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第17話 合流

「シオンちゃん!起きて!」



「…ん、今何時だと思って—」



「沢山のロボットがこっちに向かってきているの!」



「何だと…?」



そんなはずは無い。魔物達が活動するのは主に昼か夜だ。稀に例外は存在するが、こんな早朝に進軍出来るなど信じられん。だが、ロボットなら…先を急ぐか。



「とにかく!今は人達を集めて止めないと…」



「あぁ、これ以上先へは通しては大変な事に—ん?」



ミサキから聞いていたロボットは鉄屑と化していて、空には数多の鳥が飛んでいた。



「あら、今起きたんだ。遅かったね」



「貴方は… ハジメ君の部下の…」



「うん、そして…匿名希望の絵描きさ。いや、私のことより現状の説明が先だ。さっき大量のロボット兵が雪崩れ込んできた」



ロボット兵…そういえば聞いたことがある。西大陸の四天王は魔王軍の中でもずば抜けた科学力を持っている。つまりはあいつらの差金か。



「既に全部倒したけれど…もしかしたら第二第三の刺客を送る可能性がある。気を緩めない方が良いね」




そしてそれらを全て粉砕した彼女は一体…



「けど今はちょうど終わったし、見張りも飛ばしている。せっかくだからこれでも観る?かなり面白い物が見られるはずよ」



「ん?何これ?鏡?」



「そう、それもかなり特別なものだよ」



彼女が持ち出した鏡を見つめているとそこにはサキュバスの根城にいるはずの二人の姿が見えた。



『チャンピオン・タイムだ』

『狂気解放50% 3minutes』



『ハッタリが上手いわね。今の貴方達じゃまともに動くことすらままならないでしょうねっ!』



スカラが放った数多の闇の矢が二人に降り注ぐ。あいつめ。あれだけの莫大な魔力を持っているのか。アオイ、あれを回避するのは至難の技だぞ。



チャンピオン・タイムと狂気解放。その宣言と共に莫大な魔力を纏ったアオイとムスビメ。ムスビメはハッタリをかますような女ではないが…どう動く。



『宣言しよう。今のお前じゃ俺にかすり傷はおろか埃すら付けることは出来ない』



『愚者の侵攻』



『ふふふ…へへへっ…ふはははは!はぁぁぁっはっはっは!』



アオイと同じ見た目をした分身が4体。人をイラつかせる笑い方をしながらスカラに近づく。が、しかし…



『何をするかと思えばうざったい木偶を増やすだけかしら?わざわざ的を増やしてくれるなんてご苦労…』




分身がいくらいようが上空からの無差別攻撃に対しては意味を成さない。アオイは何故今この行動を…



『氷龍警報』



5体の氷の龍が顕現し、拡散された闇の矢を一つ残らず、寸分違えず撃ち落とす。ナイス判断だ、ムスビメ。



『エクソシズムナックル!!』



その隙にスカラと距離を詰めていたアオイは拳に魔力を纏った攻撃を放つ。



…ん?普通の攻撃…だよな?何をするかと思えばただ強化しただけの拳じゃないか。あんなのがスカラに当たるわけ…



『すり替え』



『何!?』



分身とすり替えただと!?あいつはいつの間に生物間とのすり替えを可能にしたんだ…?



『更に…すり替え!』



『エクソシズムアッパー!』



『…ちっ、やってくれるじゃない』



『おいおい!こんなもんかよぉ!』



すり替えとわけの分からない物理攻撃を繰り返し、スカラを蹂躙する。まるで全ての行動がみえているかのような攻撃だ。



『うざったいわね…けど、流石の貴方も全方向までは対処出来ないようね!』



『…そこに気づくとはやるな。…しかし、俺があえて作った活路なんだけどな』



『な、何!?』



逃げたはずのスカラの脚が凍りついている…ムスビメがやったのか…!?



『薄氷ノ罠…ステルス・アイス…!!』




『氷龍ノ牙』



『…』



ムスビメが出した氷の龍がスカラを喰らいに行くが、辛うじて出したワームホールで難を逃れた。



『こっからは二人でやるぞ。俺について来い』



『アオイ、誰に物を言っているのかしら?』



そこからのアオイは先程の分身入れ替え戦法を使って息をつく隙すら与えず殴り続け、ムスビメは魔法無効化の術式圧殺や氷のトラップ。他にも多彩な小技による妨害。まさに相手のあらゆる行動を封印する戦い方で徐々に疲弊させていく。



『っ…分かったわ。貴方は他者とのすり替えは出来ない!なら封印勇者から叩く!それこそが貴方の攻略法!』



しまった!真偽が分からないアオイを一々警戒しなくてもムスビメが本物なのは確実!頼む、防いでくれ!!




