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23話 アオイの弱点

私は聖剣勇者。今はミレイに仕事をある程度任せたものの、勇者選考会の準備で忙しい身だ。


「はぁ…このような状況でアオイの攻略法を探るなんて出来るわけないな…」


「あっ、シオンちゃん!どうしたの?」



「…あぁ、ミサキか。なぁ、一ついいか?」



「何?」



「アオイの弱点を何か知らないか?」



「…弱点?どうして気になるの?」



「青井龍一。奴だけは個別に対策しなければ勝てない」



他の勇者相手であれば自己研鑽を重ね、鍛え上げれば勝てると確信している。単純にレベルを上げればいい話だ。



だが、あいつは人の行動を逆手に取るのが上手い。というより基本搦手しか使ってこない。こちらの戦闘スタイルを利用して潰しに来るに違いない。



それを事前に対策するか適切に対処する事が出来なければ敗北あるのみ。



「ミサキはアオイに特訓してもらっただろう?」



「うん。そうだね。お陰で他の精霊達が力を貸してくれるようになったんだ〜」



ミサキをずっと見てきた私から言わせてもらえば『凄い』の一言に尽きる。私ではどうにもならなかった問題をやり方はどうであれあいつはあの精霊達を従わせるようにさせた。それも意図も容易く。それにより、ミサキは複数の精霊を巧みに操るこど上位勇者にも引けを取らないレベルにまで達した。



「その時、お前から見て何か分かった弱点…無いか?クセとか…」



「…あの人の弱点かぁ。私達みんなが持っている決定打が無いってところかな」



「決定打…?」



「私だったら複数の精霊を使った合わせ技とかドラゴン勇者なら竜化みたいにその勇者が勇者たらしめる一撃必殺の技…みたいな技ってあるじゃない?」



「あ、あぁ…そういうことか」



「それが無い。どうしても後手から逆転することでしか戦えない。これこそが弱点かな」



「むっ…もう少しないか?もっと明確な…」



「ふーん…あっ!」



「何か思い出したのか!?」



「FPS!FPSが弱点!」



「えふぴーえす?」



「あっ、ごめんね。人を銃で撃つゲームのこと…って言えば分かるかな?」



「ゲームが弱点?」



「配信でも言ってたんだけどエイム力が無さすぎてダメだ。俺にはあんな野蛮なゲーム出来ない…って言ってた。ずっとナイフ握るほどだったし」



ゲームに関してはよく分からないが、銃を使うゲームで素直に銃を使わない辺り奴の捻くれ具合だけはよく分かる。


「だが、これはあまり関係なさそうだな」



「あはは…とりあえずは攻撃をする事があまり得意じゃないっていうのは事実だと思うよ?」



「…そうか。では、アオイを倒すにはカウンターが良いのか?」



「うん。攻撃してくるタイミングが一番隙が生まれるタイミングと言っても過言じゃ無いと思う。あとは瞬間移動をした後。瞬間移動は使ってからすぐにはまた使えない。隙を狙うならそこじゃないかな」



それにアオイ自体の攻撃力の話をするのであれば実はそんなに高くはないことは事前にリサーチ済みだ。故にアオイはスクロールなんていう非効率的な消耗品に頼らざるを得ない。



「おまけに並の魔法使いのスクロールじゃ私には勝てない。だが…」



いくら弱点とはいえ、魔王軍幹部にもかなりの大ダメージを与えられる光魔法のスクロールをいくつか持っていることが分かる。けど光属性は私にはほとんど効かないから無意味。他はそこまで強力なスクロールは無いはずだ。



それでも勝てるビジョンが見えない。それだけトリッキーを極めている奴を相手取るんだ。何か確実な必勝法が欲しいくらいだ。



「他には何かないか。探しに行くか」





この後私はアオイがよく行っていた道具屋の事を思い出し、店主を尋ねたが、どうやら事前に手を打っていたらしい。核心を突くようなことは何も喋ってはくれなかった。おまけに一部ズレたような回答があったので口止めを行なってたと考えるのが自然だった。



「はぁ、ここまで来て収穫無しか。全く、考えれば考える程堂々巡りになるな…」



「あ、あの…聖剣勇者さん?どうしましたか?」



「うぁっ!?びっくりした…何だ、シオリか」



シオリ。別名ボールペン習字勇者。ギフトのペンで文字を書き、書いた文字の魔法を実体化させるという一見すると強いスキルのように見えるのだが…



多い制約と本人の身体能力が貧弱で身体が弱いということであまり前線には出られない勇者だ。基本図書館に引きこもり中。それ故に正直に言うならば現在王都にいる勇者の中では最弱。下手すれば勇者の側近より弱い。お世辞にも強いとは言いがたい。



