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水族館
水を貯めた槽から
水しぶきのないところへと上り切ったその海獣
毛繕いでもしているのだろうか。
四肢のうち、歩行のために動かすのは、二本のみ。
残りの二本は何の役に立っているのか?。
上陸したところから、
濡れた足跡が続いている。
おそらくペタペタと歩いたのだろう。
施設は一応湿気に強くしてあるが、
こう何度もされては、床がもたない。
とは言っても、彼女が施設維持管理の苦労を知るわけもないよな。
足跡を辿っていく。
中央の生活空間にまで続いている。
恐る恐る中を覗くと、長椅子から四肢を投げ出して寝入っている。
その裏の水分をチョコチョコと拭き上げたら急に暴れ出し、
その二本の脚で蹴飛ばされた。
こっちを見て睨んでいるよ。
巫女装束から見える海獣のような体の孫娘。
とりあえず朝食の準備をして差し上げなければいけない。