3 命短し恋せよメイデンドール〜♪
その後、やはり公園で遊んだのだった。
ところで、その公園というのは、黒澤明の傑作『生きる』を見た人が感化されて作ったのではないかと、ぼくは今でも睨んでいる……。
『生きる』を見たことがない人のために、あらすじをざっと説明をしておくと(そりゃあ、実際に見た方がいいが)……冴えない公務員のじいさんがいた。退職することになって、
「自分の人生って、なんだったんだろう?」
と思って、夜の街でお酒を飲んでいる。
それで、どうなったんだっけ?
これを書いているぼく自身、すでに『生きる』を見たのが結構前なので、あまりよく思い出せない。
実際に見た方がいいのは、ほかでもない、ぼく自身だったのかもしれない。
ごめんなさい。
だから、もう、『生きる』のあらすじを説明をするのは、やめた方が良さそうだ。
ごめんなさい。
開き直るのではないが、だからこそ、あらすじとは無関係に、それでもとにかく覚えているシーンは、すごいシーンだ、と言うこともできるのではないか、と思う。
それは、『生きる』の主人公が、子供達のために作った公園のブランコに揺られながら、次のように歌うシーンだ。
いのちみじかし〜♪
恋せよおとめ〜♪
まさにその公園こそ、主人公が人生の最後に「生きた」のだという、その証だった……。
アニメ『星のカービィ』でも、デデデ大王が、謎の公園で揺られながら、
いのちみじかし〜♪
恋せよデデデ〜♪
と歌うという、パロディ・シーンがあった。
このように、真似されるということは、やはり、それだけ名シーンだ、ということになるのだろう。
そして、メイデンドールもまた、あの日あの時、ブランコで、
いのちみじかし〜♪
恋せよメイデンドール〜♪
と歌ったのだった(語呂が悪い!)。
ところがぼくはその当時はまだ、『生きる』を見ていなかったので、いったいメイデンドールがどういうつもりだったのか、理解できなかった。
ただポカンとしながら、ぼくは揺れているメイデンドールを見ていた。