そんな私の願いも虚しく、霧散…ん?霧散したのか?




『あら、私が二人いる事に気づかなかった…のっ!?』



『エクソシズムドロップキック!!』



狂戦士と化したムスビメの肘鉄とアオイのドロップキックがスカラに直撃した!これはもう勝負は決まったも同然!だが、それにしても…何でムスビメは無事だったのだ?



『へへっ…愚者の侵攻の見た目をムスビメに変えただけのお粗末なトラップに引っかかるとは…』



『見事。二人とも実に見事だわ。けど、忘れていないかしら?私にただの物理技は…』



『第二の光 悪魔鏖殺』



そんな事は知っていると言わんばかりに至近距離で光魔法を放ち、悶えるスカラを見下して宣言する。



『そりゃあ分かっているさ。いくら普通に殴ってもまともなダメージにはなっていなかったことはな!だが、お前は何か勘違いをしてないか?お前らは常に狩られる側だ。どう足掻こうとお前じゃ俺達には勝てない』



『こうなったら…奥の手よ!ドラゴン勇者の必殺技!竜変化!!』



『ヴァァァァァァ!!』



凄まじい咆哮。なんてやつだ。こいつは画面越しでも分かる。…あの実力は最早四天王クラス。勇者二人で対抗出来るレベルじゃない。



しかし、何故ドラゴン勇者の切札である竜変化まで使えるんだ!?…くそっ!何故私はあの場にいない…!!



『ドラゴンの弱点はとあるゲームと同じだろう?お前が言ってたんだ。今になって忘れましたとは言わせないからな?』



『誰に向かってそんな生意気な口きいているのかしら。安心しなさい、私はこいつなんかには負けないから』



ま、負けない?あの圧倒的なドラゴンが相手なんだぞ?



『何をごちゃごちゃと…私の炎で焼き尽くしてあげるわ!』



流石ドラゴン勇者のコピー技…あんな一撃をくらえばひとたまりも…



海神の咆哮(ポセイドン・シャウト)!』



『くっ…あれだけの炎を一方的に消し去るだなんて…』



『氷龍警報』



『そ、そんな…馬鹿な…竜変化に弱点など無いはず…』



私は一体何を心配していたのだろうか。ムスビメは竜化したスカラのブレスを瞬く間に打ち消し、再度5体の氷の龍が顕現してスカラに喰らいつく。



『あら、ドラゴン勇者はまだそんな嘘ついていたのかしら?氷属性に弱いって致命的な弱点があるくせに無いだなんて… それとも気づかない程頭がお花畑なのかしら』



『やってくれたわね…こうなったら…先に貴方の仲間から殺してあげるわ!!』



またワームホール!?しまった!ヨルダの真後ろに発生したが、ワームホールの出現位置が遠すぎる…あれをどうにかするのは不可能…



『すり替え。氷槍投擲』



『がはっ!』



アオイはワームホールへ向けて攻撃を先んじて放っていた…のか?おまけに竜化したスカラによく効く氷属性の攻撃を…!!



『てめぇの行動パターンは千手先までお見通しなんだよ!ふははははは!!』



『何故読まれる…!?予備動作はほとんど無かったはず!』



最早竜化の意地すらままならないスカラ。よし、これは勝ったな。



『お前が俺に負ける宿命だから。諦めな』



『アオイ君、調子に乗りすぎ。確実にトドメを刺すわよ』





「信じられない…魔王軍幹部を圧倒しているだと…?あいつら、一体どれだけの力を隠していたんだ」




アオイのやつ…肉弾戦はからっきしだと自分でも言っていただろう。ムスビメもあんな多彩な技があるだなんて。そしてあいつらは修羅場真っ只中にいるだろうに…どうして…あんな楽しそうなんだろうな…



『嘘でしょ…あの二人、魂が入れ替わっているのよ…?なんでお互い自分の身体のように動いているの…?』



「た、魂が入れ替わってるだと!?」




『シヴァ様がムスビメにそんな話をしていたわ。ありえない…入れ替わりなんてされたら普通は激しく動揺して、まともな行動が出来ないはずなのに…』




「まぁ、そんな事だからあっちはほとんど心配は無さそうだね」



『くっ…ならこれが私の最後の切札!これならどう!?』



スカラが最後に投げたのはリング…なのか?だが、それを一体何に使うんだ?