「考え事でしたか?」



「ん?あ、あぁ。あのアオイを倒すための方法を考えていてだな…」



「アオイさんを倒す…ですか?」



「はは、こんなこと急に言われても困るんだろう。すまないな」



「…あの人は図書館で見たことありますよ。色々お話しましたし」



「そ、そうなのか!?…あいつといると苦労しないか?」



「苦労?いえ、全然。あの人は学びに対してとても意欲的な良い人ですよ」



「良い人…?お前別人と勘違いしてないか?」



「アオイさんは悪い人じゃないですよ。優しくて、誠実な人なんです」



?????…なんだ、あいつ遂に洗脳魔法にまで手を出したのか?認識を捻じ曲げるとは下衆な真似を…いや、きっとアレは別人の話をしているんだな。お笑いには認識がすれ違う漫才があると聞く。きっとそういう別の何かに違いない。



「なぁ、青井龍一で間違い無いよなぁ?」



「…!?…はい、間違いありません」



「…ん?どうしたんだ?そんなに驚いて…本、落としたぞ」



「あ、いえ…何でもないですよ」



まさか転生者だと知らなかったのか?…まぁ、それもそうか。そもそもあいつは上手くこの世界に溶け込んだり、口手八丁で誤魔化している。おまけにサキュバス討伐会議やその後の話し合いにシオリは参加していない。今初めて知ったとしてもおかしくはないだろう。



「あの人は味方だと思う人に本当に非情な選択を取ることが出来ないはずです」



「あ、いや…そういうのではなく…」



「これは私が言えた話ではないのですが…単純にシオンさんはスペック不足だと思うのです」



「…スペック不足?」



「何故貴方が恋愛勇者より順位が劣るか分かりますか?」



「…限界突破と瞳の話か」



限界突破。ムスビメは前にそう呼んだが、所謂上限の解放のようなものがある。本来技の練度は99が上限となっており、この限界を越えられる者は勇者の中でもほとんどいない。今王都にいる勇者の中では私以外の上位勇者は皆限界突破している。恋愛勇者は局所的な能力故に私の方が優れている点もない事はないが、基本的な能力は悔しいが奴の方が上だ。



そして瞳の力。これも僅かな勇者だけが使える更に上の能力。力を使うと瞳の色が変わり、あらゆる能力の向上だけではなく、瞳の力が無ければ使えない特殊な力もあるらしい。私が見た限り封印勇者が金色の瞳になったのを見たくらいだ。サキュバス戦でもその凄まじい力を遺憾無く力を発揮していた。



「はい。上位と呼ばれる勇者は皆、自身の強みを理解してその力を飛躍的に伸ばしております。どちらも目覚めた勇者は一歩先の戦闘スタイルを獲得しました。まずはそれが出来てから対策を考えるのはどうでしょうか」



私は失念していた。自己研鑽を怠り、楽な道を選ぼうとするなど言語道断だった。



「…それもそうだな。ありがとう、シオリ。一緒に選定戦頑張ろうな」



「えぇ、頑張りましょう。…では、また。準決勝辺りでお会い出来ればと」



「ん?何か言ったか?」



「あっ、いえ。何でもないですよ」





最早なりふり構っている場合では無い。このままではこの王都がアオイと封印勇者やドラゴン勇者、恋愛勇者の手に落ちる可能性がある。あいつらは何をするか分かったものでは無い。私も出来ることを全てやるしかない。



『アテナ様、おりますか?』



『…すみません、少し席を外しておりました。いかがなさいましたか?』



『…私は瞳の力に目覚めることは出来ますか?』



『そうですね…瞳の力は勇者であればその才能は確実にあります。…ですが、目覚めるキッカケにはとても強い感情が必要です。かつて才能だけで全ての力を引き摺り出した全能勇者などが例外中の例外であるだけで努力だけでは身につかない可能性もあります』



『ですが…限界を超えるのは話が別です。弛まぬ努力を続けることで確実に道は開けます』



『…!?』



『決して楽な道ではありません。それでも覚悟は出来ておりますか?』



迷いは無い。私の成すべきことは選定戦で優勝すること。王都の実権をあいつらに握らせないこと。そして世界を救うため、皆を導く。これらに尽きる。そのためなら私も全身全霊を尽くそう。



『はい、お願いします。アテナ様』

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