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第18話 復活の刻

「ほらよ、あとはお前が面倒見ておけ。完全に拘束したからこれで自害は出来んだろう」



魔力と身体はムスビメの水の鎖で封印されており、この状況で考えうる舌を噛む事による自害も猿轡で問題なく封じている。これなら余程のことをされない限りスカラは問題あるまい。



「あ、あぁ…分かった」



「〜っ!」



「じゃあ、あとはゆっくりみんなを探して帰るだけだね!」



「そうだな。残党を狩りながらついでに探すか」



ピキッ



何かにヒビが入ったかのような音が微かにだが聞こえた気がする。気のせいか?



「ん、もしかして今あの氷の割れた音がしなかったか?」



「や、やめろ!さては私をからかっているな?封印勇者が封印したウイハが復活する前に倒した!だからもう復活するわけないだろう」



うん、お前のような発言をするような奴は真っ先に死ぬな。南無南無。



「念のため調べましょう。何もなければそれで良いわ」



この氷が問題なわけだが、ムスビメが見たら一発か?



「おい、どうした?逆方向に引っ張るのはやめろ!」




「なっ!?何をする!?スカラ!!離れ—」



攻撃予測


自爆



危険度:93



「ミサキーー!!手を!!」



急げ、手を伸ばせ。シオンは仮にも聖剣の勇者。あの鎧は神々からのギフト。多少の負傷はするだろうが死ぬ事はあるまい。だが、問題はミサキだ。さっきまで完全に警戒心を解いてしまっていたため防御壁は間に合わないだろう。このままでは危ない。



「けど!!シオンちゃんが!」



「あいつは死なない!後にしてくれ!!まずは手を伸ばせ!!」



短距離瞬間移動は成功。爆風によって多少吹っ飛ばされたが、ミサキの風の精霊によって着地は完璧。なんとか被害は最小限に抑えられたが…シオンは轟音に飲み込まれてしまった。



「シ、シオンちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」



「まさか…自爆…?魔力の流れが完全に感知出来なかった。もしかして…」



「小型爆弾だろうな…それも俺達がすぐには気づかないレベルの…」



俺の危険予知の性質上自爆に巻き込まれる危険が出るまで気づかなかった。敵が近代兵器を所持していないと思い込みをした俺のミスだ。



「落ち込んでいる暇は無いわ。魔力が流れている限りシオンは生きている。目の前の敵に集中しなさい」



「誰が落ち込んでいるって?」



おいおい、無茶言うなよ。俺の指示ミス一つで人が死んだかもしれないんだぞ?けれど今は…悲しむ暇すら与えてくれないらしい。



氷の結晶が割れて、中から出てきたこのサキュバスこそがウイハで間違いあるまい。雰囲気や魔力からして、他のサキュバスとは桁違いだ。



「本当に…スカラの用心深さには感心するわ。まさか自身に爆弾を仕込んでいただなんて…さっさと裸にひん剥いて持ち物検査でもしていたら良かったわね、勇者さん」



「うるせぇ、存在18禁め。教育に悪いわ」



「彼女自身が怪しい素振りを一切しなかったって事は…誰かに遠隔の起爆スイッチを渡していたわけね。万が一があっても良いように」



そうすれば例え自分がどういった状態であろうと…それこそ裸にひん剥かれてバレなければ役割はこなせる。俺とてスカラのような大きな駒であろうと勝利のための布石なら捨てる選択肢を取る。しかし、それはゲームでの話だ。



現実にこんな狂気じみた手を取る悪魔がいるとは思わなかった。自分が確実に死ぬ手を打っていながらあの落ち着きよう…死を享受していたとでも…?俺は悪魔をみくびっていたのかもしれない。



「そうね、これも全ては貴方達を欺き、確実に私を復活させるためだとか言ってスカラは策を練っていたわ」



おいおい、命を投げ打ってまでそんなにボスが大事か。なんつーカリスマだよ、ヤバすぎて引くわ。やはり四天王と直属幹部。かつての戦いが上手く行きすぎただけで一筋縄ではいかないか。




