしていなかった。次行こう。


 まずは、土魔法で穴を掘って、中に持って来た木炭を敷き詰める。

 次に、魔王の死体を適当な大きさに刻んで、穴の中に投入。

 そして、その上から用意した揮発性の油を注ぎ込む。

 火魔法で着火! 勢いよく燃えだした。

 後は風魔法で風を送り込んで火力アップ!

 しばらく続けていると、やがて燃料が燃え尽きて鎮火した。

 魔王の死体も燃え尽きて、骨が残るだけだった。

 我ながら、上手くいったものだ。

 死んでも甦る魔王だが、その肉体が灰になっても復活できるものか?

 しばらく様子を見てみよう。


――カタッ


 ん? 今何か動いたようだ。


――ガタガタガタガタッ!


 うわぁ、骨が動き出した!

 何だ、骨の周りに肉が湧き出すように纏わり付いて……


「ぶはぁ、何だか焦げ臭いのであ……うぎゃぁ!」


 うーん、骨と灰にしても甦って来るのか。

 次、行ってみるか。


 まずは、先ほどと同じ手順で魔王の死体を焼く。

 強力な攻撃魔法を覚えれば火魔法だけで骨まで焼き尽くすことができるのだろうが、あいにく俺の火魔法は火熾し専用だった。

 ダンジョンのサバイバルではこれが一番重要だったんだよ!

 まあとにかく、持って来た木炭と油の火力で魔王を焼くと、今度は残った灰と骨を集めた。

 そして、用意した木箱に詰め込み、厳重に封をした。

 この木箱のサイズでは小柄な魔王でも中に納まることはできない。

 つまり、復活と同時に圧死するかもしれないということだ。

 さて、どうなるか?


――ガタッ、ガタガタッ!


 木箱が音を立てて揺れ始めた。魔王の復活が始まったらしい。


――ガタガタガッ、バコン!


「な、何であるかあぁぁぁぁアベシ!」


 何だか予想外の結果になった。

 一瞬、木箱が破裂したのかと思ったのだが……復活した魔王は木箱と融合していやがった。

 気味が悪かったんで即座にぶち殺したんだが、木箱の破片が貼り付いているんじゃなくて皮膚の一部が木製になっている感じだな。

 うーん、鋼鉄の箱も持ってきているが、試すのは止めておくか。

 次、行ってみよう。


 まず、木箱と一体化した魔王の皮膚が気持ち悪かったので、もう一度火葬。

 それから、取り出したのがでっかいガラス瓶。

 どのくらいでっかいかと言うと、中に人一人余裕で入れるくらいでっかい。口のところは細いから人が入ることはできないが。

 一体何を入れるために作ったんだ?

 置いてあった雑貨屋でも、「珍しいから買い取ったが、使い道はないし邪魔だから」と言う理由で安売りしていた。

 その用途不明のガラス瓶に、魔王の燃えカスを投入。

 それから水魔法で瓶の中に水を注ぎ込む。

 ダンジョンで鍛えた俺の水魔法は、この大きな瓶をいっぱいにするだけの水を出すことができる。

 瓶の中が水で満たされたら、最後に蓋をする。このガラス瓶に付いてきたでかいコルクの栓をしっかりとはめ込む。

 これで準備は完了。

 しばらく待つと、瓶の中に動きがあった、

 バラバラだった骨が集まって人型を作り、その周りに肉が生まれる。

 内臓ができ、筋肉ができ、それを囲む皮膚が生まれて魔王の姿になった。

 やはりガラス瓶を買ってきて正解だったな。中で起こっていることがよく見える。


――ブクブク、ブクブクブクブク!


 魔王が何か言っているみたいだが、水の中なので聞こえない。


――ドンドンドン!


 魔王が必死の形相で内側から瓶を叩くが、分厚いガラスはその程度で割れるほどやわではない。


――ブクブク、ブク、ブクブクブクブク、ブクー!!


 魔王は瓶の中でもがき苦しみ、やがて静かになった。

 魔王もちゃんと溺れ死ぬんだな。

 これで、魔王は復活してもその度にまた死ぬ!

 まあ、それでも殺し切れてはいないのだが、魔王が何か画策することを防ぐことくらいはできるだろう。

 上手くすれば、世界が滅びるのを遅らせることができるかもしれない。

 だいぶ強くなったはずの勇者が、相変わらず頼りないからなぁ。

 おっ、そろそろ復活するのか。瓶の中で微動だにしなかった魔王の死体が、ビクビクと痙攣を始めた。

 だが復活したところで……なんだ!?

 瓶の中の魔王の死体が一瞬光ったと思ったら、次の瞬間魔王の身体は瓶の外に出ていた。


「ぶはぁ、溺れ死ぬかと思ったのである。」

「いや、しっかり溺死したから。」


――斬!


 うーん、どういうことだ?

 燃えカスから復活した時は溺死したんだが、溺死状態から復活したら水の外に出やがった。

 もしかすると、そのまま復活すると同じ死に方をする場合は安全なところに移動してから復活するとかだろうか?

 そんな都合の良いことがあり得るのか?

 いや、まあ、死んでも復活するというだけで十分あり得ないことなんだが。

 しかし、これでは「火山まで連れて行って溶岩の中に突き落とす」作戦でも無理っぽいな。

 やはり勇者に殺させるしかないのか。


 最後に、魔王は切り刻んで、中の水を抜いたガラス瓶の中に突っ込んでおいた。

 復活後は死にはしないが出られなくなるだろう。

 魔王はこのまま放置して、勇者の様子を見に行くとするか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。