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1 また浮気されましたわ!

「イレタ様、大変ですわ! マリア・ジュリアンが『また』ロワイ様に色目を使っていましてよ!」


「なんですって!?」


 私、イレタ・ル・ブロシャールは当然のことながら、怒りで目の前が真っ白になりましたわ!

 でも仕方がないことですわ。

 なぜなら、私の最愛の婚約者、ロワイ・ド・ガグリアーノ様に、性懲りもなく、またもや、まぁたぁもぉやぁ、色目を使っているですって!?


 マァーリィーアアァー。

 この、平民風情(へいみんふぜい)がああ。


 は! 私としたことが、心の中とはいえ、言葉使いが乱れてしまいましたわ。


 私にいつも情報提供をしてくださる親切なご令嬢、ブリジット様も怯えてしまいました。


「情報提供、感謝いたしますわ。ブリジット様」

「い、いいいええ! では、失礼いたしますわ!」


 ブリジット様を安心させる為に『にこお』っと笑いかけると、なぜかより一層怯えてしまい、席を外されてしまいました。


 まあ、せんないことですわ。

 私、細かいことにはこだわらない性格ですの。

 私ってそういうレディですの。


 ほーほほほ!


 あら大変。あと20分ほどで、次の授業が始まってしまいますわ!

 とりあえず、マリアのところに行きましょう。



 気は急いているのですが、そのような時こそ、私は優雅にエレガントに美しく、所作の1つ1つに気をつけることにしておりますの。


 優雅な白鳥が足元ではバタバタしている、なんて、有名なお話でしょう?

 私、そのお話に、いたく感銘を受けましたのよ。

 幼い頃は、プールで立ち泳ぎの練習をしたくらいですの!


 そうしたら家庭教師が『あのお話は、苦しい時こそ優雅に振る舞うという意味なので、笑顔で立ち泳ぎをすることではないのですよ』とご教示くださったのです。なので、嫉妬にかられている今はまさに優雅さの見せ所ですわ!


 ですから、廊下を歩いている時に、見知らぬ平民科の男子生徒が私へと話しかけてきましたが、いつもよりことさら優雅に微笑んで、立ち止まってお話をしましたの。


 これが、私の運命を変える出逢いとは知らずに。



「イレタ・ル・ブロシャール様、少しお話しするお時間をいただいてもよろしいですか?」

「ええ、構いませんわ。ええと、ごめんなさい。あなたは……?」


「失礼しました。ジャン・ルヴォヴスキと申します」

「そう。ルヴォヴスキ様ですね。私にどのようなご用かしら?」


 すると、ルヴォヴスキ様は目を見開いて息を詰め、とても驚いているようでした。なぜかしら。礼節ある振る舞いをしたつもりだったのですけれど。


「私は見ての通り平民です。これほど気安く、話を聞く姿勢を見せていただいたことにも正直驚いていますが、『様』をつけられるなど恐れ多いです」


 確かに一目でこの方は平民とわかりますわ。

 なぜかというと、この学園では貴族と平民を明確に制服の色で切り分けているからですの。

 貴族は白、平民は黒。教室の設備も異なるそうですわ。私には平民の友人はいないので、詳しくは存じ上げませんが。


 それでいて、この学園では『平民も貴族も垣根なく平等に』という崇高な理念を掲げておりますの。


 これは私の想像ですが、見た目で明らかな違いをつけて、私達生徒を試しているのだと思いますの。

 見た目で判断できる情報によって、学園の理念と異なる振る舞いをしないかどうか。


 だから私は、見た目で態度を変えないようにしているのですわ。


「あら『貴族も平民も平等』がこの学園の理念ですわ。それに、平民がこの学園で過ごすには、全ての科目で好成績を修め続ける必要があります。

充分尊敬に値すると、私、思いましてよ」


 それに私、本当にそう思っておりますの。


 だって私は幼い頃から家庭教師をつけて勉強していますけれど、恥ずかしながら学園の授業が難しいのです。

 ですから私、毎日授業の始まりと終わりの部分を教科書にチェックして屋敷に持ち帰って、それから家庭教師とひーひー言いながら復習していますわ。


 でも平民は家庭教師をつけず、自分の力1つでこの学園の授業レベルについていっているのでしょう?

 信じられません。



 ただし、ちなみに……マァリィアアァ……。


 私、マリア・ジュリアンだけは許せませんわ!


 勉強については悔しながらその実力を認めざるを得ませんけれど……私の婚約者を奪おうとしているのですよ!?


 これは私、怒っていいと思いますの。



 というか平民とか貴族とか関係ないですわよね?

 略奪愛など言語道断ですわ!


 マァリィアアァ、いやしい泥棒猫があぁ。

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