「なるほど、ボスのために自ら命を投げ打ったってわけか。…はっ、アホらし。どうせお前も…」



「俺達に殺されるってのにな」

「何かしらのアクシデントでウイハが復活した場合の対処方法も既に練っている。隙は無いわ」



ムスビメは魔法の準備をしており、こちらもスクロールの準備は出来ている。冷静になれ、何も問題は無い。しかし、こいつを確実に殺す策は無い。ハッタリかましているのは俺だけだと信じたい。



「ミサキ、落ち着いて聞け。シオンは生きている。ただし、危ない状態である事には変わりない。お前がシオンを救え。任せたぞ!」



「う、うん!こっちは任せて!…死なないで、シオンちゃん!」



ミサキは精霊を使った緊急治療体制に入った。こうなればあとはミサキとシオンに危険が及ばないように立ち回るか。



回復したら散々こき使ってやるから覚えとけ。シオン。だから絶対死ぬなよ。



【攻撃予測】


広範囲に植物の蔦を展開させる

属性:自然


危険度:52



「どうにか回避は出来るが…無力化を頼む!」



「広範囲はちょっと面倒だけど…!ちゃんとかわしなさいよね!」



ムスビメは俺の頼みを聞くや否やすぐさま辺り一面を氷で覆い、数多の植物を無効化させた。俺の回避は余裕だが、ミサキとシオンはどうにもならない。



「さっすが〜」



「あら、大魔王様からいただいた自然の力をこうもあっさりと…だったら…!貴方達がこの数時間で殺害した仲間を蘇らせる」




「な、何だと…お前なんてこんな…」



「ここまで来るにあたって、相当な数私達の仲間を殺してきたのでしょう?それらを全て呼び寄せるわ!」



【危険予測】



ゾンビ・フェスティバル



対象が24時間以内に殺した死者の魂をこちらに呼び寄せ、復活させる。




「無駄な事をしてくれるなんてなぁ!!」



危険度:0




「何ですって…」



よし、オフ会0人達成。やったぜ。こんな物騒なところにサキュバスだの色々集めるんじゃねぇよ。



「悲しいよ。俺はこんなにも正義を尊び、不殺を貫いてきたのに。お前らには俺が悪魔を殺す最悪な野郎にでも見えるのか…?」



「そうね、その答えは…彼が答えてくれるわ」



彼…またショタガキ野郎でも出てくるのかと警戒していたらどうやら違うらしい。どっかで見たことあるような…あっ、あの獣共の残党か。そういや生かされていたな。名前なんだっけな。



「お前が殺したんだろ…お前が殺したんだろうが!」



「いや、殺したのこいつ!こいつだってば!」



「き、貴様…たしかに事実だが、そんなに必死に言わなくていいだろう…げほっ!!」



「シオンちゃん!まだ喋ったらダメだよ!!」



俺が必死にシオンに向かって指を指すと声に活力は無いが、確かにシオンが返事を返した。



やはり生きてたのか。見た限り全然後遺症も無さそうだし、顔にアザとかも無い。とりあえず大丈夫そうか。てか俺なら即死レベルの技が直撃してあのダメージ量かよ。異常耐久め。



「しばらくお前はそこで寝てな。レオンに関しては9分9厘お前がいなくてもなんとかなる。だが、万が一の事態になったらお前に託すからな。今は気合入れて治せ」



「俺達はお前ら人間を許さねぇ!絶対ぶっ殺して…」



「スクロール…海神ノ矛(トライデント)



「黙れ。頭に響く。今朝の5時半だぞ?3時間後にアニメが放送される日曜日じゃ無きゃ本来爆睡してるっつーの!!深夜に戦ったかと思いきや今度は早朝とか…もっとまともな時間で戦わせてくれよ」



所詮は四天王の直属幹部以下の魔物か。アミのトライデントで一撃。というかやっぱこいつらの技の威力は頭がおかしい。絶対この世界の基準を明らかに凌駕している。こんなバランスブレイカーが12人いて何故魔王に勝てなかったのだろうか。



