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13 私は森番の失踪事件を知り決意します

13 私は森番の失踪事件を知り決意します


「何してくれるんですか……あなた」

「それはこっちのセリフ。まあいいか……」


(terra)(carcer)


 馬ごと地面に閉じ込められる狩狼官に、周りのお供の人と犬も地面に落されます……久しぶりに見るけど、怖いよねこれ。


 次々に地面に飲み込まれ、大騒ぎする狩人たちと犬。ヴィーは身動きがとれず、周りが全て土の壁になった狩狼官に向かう。


「お、お前!! 私が、正式な『狩狼官』と知っての狼藉か!!」


 ヴィーは鼻で笑う。


「そうね、だから問題になってるんじゃない。あんたの仕事が」


 ヴィーは胸から一枚のメダルを取り出す。なにそれ、かっこいいじゃない。


「……その紋章は……」

「一応本物だから知ってるんだね。そう、選帝侯家のメダル。もう一つ……持ってるけどね。これはどことどこか解る?」


 狩狼官はさっきまでの居丈高な物言いから一転、プルプルと震えだす。


「ベルテンベルグ公とブレンダン公爵閣下のものだ……ですね」

「そう。私の名前はオリヴィ=ラウス。公爵家の依頼で動いている冒険者。そして、あんたが攫おうとしているプルプァの保護者だよ」


 ヴィーは魔術を発動させ、プルちゃんを宙に浮かせると、彼女の所まで移動させる。小さいから? それとも空飛ぶ魔術も覚えたのかな?


「元気にしてたプル?」

「元気。でも、ビータの面倒を見るのは大変」


 あれ、なんか余計なこと言われてない私? 


「それで、両公爵の依頼もあって、森荒らしを討伐している最中なの」

「森荒らし?」


 話によると、それぞれの領地で『森番』と呼ばれる役人が失踪したり、殺害される事件が帝国内のあちこちで発生しているのだそうです。『森番』というのは、名前の通りの森の番人の仕事なのですが、それぞれの領内の木々やそこに住む禽獣を密猟する者から守る事がお仕事です。


 メインツにも街から離れたメインツ大司教領の森を監視する方達がいる事は知っています。樵の方や炭焼き職人さんが兼務していることもあります。


「発生している時期、場所とあんたたちが狼狩りで移動している経路が一致するって事で、ずっと追いかけていたのよ。で、いま、ここで『人攫い』の現場を押さえたわけ」

「……ご、誤解だ」


 狩狼官さんは、色々言い訳を並べています。曰く、プルちゃんには魔術の才能があって自分たちと行動を共にした方が将来有益だと考え、同行を頼んだけだと。


「はっ、それでビータを手下に押さえつけさせて、馬の前鞍に無理やりのせて連れ去ろうとしていたわけね。ねぇ、ビータ」


 私はブンブンと縦に首を振ります。魔術なら、ヴィーかヴィーの先生に教わる方がずっといいです。何より、幼児を森の中へ連れあるくなんて明らかにおかしいでしょう。


「い、いや、だから……」

「黙れ!!」


 無詠唱の魔術が発動したようで、いきなり声が聞こえなくなりました。プルちゃんがさりげなく……


雷電(tonitrus)

「!!!!!!」

雷電(tonitrus)

「!!!!!!」

雷電(tonitrus)

「!!!!!!」


 仕返ししています。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 さて、今回の話も、『山師』と同じ特権を持つ世襲の専門職の人間が、その特権を悪用して悪さをしていたことを突き止め、断罪し、資格を持つ人間を減らす事が目的だったようです。少なくとも、数人いるうちの一人の『狩狼官』は処分され、資格は剥奪されることになりますし、他の資格者もその行いを改める事を暗に要求されることになります。


「狼狩りは確かに、専門の狩人を率いて行う方が効率はいいのよね」

「冒険者としては……腕のある人は受けないし、余程の事がない限り、依頼は受けないもんね」


 狼討伐ができるくらいなら、他の依頼を受けることになるので、依頼が出ても積極的に受ける人はいません。手間暇の割に依頼料が安いですから。それでも、森番さんや森の傍の村や家畜を飼っている人からすれば、狼を狩って欲しいという気持ちは分かります。


「腕を磨いてビータと狼狩りする」

「そうだねー プルちゃんと二人でそういうのもいい経験になるかもね」

「狼は犬よりかなり力が強いですが、ブリジッタ嬢は剣で倒せそうですか?」

「……無理かもしれません……」


 ほら、罠とかあるじゃないですか!! 本来、狩狼官は虎ばさみや落し穴持つかって狼を捕まえるみたいですし……


「虎ばさみかなり重たいと思うけど、ビータそれを持って、狼の縄張りに入って設置するの……無理じゃない?」

「うう、だって、狼狩りって誰かがしなきゃじゃない。プルちゃんと一緒になんとかできないか考えるんだよ……」


 いきなり、狼狩りの使命感に燃えてしまった私にヴィーは「それは専門の人に任せるか、領主の心配する仕事」とやんわり否定してくれた。自分の能力を超えている気はしたんだけどね。実際、今日だって狼一匹討伐出来なかったわけだからさ。


「重たいですけれど、弓銃を使うなど考える事も必要でしょうね」

「でも、あれかなり高価だよね」

「……鹵獲品があるではありませんか」

「あー でもメンテナンスとかできる工房、この街にあるのかな」


 今日もいつもの『黄金の蛙亭』に宿泊するヴィーとビルさんに招待して頂き、私とプルちゃんは食事を供にしています。プルちゃんは今日はこちらにお泊りする予定です。


「武具屋さんに紹介してもらえばあると思うよ。街の守備隊でも装備があるから、職人がいないって事はないから」

「なら、後で持っていくよ。ここで出すわけには行かないから」





 という事で、一応、ヴィーから弓銃を譲り受ける事になりました。とは言え、とっても重たいんです!! 6㎏もあるし、弓を引くための金具もとっても重たいんです。確かに、これは持ち歩くより、城壁などに隠れて近寄る兵士を狙い撃ちする方が合理的です。


「……持ってあげる」

「……ありがとう……プルちゃん……」


 どうやら弓銃を私が貰ったときに、プルちゃんは小さな魔法の袋をヴィーから譲られたそうです。それでも小部屋ほどの収納能力があるというので、私の弓銃はいざという時までプルちゃん預かりとなりました。


 でも、練習するように言われているので、これからは郊外の依頼の時に時間を見つけて練習しようと思います。




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本作のスピンオフ元
『灰色乙女の流離譚』 私は自分探しの旅に出る
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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

― 新着の感想 ―
[良い点] ヴィーさんはそれぞれの後ろ盾さんちに旅立ちのご挨拶に行ったら、その前に片づけて欲しい依頼を色々仰せつかってしまった状態なのかなw
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