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14 私は野鳥を捕まえます

14 私は野鳥を捕まえます


「今日は、森番さんの手伝いに行くのよ」

「……分かった……」


 森番さんがあの狼狩り隊にチョメチョメされてしまったお陰で、森が荒れているのだそうです。番人がいないという事で、勝手に狩りをしたり木を伐採する人もいるので、森の中を巡回する仕事を冒険者ギルドで募集していました。





 内容としては難しくありません。森の中の定められたコースを巡回して、森の奥にある森番小屋にある日誌に記入して、同じ内容を書き写してギルドに戻り提出することで、その日に私が森を巡回したという証明をすることになります。


「プルちゃんはまだ手が小さいから、字は読めてもペンが握れないから報告書はかけないもんね」

「……」


 久しぶりに、プルちゃんに勝つことが出来ました。でも、よく考えたら、五歳児にいつも負けている私って……相当情けないですよね。でも、諦めたらそこで試合終了ですから!! 私は前向きに善処します。





 森に入ると、鳥の鳴き声は聞こえますが、その姿を見る事は出来ません。街の中の方が、ハッキリ見えるのは家の屋根や窓などに止まっているからでしょうね。


「はい」

「……え……」

「練習」


 はい、先日ヴィーから譲り受けた弓銃を渡されました。これで、動物を狙うということでしょうか? 命中するかどうかも分かりませんし、そもそも、森の動物を勝手狩猟するのは森番代理としていけない事だと思います。


「鳥を狙う」

「……はい……」


 どうやら、鳥を狙えというのは、木に止まっている鳥を狙えばいいのでしょうか。恐らく、頭上から聞こえる鳥の鳴き声からするに、下からは枝で見えない気がします。


 まだ、畑の周りでウサギを狙う方が良い気がしますね。ウズラやキジも直ぐに下草に隠れてしまうので、狙うのは難しいと聞いています。え、それは、お仕事でお父さまが交流のある貴族の方達が鳥撃ちもするからですね。


 最近、普及し始めたマスケット銃は弓よりも腕の差が出にくいそうです。そういう意味では、弓銃も同じかもしれません。私の場合、弦を引き絞る為の『クレインクライン』というハンドルを回す道具だって滑らかに回すのに練習がいりました。筋肉痛ですぅ……




 そんな私に、プルちゃんが喝を入れます。五歳児に喝を入れられる私……かなりカッコ悪いです。


「あの……林檎の木で練習する」

「えー 矢が飛んで行ったら探すの大変だよぉ」

「大丈夫、拾える」


 プルちゃんが拾ってくれるのでしょうか……自分で探せる自信がありません。この林檎の木は、森番さんが植えたのかもしれませんね。自然に生える種類の物ではありません。


 若しくは、鳥が食べたリンゴの種が糞に混ざって落ちたものかもしれません。街の中には林檎を植えている場所がありますし、ゲイン修道会の庭にも何本か林檎の木があります。あまり高いところの実は取らずに、鳥の餌になっているので、その種かも知れませんね。


「この木なら鳥も集まる。狙えるなら狙うべき」

「なるほど。林檎で練習して、鳥が近寄れば鳥を狙うわけね」


 自称十歳児は冒険者としての資質が私よりかなり上ですね。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 距離は30mくらいでしょうか、上に向けて射つので真直ぐ狙いをつけても

少し逸れる感じです。ですが、二度三度と同じ実を狙うと、命中するように

なります。


「初弾で当てないと鳥は逃げる」

「もう少し慣れれば……最初から当てられるかもね」


 幸い、プルちゃんの目は矢の行き先を捉えているようで、私の代わりに矢を拾ってきてくれます。よかった……


 そして……森番の仕事の合間に、私は何日も何日も弓銃の練習をし続けました。矢は何本も駄目になるし、服もドロドロになりましたが、伏せ射ちや膝立射ちなら、何とか最初から30mくらいの距離の林檎を撃ち抜くことが出来るようになったのです。大進歩☆


 これなら、行商に出ても自衛くらいはできるかもしれません。


「まだまだ」

「えー 凄い進歩したと思うけど」

「目の前に狼が襲い掛かってくる状態で命中させるくらいにならないと」

「……それは無理っぽいね私」

「だから、次の練習」


 それは、待伏せです。落ちたリンゴを拾い、林檎の木から離れた森番小屋の周りの木に紐でぶら下げます。そこに食べに来る鳥を狙うのです。もし、調子が良ければ、餌台を置こうかと思うくらいです。


 私が弓銃を向ける気配で、集まってきた鳥が……逃げ去ります。うう、何故でしょう。


 気配を消し、周りの空気と一体になる世に心がけます。すると……だんだん眠くなります。くうっ、これは思いもよらない事です。


 呼吸を整え、薄くゆっくりとするように心がけます。そして……掛け金に指を添え、その引き金を引きます。


 パシュッ


 一瞬で矢は放たれ、林檎をついばむ鳥に吸い込まれるように命中します。ああ、ごめんね、痛そうだけれど……あとで美味しくいただくから許してねと私は心の中で呟きます。


「今日はここまで。また、明日から続ける」

「明日は、餌台を用意しましょう。その方が、狙いやすい高さに鳥を誘き出せます」

「隠れる為の毛布も必要。鳥はビータの事見えている」


 なるほど、空から近づく鳥の目には上から私の姿が目に入っているという事ですね。なら、上から草に見えるような織物を被って待ち構えるのも必要かもしれません。


 いつか、野営することになった時にも、それは使えるでしょうし、悪いことでは無い気もします。





 結局、次の日は餌台作りと隠れる為の毛布を用意するので森番代行の仕事がお休みしました。でも、これがある事で、森番が森に入っていることや、待伏せしているという事もアピールできる気もしますね。


 プルちゃんの分も毛布を用意し、二人で森の中でかくれんぼに専念することに暫くなりそうです。




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本作のスピンオフ元
『灰色乙女の流離譚』 私は自分探しの旅に出る
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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

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