6.いつなの?
「御主人様、力加減はいかがでございますかぁ?」
背中では柔らかい2つのスポンジが小さなポッチと共に蠢いている
・・・こいつ・・・動くぞ!
そうだ!偉い人が言っていた!こういうときは素数を数えるんだと!
・・・えええぃ素数なんて一般人はポンポン出てくるものじゃないんだよ!
背中に意識が行かない様、必死で、他の事を考える
もうやめて! とっくにTMPのライフはマックスよ!
「お背中、お流しいたします♪」
甲斐甲斐しくお世話してくれるので、やめて、とも言い出せず
上機嫌な鼻歌で、お湯を肩から流してくれている
俺は呼吸を整え、ツチノコを殴りつける、メメタァ
「御主人様ぁ、お背中終わりましたので、次は前面でございます♪」
波紋の呼吸で殴りつけたツチノコは何事もなくコチラを向いていた
慌ててツチノコを隠蔽しようと試みるが、時すでにお寿司
彼女は全身泡だらけで頬を膨らませ、ちょっと怒ったように
「御主人様ぁ、手を退けてくれないと洗えないんでございますが?」
シャボンランチャーだけは勘弁して・・・くれませんね・・・
時には諦めも肝心だ、ばっちゃが言ってた気がする
俺は観念して全てを委ねた・・・その後の修行は過酷だったと言う
その性分ゆえに もはやのがれられない運命に「今」踏み込んだことを告げておこう
ーーー
風呂から上がり、掃除を済ませたあと食事の用意をする!
彼女が料理をやってみたいと言うので、任せてみた
まず料理以外の音がする、何処からともなく取り出した、独眼で片手が義手の人が使ってるような大型の刃物で
食材を、まな板と調理台毎両断したり、汚物を消毒するような火炎放射器でお湯を沸かそうとしていた
とてもじゃないが料理が出来上がる気配は、びた一文無かった
用意すると言ったな、あれは嘘だ!
「申し訳ありません、私は戦術特化なので料理は苦手なのでございます・・・」
最初に言って欲しかったが、全ては後のカーニバルである
半壊した台所を見ながらため息をつく
火事にならなくて良かったと思うべきか・・・
しょうがないので
フードストッカーから魚肉ソーセージと野菜室に入っていたキャベツを取り出しマヨネーズをかけて食べる
これはこれで美味いから文句はないが、・・・温かい物が食べたい・・・
それなりに腹も膨れ、食後にM○Xコーヒーを飲んでいると、彼女が急にパンッと手を叩き
「御主人様!料理の得意なAIも製作されてはどうでございますか?」
と提言する
「最初に私を選んでいただいてとても嬉しゅうございますが、食事は大切でございますから」
私もがんばります!と言わんばかりの気合を入れてガッツポーズをする彼女
「え?」
彼女に目を向けると
どうかしましたか?と言う表情で小首を傾げていた
「八千代ェ・・・・」
「・・・」
「作れるAIが選べるのは初耳だぞ、それに選択項目なんてなかったはず?」
「えっと、選択肢が3つあったと思うのですが、上から
1. 汎用特化型
2. 戦術特化型
3. 家事特化型
なっているのでございます」
「2.が私でございますが、大体普通の方は1.を選ぶので・・・」
「Oh・・・」
つくづく不親切設計だ
そういえば、ウインドウを全くチェックしてなかった事に気が付いた
ウインドウを、呼び出すような感じで意識すると出てくる
どれどれSPは、っと9243ポイント・・・
「おふぅ・・・」
波紋の修行恐るべし!
気を取り直して※AI製作※を開いてみると
→1.ハイ 消費SP:18000ポイント
3.イエス 消費SP:9000ポイント
、になっていた
前と違うのは 2.イイエ が無くなり
代わりに消費SPが表示されていた
「ハイとイエスは変わってないのかよっ!」
まぁいい、で、だ、
問題は、現在のSPでのAIを製作する場合9000ポイントのAIが
製作可能である事、そして一番役に立ちそうなAIが
18000ポイントで今は製作出来ないという事・・・
・・・しかし・・・、どう考えても家建てるの安すぎじゃね?
まぁ家の事は置いといても、悩む、非常に悩む
俺は家電製品を買う時には、最高グレードの高性能多機能版を選ぶ派なのだ
その方が後で、後悔する事が少ないからである
ポリシーを優先すると、ポイントを貯めて一番役に立ちそうな汎用特化型を製作するべきなのだろうが
どうせ両方製作するなら、9000ポイントで先に家事特化型を製作してしまうのもありか・・・
そもそも18000ポイントって言ったら地球に来る前の野菜王と同じ数値だぞ!
取り敢えず確認しておきたい・・・
「ちょっと聞きたいんだが、最初に 1.の 汎用特化型 を選べば、製作SP消費は0だったのかな?」
「はい、最初にAIを製作していただかないと話になりませんので、そうでございます」
「ちなみに八千代は後で製作すると製作SP消費は何ポイントだったの?」
「3000ポイントでございます♪」
私ってとってもリーズナブルで高性能なのよ的なドヤ顔炸裂である
うーん、製作SPがが少ないほどポンコツ仕様という事は無いのかな?
「お作りにならないのでございますか?」
「とりあえず製作はする・・・!するが・・・今まだその時と場所の指定まではしていない
つまり・・・俺がその気になれば製作は10年20年後ということも可能だろう・・・
ということ・・・!つまり一旦保留で・・・」
その前にSPの検証をしたい
「八千代、SPの検証に付き合ってくれるか?」
1秒ほど溜めを作ったあと全力の笑顔で
「はい!よころんで!」
「どこの居酒屋だよっ」
と自然にツッコミを入れつつ胸部装甲を手の甲で螺旋波紋掌打
バインバインと揺れる装甲を眺めつつ
「すげーな!この装甲、弾性が複合装甲展性チタン合金並だぜ!」
その台詞には彼女も思わず苦笑い
ウインドウを確認すると螺旋波紋掌打で50ポイント
揺れる装甲を目で追うだけで1ポイント加算されている
これは思ったより早く18000ポイント貯まるのでは?と思案する
その顔を彼女が期待を込めた眼差しで下から見上げつつ抱擁してくる
俺は蜘蛛の巣に絡め取られる獲物の如く身動きが取れなくなっていた
彼女の視線に気が付き、視線と視線がぶつかる
なんかもう、検証は終わりましたとか言いづらいフインキ(なぜか変換できない
抱擁され逃げ場のない俺は、覚悟完了したのであった