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第19話 正々堂々

「シオンちゃん、なんだかアオイ君に似てきたね」



「なっ…そんなわけ…!」



あんな奴と一緒にするな。あんな奴と。



「あの二人さえどうにかすれば勝てると思ったのなら…お前の考えがいかに浅はかなのかを私が教えてやろうではないか…だったかしら?……そうよ、あの二人さえどうにかしてしまえば私は勝てると思っているわ!」




「なぜなら…事が終わるまではどうあがいてもあの箱から出られないのだから!」 



ウイハの目の前に巨大なドアが出現し、そこから出てきたのは数多の獣人達。数で圧倒しに来たというわけか。



「ディメンションドアー!!」



「土の精霊!そして水の精霊よ!」



ミサキの土の精霊で大地を隆起させ、閉じ込める。そして獣人達の頭上に水の槍を大量に降らせる。なんと高レベルな合わせ技なんだ。これもアオイの入れ知恵か?



流石のあの獣人達も逃げ場のない攻撃になす術もないだろう。



「進化方程式…」



土の障壁をたやすく破り、進撃する獣人達。何故だ。あいつらはミサキの魔法を回避は出来なかったはず…



「効いてない…?」



「私の進化方程式で彼等には高度な水属性耐性が付いている。貴方の精霊魔法にも簡単にはやられたりしない。そしてジャミングライトは続いている。貴方にもう彼等を倒す手段は無い。大人しく蹂躙されなさい!」



しまった。あの忌々しい光魔法の詠唱を封じる技か。あれがあるせいで私は…ん?光魔法の



「アポカリプス・レイ!!」



「な、何故だ!?何故光魔法を…!!」



「私が思うにジャミングライトは設置型の魔法ではないのか?ウイハが倒されたのに効果が継続していたのが良い証拠だ。おまけに…アオイのスポットライトだが…あれも一応光魔法だぞ?それに気づかなかった時点でお前の負けだ」



「い、何時!?いつ壊した!?」



「私が思うにタイミングはアミちゃんが地面に氷を張って、植物を無効化したタイミング。無差別の氷魔法だと装って、ジャミングライトの発生源を無力化したんじゃないかな」



「…!まだよ。まだ撃つ手はある。ドラゴン・ハリケーン!!」



竜すら手懐けるドラゴン勇者の力か…!3匹の竜が猛スピードで突っ込んでくる。




「シャイニング・ブレイク!!」




「貴方、スカラのワープ能力を忘れてないかしら?」



「何!?」



1匹の竜を私の頭上にワープさせただと!?



「がはっ!」



地面に叩きつけ、あの悍ましい植物のある場所に落とそうとしているというわけか。なるほど、確かにこいつはあらゆる力を自分の物にしている。



だが、あんなのを斬ることなど私の剣にかかれば造作もない。ただの一振りで両断可能だ。



「例えお前が100の技を持っていようが、極めた1には勝てない」



「アサルトクロウ!」



お得意のコピー技だが、確かにコピー元を凌駕している。しかし、この技とこの出力…



「…はっ、まさか!」



「そう。私はスカラの全魔力を吸い取り、さっきの獣人達からも魔力を奪った。貴方ごときに負けるはずがないわ」



反動で大きく後退したウイハは魔法で出現させた弓による狙撃だった。



「拡散ディメンション・スナイプ!!」



スカラが似たような技を撃っていたな。ムスビメ達に撃っていた闇の矢か。ワームホールは一つ。さぁ、どこに来る。



「馬鹿正直に私の眼前か!その程度大した事は…」



「爆ぜなさい」



「何!?」



百…いや、千はゆうに超えている。だが、出処を潰せば…



「シオンちゃん!後ろからも来ているよ!」



「問題無い!!」



「火の精霊よ!」



「貴様…あの時は本気では無かったな?」



「えぇ、あの時の私が考えていたのは最低限の魔力消費であの二人を無力化する事。そしてそれには成功した。あとは貴方達二人を倒すくらいわけないわ」



「《ドラゴニック・ファイア・カーニバル》竜の吐息祭!」



ドラゴン勇者のドラゴニック・ファイアを改良しただと…?この火力と範囲は間違いなく奴を遥かに凌駕して—



「水の精霊よ!多重水牢壁!!」



「流石だな!ここから逆転だ!」



奴の攻撃は防ぎ切った。ならば私が攻めるのみ!