「全く、海神ポセイドンの技を惜しみなく使って…」



「は?ポセイドン?」



ポセイドンってあれか。性欲モンスターでよくクズムーブかましているけど創作上とか一般の方々に説明される時は大体その悪行が揉み消されるあのポセイドンか。



『そ、こいつは神々の技をいくつも習得した十二勇者の中でも特別凄い勇者よ。一度魔王戦で敗北を喫して以来、最も努力したといっても過言では無いわ』



「そもそも神々の技って習得出来んの?」



神々の技が会得出来るなら正規の技がほとんど覚えられない俺でもどうにか出来る。大いに役に立つだろう。今度詳細を聞いてみるのも悪くないか。



『えぇ、そもそもシオンのアテナ・アサルトがアテナ様の技だし、才能さえあればね。悪いけど貴方にその才能は無いわ』



は?才能無い?え?なら俺のアドバンテージって何?人を不快にさせる才能を軸に他の勇者から魔法を借りて戦えと?夢見させる気が無いならわざわざ俺を呼ばないでくれ。



「ほう、だから俺にはこんな程度の低い神が当てられるのか。ますますクソゲーだな」



ほんとマジで才能無い人に優しくなさすぎる。これだから異世界物は。



『うるせぇぇぇぇ!!今は黙ってウイハを倒す事に集中してろやぁぁぁぁぁぁぁ!!』



「分かった。あとは俺が何かしらの攻撃をくらうまで話しかけるな。戦闘に戻る」



『あっ、コラ!待って!待ちなさい!!』



しょうがない。神様に恵まれないのは現実と同じだ。なら俺にも出来る方法であいつを追い詰める。それが俺の仕事だ。



「あら、やっぱりレオルじゃ相手にならないかしら」



「悪いが、ウォーミングアップにすらならない」



「なら、要らないわね」



「ウイハ様!?た、助け—」



肩に噛み付いてエネルギーを吸い取る。なるほど。これがこいつの栄養補給って訳か。



「ドレイン完了…やっぱりこれが一番効率的ね」



「ほう、いいのか?お仲間さん死んじまったんじゃね?」



「安心しなさい、魔力と技を吸い取っただけ。死んで無いわよ」



「ふむ、使えない仲間の魔力や技を自分に集結させる。実に合理的な戦闘スタイルなこと」



「無能はこうして生かさず殺さず…搾取されるのがお似合いよ」



「…ほう、素晴らしい格言だな」





「となればお前は俺に搾取される事になるがよろしいか?ミス無能」



【攻撃予測】


大自然の遺志

属性:自然


朽ちた植物の魔力を吸い上げ、成長した植物による攻撃


危険:41



「中々面白い冗談を言うわね、貴方!」



ふむ、あの氷漬けにされ、生命活動を維持出来なくなった植物達に残っていた魔力を吸い取ったってわけか。そして今度は三方向からの攻撃。ならば…



「スポット・ライト!」



地面にスポット・ライトを当て、バックステップ。これで地面を穿つ。それで時間を稼げると思ったが…



「大自然の遺志はこの程度では止まらないわよ!」



あっさり破られ、地面を破壊しながら植物は突き進む。しかし、音ゲーや諸々で極まった反射神経を有する俺にとってこの程度の攻撃をかわすのは造作もない。事前に軌道が全部見えるなら最早決められた譜面を叩く音ゲーと同じだ。



