新型コロナの影響で、明日からの仕事が無くなりました
実話エッセイ。改稿版です。
いつもの朝いつもの時間に目が覚めて、いつものように職場へと向かう。行き先は九州の片田舎にある中堅のデザイン事務所。そこで派遣社員として勤めているワタシは、その日もいつもと同じ時間が過ぎると思っていた。
世間では新型コロナウイルスの話題で持ちきりで、テレビやインターネットでは感染者の情報や予防と対策についての話で溢れ返っている。ワタシもマスクや手洗いなどで予防しているものの、あまり関心を寄せているとは言えなかった。
出社した職場の上司がこんなことを言うまでは…
「突然ですが、この事務所は明日から臨時休業することになりました」
ワタシが勤めるこの事務所は、Web上の広告や地元企業の配分紙、それに地方新聞のチラシや商業施設のパンフレットなどのデザインとレイアウト設計で収入を得ている。
しかしその収入だけで経営は立ち行かない。足りない分の資金は地元企業の出資金で賄われている。
今回の唐突な臨時休業の話は、その出資している企業が関係しているというのだ。
事務所では毎年年度末の三月になると、出資企業のお偉いさんが視察に訪れる。この視察の後に行われる会談でそのお偉いさんから実に有り難くもない、次のような御言葉を頂戴したそうだ。
『最近新型コロナが流行しているので、うちも大事をとって臨時休業することになりました。ついては、この事務所もそれに倣う方向で考えてくれ』
新型コロナウイルス感染症は2019年12月に中国の湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として最初の症例が確認された。
中国全土から世界中に感染拡大したウイルスは、ワタシ達の住むこの日本でも蔓延し未だ収束する気配をみせない。
政府は対策の1つとして不用不急の外出を控えるよう国民に訴え、各企業もウイルス拡大の対策として自主的な臨時休業を行い始めた。
最初は飲食店やサービス業の店舗から自主的に始め出したこの流れは、徐々に業種を問わず拡大して行き、ついには生産業やワタシが勤めるデザイン事務所のような業界にまで広まっていったのである。
そして年度末最後の日である3月31日、この事務所も臨時休業することが決定された。
休業期間は4月1日から14日までの約二週間で、情勢によっては期間の延長も有り得るという。
事務所の人事・経営部は、政府の対策の1つである「雇用調整助成金の特例」を利用することを視野に入れ、その申請が通るまで正社員達には有給休暇の申請を受け付ける方針となった。
これにより正規社員の生活は安泰となったのだが、それではワタシのような派遣社員はどうなるのだろう?
それを上司に訊ねたところ、こう返されたのである。
「派遣社員については、契約している派遣会社の方で対応するそうです。詳しい内容はそちらで聞いて下さい」
不安で胃に穴が空きそうになりながら、休憩時間に慌てて派遣会社に連絡することに。そしてワタシは更に追い討ちを駆けられるのである。
「若白髪さん(ワタシのこと)はフリーランス契約で派遣されているので、いわゆる休業助成金の対称になるかは微妙なところです。一応こちらの派遣社員として、年間10日ほどの有給保証が有りますが・・・どうされます?有給休暇の申請しますか?」
勿論ワタシは即答した。
「・・・はい、お願いします」
休業期間は約二週間。10日間の有給休暇は有るが、それが無くなると収入も無くなる。もし休業期間が延長されればマイナスである。
財布を開けると手持ちの現金は約5万円。口座に僅かな貯えは有るものの、家には介護が必要な父と引き籠りの兄がいる。
もしも休業期間が延長されてしまったら、10日ぽっちの有給休暇と預貯金だけで生活していくのは難しい。一応、父の障害手当てもあるがその殆どは医療費で消える。このままでは家族3人、無事に過ごせるとは思えないのである。
明日からは仕事が無い・・・
取り合えず今日のところはエッセイでも書いて、明日は朝から役所に相談しに行くことにしよう・・・。
※感想欄にて近況報告あります。
翌日、朝から役所に相談しに行きました。
新型コロナ対策相談室から、色んな部所をタライ回しにされた結果「また明日来て下さい」とのこと。
助成金の申請が出来るのかも分からないまま、明日からの生活に不安を抱えつつこのエッセイを書いています。
派遣会社では短期アルバイトの話も頂きましたが、その場合は有給休暇の申請は通らず。役所からもアルバイト中は休業助成金の申請は出来ないとのこと。
どうなることやら不安で仕方有りません……
※4/4(土)23時~新作エッセイ投稿
【幼馴染み】という存在 ~僕のリアル幼馴染みとの思い出~
…新型コロナは一旦忘れて、面白楽しい作品を書きました。