「ふふふ…ははは…あははははは!!」



「さて、もう時間よ。私の勝ち」



「…」



「…」



「アオイ!ムスビメ!!」



まさかもう洗脳されてしまったのか…私達は戦わなくてはならないのか…?



「さぁ!勇者達よ!敵を排除しなさい」



『御意』



アオイとムスビメが私に向かって殴りかかる…かと思いきや二人が拳を振りかざしたのはウイハだった。無警戒だったのか凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、壁にめり込んでいた。



『な、何故…貴方達の心は溶かしたはず…!卑しい情欲しか頭にないはずなのに…!』



『誰に向かって命令してんだ、ボケ』



「心?そんなの奥底に封印したわよ。封印勇者…だから」



「さて、この封印が作用するのはあと15秒だっけか…それまでにはいけるな」



『ここで貴方達は確実に…』



「プラネット・クライシス。なるほど、広範囲における大爆発を起こして俺達諸共生き埋めにする技か。全く、最期まで油断ならねぇ奴だな。おい、ムスビメ」



「分かった。私が確実に倒す」



そこからの二人は恐ろしく強かった。心が封印されている。にわかには信じがたいが、あの煽りカスキングアオイがこの状況に対して一切煽らずに冷徹な目を向けている辺り事実なのだろう。



そしてそこから程なくして感情が劇的に昂った二人は目につくサキュバスを全て倒し、男共を回収した。





早朝の戦いが終わり、町が最低限機能するようになったその夜。王都は酷いことになっていた。勇者と男達の信頼は地にまで落ち、反乱が起きている。この城が突破されるのも時間の問題か。



「…アオイ君、起きて」



「何だ?あれから俺狂化使ったから身体痛いんだけど。夜這いなら今度にしてくれ」



「はいはい、ふざけた事言ってないで…あれを見なさい」



ムスビメはアオイの最低なジョークを軽く受け流して現況の把握を促す。王城から見下ろすとそこでも反乱が起きていた。無理もないか。男の勇者が事実4人も捕まったのだからな。今までは高い税金や貢物を王都を守ってもらうためだと我慢していたのだ。それがこの体たらくではな。




「当然と言えば当然なんじゃね?順当に行けば国王様もあとを追われるだろう。だが、俺はサイドストーリーに興味などない。国がどうなろうと魔王を殺せばクリアだろう?」



この男は本当に世界を救いに来たのだろうか。人の命を何だと思っているんだ。どう説得しようかと悩んでいた所に声をかけたのはムスビメだった。



「よく国民の声に耳を傾けてみなさい」



アオイが心底嫌そうに渋々話を聞くと何やらミレイを時期王女にしろだのと声があがっている事に気づいたのだろう。表情が更に曇る。



「何だ、あいつらとうとう狂ったか?それともミレイが集団を洗脳でもしたか?」



「いいえ、ミレイは勇者一人の中で王都を守り切ったらしい。まぁ、妥当な評価だと思う」



「にしてもガヤがうるせぇな、ちょっとあの煩そうなやつに金握らせて黙らせてこいよ。金持ち勇者様よぉ!」



「そんな事していいわけあるか!」



本当にこいつはいつもそうだ。何故外道なやり方でしか解決出来ないのか。



「なら城に宮廷画家…だっけか。いや、この際絵が描けるやつなら誰でも良い。絵師はいるか?」



「あ、あぁ。いるにはいるが…何をさせるのだ?」



「イケメンな男の絵を描かせろ。エロいやつ。贈賄作戦だ」



「お前は何かを渡すことから離れろ!それにこの短時間ではまともな絵は描けないだろう!」



「分かった。じゃあ、お前のアポカリプス・レイで黙らせろ」



「お前は王都の人々をなんだと思ってやがる!」



「モブ。…もういいよ、じゃあお前あっちの裏口行って見張っていれば良いから。最悪どうなろうと姫やミサキ、アミの命は守る。一旦退路を確保しておいてくれ」



「そ、そうか?じゃあ、分かった…って!それ以外は殺すつもりか!?」



「この王都はなるべくなら拠点にしたい。だから余程の事が無ければ積極的に殺したりはしない。はよ行け」



…よし、行った。行ったな。じゃあ、後は好き放題やるだけだ。




『物ども静まれ!!』




『王都を襲撃したサキュバスはこのシオン、アミ、ミサキとその部下アオイが倒した。もう心配する事はない!と、言いたいところだが…お前らはもう勇者を信頼出来ない。そうだろう!!』