【攻撃予測】



真下から植物による攻撃。

属性:自然

危険度:53



【攻撃予測】



七連デスボルト

属性:雷

危険度:47



ほう、織り交ぜてきたか。しかし、つまらんな。この程度で倒されるような俺ではない。そしてそろそろ反撃するか。



「至近距離ラピッド・ファイア!」



拡散する炎の弾を至近距離で全弾命中するように放つ。これにより、一つの蔦は焼き尽くしたが…



「全て焼かなきゃ別の植物が焼けた植物の魔力を吸い取っちまうだけか…」



俺の攻撃予測はあくまで攻撃を予知するだけ。自身の害にならない限り相手の細かな魔法の性質を理解するまでには至らない。それが仇となったか。



「そしてあの植物は魔力を吸い取った分だけより強く成長する。低レベルな呪文は使うだけ無駄よ」



となると使えるスクロールの魔法は託された光魔法とムスビメの魔法だけか。他は汎用的な下級魔法ばかりだからあまり使えんか。



「それにしても…私の魅了は常時発動かつ一応同性にも効くはずなんだけど…随分と強靭なメンタルね」



「私はそんなしょうもない精神干渉に絆される程弱くはないわよ」



「良い事を教えてやろう。この世に創作物(フィクション)より美しい物は存在しない。身の程をしれ、天然物が」



『はぁぁぁぁぁ!?今までそんな理由で魅了が効いてなかったわけ!?』



なんだ、シルフィ。割と黙っていた方なのにこんな要らんタイミングで割り込んで来るか。そして何故さも俺を頭のおかしな人のように認定してくるのだろう。




「当たり前だろ。ムスビメのような強い精神力はないし、シオンのような強い耐性。ましてやミサキのように一つの事に全神経注げるような集中力も俺には無い。ちょっと考えれば簡単だろう?」




『そんな人間今まで見たことないわよ!少なくとも異世界へ行く人間はもっとこう…希望に満ち溢れていたわ!というかあんた異性に興味なさすぎ!植物か!?』



植物ね。少なくとももう三次元に希望を持つのは止めたんだ。お前もあと数十年かければ俺のステージに辿り着けるはずだ。せいぜいがんばれ。




「俺が異世界へ来て分かった事は異世界はクソだと言う事だけだ。口うるさく指示を出すのが人間か神かで違うだけではないか。大人しく本だけ読んでれば良かった。まっ…そんな異世界だろうと頑張って世界を救おうとしている健気な女がいる。そいつの邪魔はしない」



顔も良く知らない。好きな物も何もかもを知らないザ・他人に対してどうしてそう命を張れるかねぇ。本当に馬鹿としか言えない。けどそんな馬鹿を見殺しになんて出来ない。



「独り言を言ってる場合!?上見なさい!上!!」



【攻撃予測】



ネイチャー・トラップ



植物の蔓が数多にも伸び、対象を絡め取る。副次効果無し。



危険度 41




「だから俺はどんな卑怯な手を使ってでもお前を殺すし、ミサキには指一本触れさせはしない。絶た—しまった!!」



「馬鹿!!変にカッコつけるから!」



「かっこつけちゃって…貴方はゆっくり苦痛を与えながら搾り取ってあげるわ」



「ま、待ってくれ!金か!?金ならいくらでも払う!!俺は王都の勇者だ!国の税金が大量にある!!いくらだ!?いくらで手を打つ!?」



「全く、愚かなものね。勇者が保有する莫大な魔力が人間世界の通貨なんかと釣り合うなんて甘い事を考えているのかしら?命は金で買えると?」



「金なら払う!!頼む!!なんなら王都の地下で匿っている男共の場所を教える!だから俺の命だけは助けてくれ!!」




うわぁ、ぐったり倒れているシオンが侮蔑の目を向けてきている…悪いか。俺は命が惜しいんだ。てかさっきも言っただろ、お前は死ぬ気で身体を治せ。真剣なミサキを見習え。俺に構うな黙って寝てろ。



そうやって心の中で言い訳をしていたところにアミがにじり寄って来た。



「た、助けに来てくれたんだな!アミ!!」



しかし、ムスビメは俺を助ける事はなく、代わりに俺の頬に平手を浴びせた。



「そ、そんな…私、貴方の事を信じていたのに!私の事を…私の在り方を…認めてくれて心から理解してくれる初めての勇者だと思っていたのに…裏切ったの…?」




「ま、待ってくれ!アミ!俺はそんなつもりで言ったわけじゃ…」




「大嫌い、貴方なんか…!!いいわよ、あいつは私が倒すから!貴方なんて何もかも吸われてこの世からいなくなっちゃえばいいのよ!」



お前…そうやって感情剥き出しで怒れる一面があったんだな。…って、そんなこと考えている暇は無い。



「あらあら、大事なお仲間にも嫌われちゃったわね。それにしても貴方。国民を売るなんて、最低ね。他の男共は誰一人として、身内や家族、仲間を売ったりはしなかったわ。そんなに自分の命が大事?随分と身勝手な勇者ね」