『なっ、どうなってやがる!?』



『きゃっ!』



「ヒルド!ヨルダ!?何故ここに!?」



「…なるほど。あのリングには空間転移の罠が仕掛けられていたわけね。事前に仕掛けた魔力を使わない罠かつ彼に敵意を向けていないのであれば二人のレーダーには引っ掛からずに罠にかけることが出来る。けれどどうして二人を戦線から外したのだろうか…」



「お、お前は何を言っているんだ?」



「おっと失敬。こっちの話」



「むっ、画面が…なっ、何故画面に私!?どういう事だ」



「シオンちゃんが映っている。もしかして…」



「ヨルダちゃん!借りるね!」



「貰ったお守りが一体…はっ!今度は私が映っています!」



「つまりお守りに細工がされてたってこと。貴方、何故こんなことを?」



「…今はまだ全てを話すことは出来ない。けれど信じて欲しい。私は敵じゃない。この国を必ず守ってみせる」



「お話の最中だろうけど失礼するわね」



「お、お前はスカラ!一体何しに…何だ!す、吸い込まれる!!」



「きゃっ!しまった!」



「ミサキ様!これをアオイさんに渡してください!!」



「ミサキ!アオイに伝えろ。必ず帰ってこいってな!そして…これも持っていけ!」



「う、うん!任せて!必ず勝って帰ってくるよ!」




ミサキを飲み込むワームホールが消える前にヒルドが大きなリュック。ヨルダがスクロールをミサキに託す。ヒルドとヨルダがいれば王都は問題あるまい。



あとは私達に任せろ。ヒルド、ヨルダ。





「ここは!?やつめ…!遥か上空に落としてきたか…」



アオイとムスビメが膝をついている…まさか…怪我を負ったのか…?



「アオイ君!落下予測地点は…」



「よし、ミサキ!そのまま降りてこい!」



「きゃっ!」



ミサキが水のクッションへ落下し、バウンドするもそれをアオイがキャッチする。



「ミサキ、大丈夫か?怪我は無いか?」



「う、うん!大丈夫だよ」



「おっ、ミサキ。スクロールと俺のリュック…持ってきてくれたのか?」



「ヨルダちゃんとヒルドちゃんがこれを私に…」



「ナイスファインプレーだ、ミサキ」



「えぇ、貴方が来て本当に良かったわ」



「お前達!私を無視して話を進めるな!」





「それで現状はどうなったの?」



「スカラは私達のわずかな隙を突いて逃げた。そして彼女が押した謎のスイッチによって、この基地が組み替えられ、今はこの部屋に閉じ込められたわ」



なるほどな。長期戦を仕掛けるつもりか。いや、それよりも二人は入れ替わったままなのだろうか。



「ねぇ、二人の身体は入れ替わっているの?」



「入れ替わった?そっちにシルフィいるだろ。聞いてみ」



『入れ替わってはいない…アオイ本人で間違いないわ』



「つーか入れ替わり魔法はともかく基地の組み替えは最早近未来の産物だった。あれを初見でどうにかするのは流石に無理」



「閉じ込められたって…一体どうやって」



『◯◯◯しないと出られない部屋』



「はー!?何だこの部屋は!…ままままま、まさか貴様…」





『ほう、しないと出られないんだってよ』



『じゃあ、さっさと済ませて終わるわよ。もし無理ならミサキにも同じ事をしなさい』



『えぇっ!?待って!?私初めてだし、最初は好きな人とって決めていて—』



『…世界のためよ、ミサキ』



『やだ!離して!離してぇぇぇ!!』





「貴様ら!妙な真似をしたら私が許さな—い…?」



さっきからコンコンコンコン…壁を叩いているのか?



「…お前らは一体何をしているんだ?」



「何って…空洞を探しているに決まっているでしょう?」



クウドウ…空洞か?



「この部屋には扉も鍵穴も無いときた。ならば壁の薄い部分を探してブチ抜くってのが一番てっとり早い。貴様が考えた淫らな作戦は最上級の愚策だ」



み、み、淫らだと!?



「そもそも…あれをするだけで出られると本気で思っているの?」



ムスビメ。待て、いつから貴様はそうやって追い討ちをかけるようになった。やめてくれ。私が悪かった。だからこれ以上追求しないでくれ。



「つーまーりー!俺達はスカラにおちょくられてんの!OK?少なくとも俺ならそうする。男と女を閉じ込めて反応を見て茶々を入れる。さぞ楽しいエンターテイメントだろうなぁ」



外道め。よくもまぁ、下衆な発言を…こいつ実は神を脅迫している悪魔なんじゃないのか…?



「とりあえずアオイ君は一旦静かにして。仮にじゃあシオンの言う通りだったとして…じゃあ、出られる定義はどうなると思う?」



「定義も何も…する…んだろ?」



「聞き方を変えるわね。行為が発生した事をどうやって判定するの?」



行為が発生した事の判定…?