『うむ。外部からの侵入を許すどころか敵に捕まる軟弱な者に勇者は務まらない。だからこそこう思わないか?勇者に相応しくない者がいると!』




『これから真の勇者の選抜会を始めようではないか!諸君!此度実績を上げた者には新たな勇者にする事を約束しよう!』



『さぁ!旧時代の勇者を排除し、新たなる勇者一行を作り上げようではないか』





「騙したなぁぁぁ!!そして何をしでかしてくれたんだ、貴様は!」



私はアオイの首を掴んで揺するが、アオイはさぞめんどくさそうな目を向けながら淡々と理由を話し始める。



「この際はっきりさせよう。お前らの中で誰が有能で無能か。俺は誰かに足を引っ張られて死にたくはない」



「何だと?」



ドラゴン勇者の目つきが鋭くなる。やはりぽっと出の勇者に言われたくはないか。他の勇者達も同様にアオイに敵意を向ける。



「簡単な話だ。あの中の有象無象の中にもそこそこ使えるやつがいるかもしれないし、いないならいないで使える勇者を厳選したい」



「使える使えないって…貴様、これをゲームか何かだと思っているのか?」



こいつは…魔王を倒す。それだけしか見えてない。




「おかしな事を言う奴だな。お前らが問題なく強いんなら力で民衆をねじ伏せるだけ。勇者が強いんなら誰がなんと言おうと力で黙らせれば良い。ただ異世界転移していてギフトがあるくせにそこらの民衆に負けるような虫けら同然のクソ雑魚勇者がいるなら解雇し、新戦力を迎え入れる方が建設的。それだけだ」




「なぁ、お前らは俺より強いんだろ?ならばそれを力で示してくれ。俺に負けるようなカス勇者はリストラする方がいい。だろう?ドラゴン勇者」



「アオイ…だっけか?随分と生意気な口を聞くじゃねぇか」



「だって現に…弱いじゃん。問答無用で追放しないだけありがたく思いたまえよ」



「…灰すら残さずにこの世から消し去ってやろうか」



「やってみろ。だが、今は姫様の御前。血生臭い戦いを姫様に見せるわけにはいくまい。場所を変えよう」



そこからアオイはわざわざ遠くにあるバルコニーに誘導した。何故だ?勝率は変わらないだろうに。



「はっ、こんな事しようがてめぇの死ぬ時間がちょっと伸びるだけだぜ!」



ドラゴン勇者の『竜の地ならし』で足場を破壊する。奴がバルコニーを破壊すれば飛行能力や浮遊能力は無いアオイはそのまま落下して、無抵抗なまま…



「パーフェクトブリザード!!」



「何!?俺の上に…」



純度の高い氷魔法!?亜美の魔法をスクロールにしていたのか…!!



「すみませーーん、この人国外へ逃げようとしてますよー!捕まえてリンチだお前らぁぁぁぁぁぁ!!」



「てめぇ、人を盾に…」



ここで関係ない一般人に危害を加えれば間違いなく王都にはいられなくなる。見た目も声も全てそこにいた適当な女性に姿を変えていたのだろう。アオイめ、使える物は何でも使うつもりか。



「逃がすか!テメェが化けてんだろ。誤魔化せねぇぜ!」



「ドラゴニック・サンダー!」



「…スポットライト」




「お前は周りに被害が及ばないよう俺だけに当たるように魔力を絞る。想定してた答えだ」



そうしてアオイはあっという間にドラゴン勇者を袋叩きにした。



「うむ。ご苦労であった。本来ならば勇者の地位を剥奪し、馬車馬のように働かせてやるべきだとは思う。しかし、こいつにチャンスを与えてやってはくれないか?」




うわ、モブだの散々言っていた国民達の機嫌取りをしているぞ。どこまで面の皮が厚いんだ。



「分かる。分かるぞ。こいつは勇者として当然果たすべき義務を怠った。その上今回の失態だ。しかしだ。俺の住んでいた国では失敗した者にも必ず一度はチャンスを与える。そういうものなんだ」



「だから!皆で見てやって欲しい。こいつの事を」



どんな腐敗した思考回路をしていればこんな事が思い浮かぶのだろうか。ドラゴン勇者を悪役に仕立て上げ、晒し者にして辱める。そして事前に自分はばっちり売名して国民からの信頼を得ている。クズめ…



急遽行われる事になった真勇者選定戦。あいつは一体何を企んでいるんだ…

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