お前らなぁ、みんなそうだ。異世界に飛んでからというものの、人の事を散々勇者呼ばわりしやがって…俺は苛立って仕方がない。



「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!勇者はそんな高尚な存在じゃねぇんだよ!解るか!?ある日普通に生活してたらいきなり勇者ですって言われた俺の気持ち!お前なんぞに理解されてたまるか!!近寄るな!悪魔め!これ以上近寄るんじゃねぇ!死ぬ!死ぬから!!やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」




「ダメよ。貴方は特別にありとあらゆる苦痛を…え?」



敵が100%の勝利を確信した瞬間。それこそが俺の勝利の瞬間だ。



こいつの身体を突き刺さる剣や槍。そして同時に放たれた光魔法が穿つ。無論、俺のプラン通りだ。



「ふふふ…ひひひ…ふははははは!!ざまぁねぇな!!死ぬのはてめぇだぜ、ボケェェェ!!見事に!綺麗に!滑稽に引っかかってくれたな!!楽しかったぜ!勝ったつもりでいるお前を眺めるのは!!」



「最初に言っただろう?どんな手を使ってでもお前を殺すと。良いことを教えてやろう。こと卑怯において人間に勝る者は存在しない。人間は誰であれどこまでも卑怯になれる素質を持っている」



「それを見抜けなかった時点でお前の負けだったんだよ!アッアッアッアッアッ無様だなぁ!!」



「落ちたわね…封印勇者…!!貴方がこんな真似をするなんて…」



「内容は最悪だけど作戦自体は話術を用いたただの視線誘導。ある程度成功する見込みがあったから私は乗った。それだけよ」



「こんな…こんなところ…で…」



「倒した…の…?」



「まだだ。心臓が止まったくらいで油断してはならない。俺の知る漫画では身体を破壊しようと頭が無事なら再生可能な生物が存在している。念入りに殺さねば…」



「全く、そんなのはフィクションの産物だろう?いたた…今日1日ゆっくり休ませてくれ…ほら、ウイハの身体が消滅しているだろう?」



シオンめ、また悠長な事を…というか殺したかも。といった状態で油断するんじゃない。殺すなら5回は殺せ。素早く静かにな。



…ん?待て、消滅した?



「シオン!後ろ!ウイハは生きているわ!」



「何!?」




「…随分勘が鋭いわね」



「第四の光!シャイニング・ディストラクション!!」


スクロールを開け、上空から光の絨毯爆撃を放つもそのことごとくを回避する。



「そして貴方はつくづく非人道的な勇者ね!」



「…黄泉独断。一度使うと半年は使えない切り札まで切ったんだから…貴方の全てを吸い取らないと割に合わない」



「お前らに半年後なんて無い。お前らは必ず殺す。生き返るなら肉一片すらこの世界から消し去るだけだ」



「この後は私達も戦う。お前に勝ち目など無いぞ」



「それはどうかしら?」




《攻撃予測》



妖艶の黒箱


対象の周囲に黒い板を展開し、閉じ込める。


危険度 61



これを回避するためにはまずは距離を取らなくては…




ん?待てよ、おかしい。俺に対する技なのに何故俺の周囲に黒い板が無い。有効射程が長すぎるのか…?



「な、何なの?精霊の力が…効かない…?」



ミサキ!?何故ミサキの攻撃に俺の危険予測が反応しているんだ!くそっ、こうなったら…



「…あとは頼む」



ミサキを閉じ込めるギリギリで瞬間移動。そうしてミサキを突き飛ばす。これで解決…なんてされるはずないよなぁ。





「冷静に考えたらあれ普通に悪手だったな。アミは魔力の流れが分かるんだから俺より先に気づくはずなんだし、何かしら対抗策打ったと考えるのはそう難しくは無かっただろう」



今現在俺は黒い箱のような物に閉じ込められている。願わくばこれが俺の無駄死にならない事を願おう。


「シオンー!バーーカ!!バーーカ!!」



あっちの音は聞こえない。衝撃一つ感じない辺りこちらに発した声も恐らく聞こえていないのだろう。



「にしてもやたら狭いな。正六面体では無いのか?」



まさか圧縮死させてくるようなヤバいトラップじゃないよな?危険度はあまり高くなかったし、多少拘束するだけである事を切に願うが…




もしかして中にサキュバスが仕込まれているのか…?



