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21話 振り回された女

「あいつ…お前を振り回すだけ振り回して何処かへ行っただと!?」



『えぇ、勝手にどっか行ったわ。準備があるって…そりゃあね?アオイの実力でムスビメに勝つのは不可能だけど!!でもこれから来るギフトがあれば!それでどうにかなるはずなのに!』



シルフィ、そうとう疲れているんだな。あんな頭のおかしい男と組んでしまったばかりに。だが…問題はそこではない。



「準備があるだと…?私に大会の準備を全てぶん投げておいてか!?」



『そうね、全部ぶん投げたわ。ムスビメを倒す修業をしてくるって言ってたわ』



その情報は私に教えても問題無いのだろうか。そういったところがあるからアオイはシルフィを置いていったのではないか…?



「あら?何かお困り事?」



そいつはあいも変わらずマフラーやサングラスで全身を覆っている不審者みたいな格好でやってきた。



「貴様…恋愛優者!いつの間に!」



「どうやらあの男に逃げられたみたいね」



アオイが敵に向けているようなその不快な薄ら笑いを今すぐやめろ!全く、こいつもこいつで勇者の中でも問題児なんだよな…少しは封印勇者やかつての全能勇者を見習ってくれよ。頼むから。



「逃げられたって…別にあいつと私は村に来た四天王を一緒に倒しただけだ!」



邪推するな、いくら私でも許さないぞ。と、私が声を荒げて反論すると、ミレイはため息をつきながら提案する。



「別に変な意味で言ったわけじゃないんだけど…仕方がないから運営は私が手伝ってあげようか?予選選考も私がやる」



「いいのか?…これ大量にあるぞ。どうにも勇者になりたい者は多いらしい」



勇者はその実力故に自らの気に食わない者をつまみ出したり、散々圧政を敷いたりと今までかなり幅を利かせていた。それに対して苦汁を飲まされた者も多くいたはず。故に同じような仕打ちをしようとする者。単に甘い汁を啜りたいだけの者も多くいるのだろう。



「もちろん。同じ勇者…だからね。…あら、アオイも一般人枠?」



「ん?あぁ、あいつは厳密には勇者ではないからな。奴はそれで承諾した」



「ふーん…そうなんだ…全く、他はどいつもこいつも格下の雑魚どもばっかり。ウチの部下とアオイ以外はつまらない戦いになりそうね…まぁ、アオイの目的もどうせ天と地程の実力差があることを格下共分からせるためだけでしょ」



「何か言ったか?」



「何でもない。あとは運営に協力してくれる人が必要ね。私の方で探しておく。楽して良いわよ」



「…すまない、助か—待て。妙な事を考えてないか?あとで高額請求をするとか…」



恋愛勇者はどちらかと言えば損得勘定で動くタイプであるはず。特に自分にとって好きなことでなければなおさら。何故彼女は自発的に動いたんだ?



「ないから安心しなさい。…というより貴方がそんな風に人を疑うなんて…誰かに影響された?」



「影響…?そ、そんなわけないだろうが!!」



私はそんな認めたくない事実を振り払うため、剣の素振りに出かけた。





紆余曲折あったが、勇者選考会のルールはプロットを置いていったアオイルールと併せて恋愛勇者を始めとした他勇者達と一部調整して最終的な物が決まった。



・予選会では4つのブロックに分けられ、各ブロックから1人が本戦に出場可能。



・予選会ではフィールドから出ると失格と見做される。



・本戦においては場外。ダウン後10カウント以内に立ち上がれなかった場合。あるいは降参した場合に敗北と見做す。



・武器や魔法、道具は何を使っても構わないが、相手を殺す。あるいは再起不能レベルに追い込んだ場合は失格と見做す。





「ふむ、まず大元としてはこんなものか」



しかし、頭の中から離れない…アオイが来てから四天王はもう二人も倒された。それは全能勇者が敗北して以来、初の快挙だ。喜ばしいことなのだが…



一体私には何が出来たのだろうか。最初のレオンハルト戦。アオイが求めていたパワーさえあればあそこにいるのは誰でも良かったのではないか?



「…今日は少し勇者の情報を整理してみるか」



今回転生した勇者達はアオイを除けば12人。この世界に降り立って1週間足らずで四天王を全滅させ、魔王を倒す一歩手前まで追い詰めた…はずだった。


魔王の凄まじい魔法によって全能勇者とミユキがやられてから状況は一気に劣勢となり、撤退を余儀なくされた。


魔王軍は魔王の手によって瞬く間に復活を遂げ、四天王は勇者レベルの力を持つようになった。その状況に対して10人の勇者の大半は積極的な戦闘を行わなくなり、現状の維持のみをするようになった。



上位勇者 1位 全能勇者

担当 ルシフェル

ギフト 不明

人間が使えるあらゆる魔法や武器を自在に操り、相手をねじ伏せる様は正に全能の一言。彼にできないことはほとんどない。しかし、彼の力すらも凌駕する魔王の全力の一撃から皆を守るため、犠牲になった。



上位勇者 2位 ドラゴン勇者

担当 不明

ギフト 龍神の首飾り

とある洞窟の底に住む龍神が担当している勇者。竜を使役し、また自らが竜となることも可能。近接戦闘で無類の強さを誇る。上にブレスや竜巻攻撃など遠距離技も多彩。


ギフトの龍神の首飾りは竜化を更に強力なものにしたり、多彩な魔法攻撃に耐性を与える。それにより重装備や魔導具無しでも凄まじい耐久力を持つ。



上位勇者3位 封印勇者

担当する神 シヴァ

ギフト 不明

強力な水属性とその応用である氷属性の魔法。そして相手の行動や魔力などを封じる封印魔法を操る勇者。自身の能力を明かすことを極度に嫌い、基本は汎用的な魔法のみを使い、勇者独自の魔法はほとんど使わない。ましてやギフトを使っている様を見た者はただの1人もいない。