「対象2人の体液を循環させる。このベットや床に一定の圧力をかける…条件付けは色々あるが、まぁ…俺なら部屋に監視カメラ仕込んでおもしれぇ状況になったらあけ—分かった。悪かった。もうこの件に追求するのはやめるから許せ」



「分かったよ、とりあえずふざけないで冷静に指示を出す。俺とムスビメは突破口を探す。お前とミサキは怪しい物が無いか探していろ」



やはり今まではふざけていたのか。真面目にやってくれ。世界を救う戦いだぞ。



「わ、分かった…」



それから数十分探すもアオイとムスビメは目ぼしい策は見つけられないでいた。



「こうなったら適当な壁を熱して冷やすってのを繰り返して、ヒビを開けるか?」



「待って、まだどこが安全か分からない以上はあまりにもリスクが高すぎるわ」



「しかし、奴は今の状態では勝てないから時間稼ぎという選択肢を選んだ。その間もし四天王から力を貰っていたり、捕まった勇者からドレインをすれば俺達は太刀打ち出来なくなる可能性がある」



「じゃ、じゃあどうすれば良いの?」



「…」



「アオイ、何か見つけたぞ。これが手がかりになるやもしれん」



「ほう、さて、中身は一体…」



中身を見た瞬間、アオイは怪訝な顔をしてから再び封をしてベッドの脚に向かって投げつけた。



「なぁ、お前が思う怪しいやつってそういう事か?なぁ?なぁ!」



「わ、私も中身が分かっていれば報告してなどいない!」



「貴方達、そんなくだらない話は後にしなさい。あのベッドが動いた。何か細工があったみたいよ」



「…おっ、こいつは…」



「ベッドの左脚…この部分が折れるようになっていたわけね。そしてこれは…」



「折れた脚の部分に鍵があって、丁度ベッドの脚で隠れていた部分に鍵穴があったってことね」



早速下の鍵穴に鍵を差し込んで回すと地下の抜け道が見つかった。ここから出るといったわけだな。



だが、重要なのはここに入る順番か。罠やもしれん。慎重に…



「アオイ君から先に行って」



「断る。ムスビメも一緒に来い。索敵はあまり得意では無い」



「…しょうがないわね。少しじっくり見てくるからミサキとシオンは少しだけ待ってて」



考えていた私を他所に二人で勝手に決めて、勝手に視察しに降りていった。本当にこの二人は勝手が過ぎる…



「アオイとムスビメ…一体何があったんだ」



「あの二人スカラ戦でも連携バッチリだったよね」



「これがお前の力…なのか?アオイ」



会って数日。最初はやってきて数時間もせずに幹部を倒した上にギフトは持っていなかった。やはりお前は神々が選んだジョーカーといったわけか。



「こっちは問題無い。降りても大丈夫だ」



「うん、今からそっちに行くね!」



「この扉の先にスカラやウイハがいる。覚悟は良い?」



「あぁ、さっさと終わらせるぞ。みんなが待っている」



「私は大丈夫だよ」



「あら、思ったより早かったわね」



「勇者をあまり甘く見るなよ。お前とウイハは必ず倒す!」



「けど遅かったわね。私は更なる力を得た。ドレインした勇者達の能力は更に強化され、魔力はかつて貴方達が戦った時点での魔王様にもひけを取らないレベルよ。絶望しなさい」



「なん…だと…あの時敵わなかった魔王レベル…だと?」



「ほら、なんとか言いなさいよ。さっきは埃一つ付けることは出来ないとか言ってたわよね?黙ってないで反論の一つでもしてみなさいよ。生意気な勇者さん」



「第三の光…断罪の光!!」



「な、何!?」



そこからスクロールで別の魔法を発動させる。中から水の鎖が出てくるや否やスカラを拘束し、自由を封じる。



「ちっ、右手が抜けたか。まぁ、良い。お前の凄まじい物理攻撃耐性や魔力耐性…それは所詮魔力があるからに過ぎん。今お前には魔力を封じる水の鎖で縛った。お前の素の力ではこれを引きちぎるのは到底無理だろう」



「油断しやがって!ざまぁ、見ろオラァ!謝罪しろ!服従しろ!うぇぇぇぇぇい!」



そこからはもうスカラを殴る蹴るをひたすら繰り返す。無抵抗な相手で悪魔とはいえ、仮にも女性相手にここまでやるか。



こいつ絶対サイコパスだろ。恐らく扉を開ける前の段階で既にハイドを発動させ、ゆっくり確実に背後を取ったのだろう。卑劣極まりないな。ん?そもそもハイドは誰かに視認されていてはそもそも発動が出来ない。まさか…