「残念だが、俺の光魔法はあと三十五発使える。降伏するなら今のうちに降伏する事だなぁ!」



咄嗟に口から出た出まかせ。こんな事を言う辺り俺も焼きが回ったな。



「私よ。アオイ君、結目亜美」



ムスビメもこの中に…?もしかして同じタイミングで庇ったのか?



「ならばお前が俺の記憶が呼び起こしたイマジナリームスビメではない証拠を見せろ」



「分かったわ。…シヴァ様、出てきていただけませんか?」



『おぉ!ムスビメ!貴様ら、中々面白い事になっているな!』



この脳に直接会話を送ってくるようなこの話し方。確かに神々のコンタクトとそっくりだが…探るだけ探るか。



「笑い声ではありませんよ、あとは彼に自己紹介を」



『そうだったな、アオイ。俺はムスビメアミの担当。シヴァだ。まさか貴様が我が妻に召喚されずにこの異世界に降り立つとはなぁ!実に面白いぞ』



は?我が妻?



『貴様は本来ならばパールヴァティーが担当する予定だったのだぞ?ギフトも俺のピナーカをやるつもりだった』



シルフィ、実はお前余計な事しかしてないだろ。ピナーカとか俺でも聞いたことあるレベルの代物だぞ。戦犯案件か?



『そもそもな、お前のような人間性に難がある勇者はそこらの神には任せられる訳がないだろう。だから大らかで神々としての経験も豊富な我が妻を選んだ。お前の期待に添える上にアミと連携を取るにあたって最も効率が良いからな』



「え?シルフィとかいう下級女神どうにかクーリングオフ出来ないか?」



『それがだな…』



なんか言い難い雰囲気を出すシヴァ様。あぁ、これはダメなやつかと諦めていたら明らかにムスビメの様子がおかしい事に気づいた。



「…」



「なぁ、ムスビメ。いきなり抱きつくな。なんか言えよ」



おい、俺が人間不信極めた二次元狂いのイカレ野郎でなければどうにかなっていてもおかしくなかったぞ。



「ごめん、しばらくこうさせて」



肌を重ね、段々力強く抱きしめてくるムスビメ。寂しさを紛らそうとしているようにも感じた。



「理由が分からん。何があった」



「…」



「別に笑わないから正直に言え」



「…」



『おぉ!こいつはまた一段と面白くなったなぁ!そいつの経歴書によればそいつは閉所恐怖症らしいぞ!相棒である貴様が思い切り抱擁してやると良い』




「シヴァ様」




『はっはっは、余計な横槍だったか。見たところその箱に即死するようなギミックは仕掛けられてない。安心して抱きつけ。ほら、観戦してる神々も抱け!抱け!とヤジを飛ばしているぞ』



「シヴァ様!」



「今はそれだけで良い。俺で良いならそうしてろ。別にこの事を誰かに話す気もない。いつか話したくなった時にゆっくりその話を聞く。まっ、俺で良ければ。だがな」



「…ありがと。気を遣わせたわね」



「気にするな。とりあえず俺達は温存。シオンとミサキに任せよう」



そういえば他の人間の体温などここ数十年感じた事など無かったな。しばらく安全だと言うならこの心地良さに身を任せるのも悪くはない…な…





「やっぱり…あんな事言っておきながら貴方のためなら命を張るみたいね。精霊勇者!」



「アオイ君とアミちゃんを返して!」



「あの二人さえどうにかすれば勝てると思ったのなら…お前の考えがいかに浅はかなのかを私が教えてやろうではないか」

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