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17 私は枯れかけたハーブ畑を見つけます

17 私は枯れかけたハーブ畑を見つけます


「渡し場ではお手柄だったね」

「そ、そんなことありません。皆さんが機転を利かせてくれたからです」


 主にプルちゃんが……ヴィーの埋める対応とかに似てきている気がします。やっぱり、周りの環境って大事ですよね。


 渡し守の手伝いの際に、樽の中に押し込められていた若い女性はメインツの偉い人の娘さんであったそうです。身代金目的の誘拐であったそうですが、幸い攫われてからはずっと樽の中で隠されていたので、不幸なことはそれ以外になかったのは幸いでした。


 ほら、私もヴィーに助けてもらえなかったら、今頃元婚約者のダメ男のせいで、不幸な人生を送っていたでしょうから、他人事ではありませんね。


 再会したご両親と娘さんは大変感謝して下さったようで、私とプルちゃんに何かお礼がしたいと言われましたので「仕事が欲しい」とお伝えしたところ、大司教様の『ハーブ散布官』を依頼していただけることになりました。


 ですが、初めて聞くお仕事なので、どんな内容なのかを詳しく伺う事にしたのです。


「大司教猊下のお住まいになる館には、そのお足もとを飾るハーブを敷き詰めているのだよ。その為に専門の花畑も用意されている。二人の仕事は、その花畑・ハーブ畑の管理と、敷き詰めるハーブの管理になると思うよ」


 なるほど。ゲイン修道会の薬草畑で培った園芸力が試されるということでしょうか。でも、今までの役職者のかたはどうされたのでしょうか。


「今までの散布官もいるんだ。ただ、高齢なので手助けしてくれる者が必要になっているのだそうだ。私の家に打診があったのだが、娘はその手の事はあまり得意ではなくてね。ブリジッタ嬢は修道会でも薬草畑の世話を熱心にしていると聞いているから、どうかと思ったのだよ」


 これ、もしかして良い仕事なのかもしれませんね。私が不在の時には、ゲイン修道会の薬草畑担当(仮)から人を派遣することも出来るかもしれません。ゲイン修道会は有志の在家修道者の集まりですが、大司教猊下の館でお手伝いできるというのは、ちょっとステイタスになるのではないでしょうか。


「その他に、式典の際には、猊下の前を先導する一員として、花を足元に

撒くお仕事もあるから、若い女性には向いていると思うよ」


 それはそれで、良い出会いに恵まれるかもしれませんね。婚活事情は解決されるかもしれません。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 自宅に戻ると、お父さまは既に話を伝え聞いているようで「名誉なことだな。頑張りなさい」と言ってくれました。お母さまは「大司教様の前でお花を撒く時の衣装がー」と、衣装の事で頭が一杯のようです。


 確かに、しっかりとお給金が支払われ、衣装も用意する必要があるかもしれません。どのような衣装が良いのか、お手伝いの際に聞かねばならなくなりそうですね。


 ですが、普通そうした侍女のような方のお仕事は、貴族の子女でないとつけないような気もしますが、ここは特権都市ですし、メイヤー商会は市の参事会にも参画したことのある家柄ではあるので、問題ないのかもしれません。


 つまり、私は臨時職の侍女に採用されたのではないでしょうか!!





――― そう思っている時代も私にはありました。




「あなたが臨時のお手伝いね。ふーん、じゃああとよろしくね」


 ボスハイトさんがそう言い残して去っていきます。この方はメインツ大司教座付の「侍女」でハーブの散布と管理を委ねられているのだそうです。なんでも、その昔司教座に大きく貢献した騎士の家柄だそうですが、今ではそれほど名のある家ではないようです。


「何か……気に障る事があったのかな?」

「……ハーブが……枯れている」

「え?……ああぁぁー!!」


 ぱさぱさに乾いた土、シオシオになったハーブたち。これでは数日後に行われる大司教様の視察に必要な「まきハーブ」を用意することはできないかも知れません!!


「つまらない嫌がらせ」


 プルちゃんはそう言ってのけます。えーと、私とプルちゃん大ピンチ。というよりも、プルちゃんは幼児なので問題ありませんが、大人扱の私の責任になるんじゃないでしょうか。せっかく紹介してくれた方や、実家にも迷惑が掛かります。


 多分、私が新人で失敗してハーブを枯らせたという事にしたいのでしょう。そうすれば、私はめでたくクビになり、ボスハイトさんの職が護られることになると彼女は考えたのかもしれません。自分の仕事に対する責任を度外視した、実に無責任な対応です。


 特権をカサに利益をむさぼる無法者紛いの人間も許せませんが、自分の利益の為に人を陥れ、そのタネを自分が責任を持つべき場所に仕掛けるという考え方があり得ません。宿や食堂で食中毒を出すようなものではありませんか。


「畑の事は任せて」

「うん、ゲイン修道会の薬草畑と……調香師さんにも聞いてみる」


 私は、自分の持てる伝手の中で、ハーブと関わりのある皆さんに声を掛けるようにしました。




∬∬∬∬∬∬∬∬




「ほお、これは見事ですね。今までより一段と手入れが行き届いています」

「……お褒めに預かり光栄ですわ司祭様」

「……」


 明日の大司教様の視察に使用する「まきハーブ」を担当の司祭様がハーブ畑に見に来られました。


「貴方は参事様にご紹介いただいた……」

「はい! ブリジッタ=メイヤーですわ司祭様。それと、供のプルパァです」

「おお、メイヤー商会のお嬢様ですね。あなたの真摯な活動は、ゲイン会の御婦人方からも伺っております。薬草畑を非常によく手入れされているとか」

「……」


 そうです。ヴィーに教わった薬草の栽培のお陰で、私のゲイン修道会での立場は「薬草の淑女」と呼ばれるほどになっています。あまりうれしくない綽名ですが、家名が高まると思えば我慢できます。


「それで、このように素晴らしい事になっているわけですね」

「いいえ、私の力だけ……ではございません。ボスハイト様の日々の世話が会っての事ですわ。私は、少しお力添えしただけですの」

「……なんと謙虚な……」

「……」


 プルちゃんにお願いして、ポーションを薄めて散布してもらい、プルちゃんの「魔力」も水にこめて撒いて貰いました。


 不足しそうなハーブは幸いゲイン修道会の薬草畑から調達できそうで、みなさんも「大司教様にお使いいただけるのであれば是非」とおっしゃって頂けています。


 調香師のヘルタさんに伺ったところ「養蜂家に花畑のある場所を聞きな」

とアドバイスを貰い、ミエールさんがハーブの花畑を教えてくださったのでなんとか用意することが出来ました。


 なんとなく、今までの人間関係がここに来て役立っていますね。ほら、なんか冒険者らしくなってきたと思いません?






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本作のスピンオフ元
『灰色乙女の流離譚』 私は自分探しの旅に出る
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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

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