「アオイ君は相変わらず下種な策には定評があるわね」



「ムスビメはこの作戦を最初から知っていたんだな!?」



「さぁ、何のことやら…私にはさっぱり」



ムスビメが…こんな作戦に加担するだなんて…

おまけにまだ見せていない自身の魔法まで貸し出すとは。どれだけこいつを信用しているんだ。



「俺はなぁ、こう見えても怒ってるんだぜ?道具屋のおっちゃんがいなきゃ俺の下準備は何一つ出来ないし、女ばっかの国に取り残されたら俺がどんな扱い受けるか分かったもんじゃねぇし、まともに徴税も出来ん!よって、貴様を処す」



それはほぼほぼ貴様の都合だろう!仮にも勇者ならもっと勇者らしいことを言え!



「さぁ、男共がどこにいるかさっさと教えろ。そうすれば俺はお前とその仲間を殺さないと誓おう」



あぁ、この一言で私はもう悟った。悟ってしまった。この男はムスビメに殺害させるつもりだ。自らの手は汚さない下衆の鑑だ。



「ふふ、それが貴方の愛しい封印勇者ちゃんに倒してもらうって算段なのは分かっているわ。けどそれって…卑しくも私が貴方に命乞いをする前提の話じゃない?」



「は?茶化してんじゃねぇぞ。契約破棄する?お前の家族、身内、友人から順番に殺していくか?」



おい、封印勇者の事を軽く言われただけでブチ切れるな。いつもの飄々とした返しはどうした。そんなアオイの外道な脅迫に対してもスカラは眉一つ動かさず続ける。



「本当は…貴方が私を殺すつもりが無いからでしょう?貴方、本当に聖剣勇者を信用していないのね。貴方が持つ光魔法のスクロールをありったけ使えば私は殺せたはず。けどそれをしなかった理由はその先。ウイハ様用にとっておくため。当たってるかしら?」






「あぁ、大正解だ。俺はシオンを信用してないけどそれってそんなに悪いことか?」






こいつしれっと言いやがったぁぁぁぁぁぁ!!!

悪びれもせず!罪悪感なんてカケラも感じずに!!信用しないのがさも当然だろう?と断言しやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!




「私には最後の切り札がある…死ぬ前に良いことを教えてあげる。私のありったけの魔力をウイハ様に捧げる。そうすればウイハ様は必ず貴方達に勝つわ」




「残念ながら…魔力の封印がある以上は魔力を捧げる事も叶わないぞ?」



「魔力を封じる鎖ね…それって…生き物にしか作動しないのでしょう?」



その言葉を聞いた瞬間、何か嫌な予感がしたのかムスビメは顔が青くなり、すぐさまスカラとの距離を詰めに走る。アオイもスカラのナイフを押さえるが、非力なアオイでは一分も持たないだろう。




「スカラを殺すわよ!光魔法の準備をしなさい!!一刻も早く!!!」



「わ、分かった!…何?光魔法が使えん…」



「ジャミング・ライト…この空間で光魔法の詠唱は出来ない。私との小話に付き合った貴方の負けよ、アオイ」



スカラの狙いはよく分からないが、アオイのスクロールは詠唱済みの魔法が出てくる。それなら問題あるまい。



「アオイ!光魔法をありったけ使え!」



「ダメだ!止めてくれ、ムスビメ!!」



「既に動いてる!!間に合わせるからアオイ君も出来るだけ時間を稼いで!!」



「残念、私が首元にナイフを突き立てる方が早いわ!じゃあね、外道勇者様。地獄で会いましょう」



自害!?一体何のために…生物の魔力を封じる鎖…いや、生物しか封じることが出来ない。…はっ!



「アオイ!後のことはいいからまずは光魔法で早くやつを倒せ!!!」



「落ち着け。よく見ろ」



「は、花…!?」



「自害?させてたまるか。大人しく花でも愛でてな。まっ、心配しないでくれ。お前の大事なウイハ様はこれから封印を施した棺桶にブチ込んでから冷たい冷たい東京湾にでも沈めてきてやるから」



「くっ…何で…何で…!!私達は貴方のような格下とは次元が違うはずなのに…」



「や、やったね!これで四天王の封印はされたまま!一番強い幹部もやっつけられたね!」



やり方は最低だったが、勝った…んだな。ウイハは封印されたまま起きない。アオイのやり方を真似る気はないが、より強固な封印を施して仲間を救出。これで私達の作戦は終わった。少なくとも私とミサキはそう思っていた。

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