しかし、それを差し引いてもかなり強い。本名は結目亜美。



上位勇者4位 黒炎勇者

担当する神 アポロン

ギフト 太陽神の籠手アポロヌス・ガントレット(自称)

通常の炎魔法より遥かに強力な炎『黒炎』を操る勇者。黒炎以外は目立った技がないものの、当たれば必殺の黒炎一つでこの順位につけるほどの実力を持つ。

ギフトは炎属性の魔法の能力を底上げし、ただでさえ強い『黒炎』を最強クラスにまで押し上げる。シンプルな強みを押し付けて勝つ分かりやすいスタイルで戦う勇者である。他属性の魔法や補助魔法はあまり得意ではない。



上位勇者5位 恋愛勇者

担当する神 カーマ

ギフト 魅了のイヤリング

魅了出来ない者は一人もいないと豪語する世界に愛された勇者。彼女が魅了出来なかった男は今まで全能勇者とアオイしか見たことがない。彼女曰くその気になれば女性や動物すらも魅了出来るとのことだが、その様を見た者は一人もいないため詳細は不明。本名は秋空美麗。


ギフトは耳につけているイヤリングであり、これに触れた上で魅了行為を行うことでより高いレベルでの魅了を行える。


上位勇者6位 聖剣勇者

担当 アテナ

ギフト 聖剣『デュランダル』

言うまでもなく私。聖剣と光の力で戦う。アオイ風に言うのであれば『どこにでもいるような量産型テンプレ勇者』。らしい…



上位勇者はこの6人。今日は私と全能勇者以外の4人を改めてより復習し、イメージトレーニングでもしてみるか。

ドラゴン勇者と黒炎勇者、封印勇者に関しては対策した分、確実に勝利に繋がるはずだ。やって損はないはず。



そもそも勇者とは常識人や真面目な人間ほどその能力が強くならず、何かしらが狂っているような人間であればあるほど強いといった傾向があるらしい。あくまで傾向というだけで封印勇者や全能勇者といった例外でも強いパターンというものがあるらしいが。



「私も…負ければ勇者ではなくなってしまうのだろうか」



「勉強…してるの?」



「はっ…!!…何だ、シオリか。あぁ、そんな感じだ」


彼女は下位勇者5位のボールペン習字勇者だ。担当する神はガネーシャ。ギフトは彼女が持つ特殊なボールペンがそうらしい。


紙に魔法の名前を書き込むとその魔法が発動するという凄まじい能力を持っているものの、本人が病弱故にほとんど前線には出られない。書いてから5分で何の効果も無いただの文字と化してしまうため、誰かが持ってきてサポートするのも難しい。と、彼女が昔話してくれた。



「12勇者。そう呼ばれていた私達も…もしかしたら序列が一気にひっくり返る…なんてことがあるかもしれないな」



何かしでかす予感しかしないアオイはもちろん、ミサキもめきめきと頭角を表している。



「そうなった方が安心…なのかな。私はあんまり体調も良くないし…」



「…たしかにこの世の中には適材適所がある。私は勇者には向いていないのかもしれない。だが…!」



『わりぃけどよ、お前はあくまで通過点でしか無いんだ。つ・う・か・て・ん!!…しかしまぁ、それにしても弱いなぁ!お前はよぉ!おーほっほっほっほ!』



ふと頭をよぎるアオイの姿。私をボロボロに負かして煽り散らす様が容易に浮かんでくる。あいつにマウントを取らせるわけにはいかない。おまけにあいつが勝てばこの国はアオイのもの。国が終わる。



他にもドラゴン勇者や恋愛勇者が優勝すれば確実に国を私物化するだろう。それだけは避けなければなるまい。



「この国を渡してはいけない者がいる。私がこの国を救う。そう思うだけで私は頑張ることが出来る。…あいつは単細胞だの笑うかもしれないがな」



私がそう自嘲的に笑うとシオリは真顔になり、私の言葉をやんわりと否定する。



「…笑わないとは思うよ」



「シオリはあいつのことを知らないからそういうことが…」



「いくら彼でも真っ当に頑張って、正しく努力をする人を笑ったりはしないよ。絶対に」



自己主張を滅多にしない上にその主張も折ることもよくあるシオリがまさかここまで断固として、主張を曲げないのは非常に珍しいな。



「そ、そうなのか?」



アオイの何が分かるのかとちょっと話を聞いてみると彼女の口からとんでもない言葉が出てきた。



「そうだよ。あの人、本当は人を傷つけたり、尊厳を破壊することが好きなわけじゃない。もっと優しい人なんだよ」



?…今、何と言った?優しい…だと?



「…シオリ、何故あいつをそこまで庇うんだ。アオイ程非紳士的な鬼畜外道アオリカス野郎はいないぞ?」



「そ、それは…そ、そう!図書館で本を読んだり、花壇に水やりをしている時の彼は凄く優しい目をしていたの!それだけ!」



…それは煽る必要の無い本や花相手だからでは無いのか?と、ついツッコミたくなったが、シオリの言い分をこれ以上否定する意味もないだろうから黙っておく。



「お互い、頑張ろうな。シオリ」



「う、うん。私は正直他の勇者には敵わないけど…応援してるよ。シオンちゃん」



よし、こちらも来るべき戦いに向けて準備をするだけだ。私は必ず優勝してみせる。そしてこの国の平和は私が必ず守る!

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