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第16話 正しい捕虜の使い方

夜が明けた直後。恐らくシオンやミサキはまだ寝ている時間に俺はムスビメに渡された高度な魔術耐性が付与された黒のローブに袖を通す。あとはスクロールやその他道具を随所に仕込んでその他はリュックに詰めれば準備はokだ。



「さて、出撃するか」



もちろんムスビメやその側近であるヒルドとヨルダも準備万端だな。まさに俺が求めたパーフェクトなパーティだ。



「結局、ルミナはスクロールで魔法だけ貸すってことになったわ。使うタイミングはアオイ君に任せる」



「あいよ」



スクロールは7本か。光魔法のスクロールは市場に出回らないから本来であれば10本以上は欲しいところだが、仕方あるまい。現場でルミナと揉めるよりかはマシか。



「あ、あの!」



いざ、サキュバスを攻め滅ぼそうと出撃する俺達を呼び止める声…確かこの声は…



「図書館の司書さん。どうしたのですか?こんな早い時間から…」



「もしよかったら…これ、お守りです!」



お守りか。この世界でもそんな文化があるんだな。ん?日本の物に似てる…そうだった。こいつも何かしらの勇者だったんだよな。



ムスビメなら何か知っているかもしれん。こっそり聞いてみるか。



「…なぁ、こいつは何の勇者だ」



「…ボールペン習字勇者。一度見たスキルをギフトのペンで書くとそのスキルをコピー可能だと聞いているわ」



「聞く?見たことないのか?」



「無いわ。彼女は病弱だから戦いの場には基本出ない。だから彼女は自身がコピーしたテイムのスキルを活用し、生物の力を借りて戦う。さっき言っていたスキルも自己申告だから本当かどうかは分からない」



なるほどね、参考にしておこう。それにしてもムスビメは中々良い情報を持っているな。



「あっ、あの!どうぞ!!」



「おっ、ありがとうな」



突如目の前にお守りを差し出されたので少し驚いて変な声が出てしまった。いけないいけない。人前であんま内緒話するのは良くないか。よし、これはポケットに入れておこう。



「ヨルダさんもどうぞ」



「私のは首からかけるの?」



ん、俺とムスビメとヒルドのお守りはポケットに仕舞うだけだったが…ヨルダのだけ指定?



「はい、特殊なスキルを付与していますので首にかけておいてください!直接お役に立てずに申し訳ありませんが、少しでもお役に立たせてください」



特殊なスキル…ねぇ。危険予知が反応しない以上は直接害のあるスキルが仕込まれているわけでも無さそうだし…わざわざ言及しなくてもいいか。



「自分自身の役割を最大限果たせば文句を言う奴なんかいないわ。サキュバス達は私達に任せなさい」



「あぁ、俺達の吉報を楽しみに待っていてくれ」



「はい!頑張ってくださいね」





サキュバスの本拠地である城に着いた。見張りも少ないし、このまま正門から特攻しようとしたところにヒルドが疑問を投げかける。



「つーかよぉ、本当に4人だけで攻め落とせんのか?」



あ?誰にものを言っているんだ。策はある。黙って見てな。ただし、攻め落とすにはムスビメやお前らの力が必要だ。そして…このメスガキの力も…な。



「メスガキよ。今まで悪かったな。お前はこれから自由だ」



「じ、自由…本当に?」



「ただし…こっから俺達は敵同士だ。正々堂々相手してやる。ラキアに伝えろ。俺達は正門から攻めに行くとな」



俺から正々堂々なんて言葉を聞いて一瞬怪訝な顔をするムスビメ。うむ、それは正しい。なんせ俺は最初から正々堂々と戦うつもりなんてこれっぽっちも無いからな。



「よっし!!私を解放した事!そして私に危害を与えられない契約を結んだ事を後悔しなさい!へへーんだ!」



「…あいつ殺すか?」



「待て、ヒルド。たしかに通常なら俺もこの瞬間やつを殺める指示を出すが…今はこれで良い」



「あの…話が見えてこないのですが…」



「まぁ、すぐ分かるさ」



「意図はあるようね。ならこれ以上言及はしない。攻め込むわよ」



俺の目論見通り早朝の正門にはサキュバスが最低限しかいなかったため、ヒルドに奇襲攻撃を仕掛けさせた。

うむ、近距離がメインだろうに遠距離から攻撃するような弓矢であっても問題無く使いこなす技量の高さは素晴らしい。武器をしまっていて、いつでも取り出せるようスクロールに仕込んでいるわけか。



さてと。ここから勝ちに行くか。





「ふふふ…」



城に入るや否やサキュバス3人が群がり、荒縄で縛られた。そこに本来いるはずのムスビメ達の姿はない。目の前にはそこそこの実力がありそうなサキュバスがいる。まさかこんな事態になるとは思ってもみなかったな。



「おい、コラてめぇ!離せ!離しやがれ!!あいつらぁぁぁぁ!俺が捕まった瞬間退散しやがって!!」




「あらあら、あの国にまだ男が残っていたのかしら?それとも迷い込んだだけのただの田舎者か…」



はぁ、ここまでか。せめて最後に恨み言の一つでもぶつけてやるか。まぁ、ぶつけるほど恨んで無いけど。



「…うるせぇ、くたばれ。ブスめ…さっさと俺のダチを解放しやがれ」



「ダチ…?友人のことかしら。誰の事かは知らないけどすぐに連れて行ってあげるわ。貴方のスキルや魔力を絞り尽くしたあとでね…」




「本当はボスに献上しなきゃいけないけど…まずは私が味見…しちゃおうかしら。ふふふ」



「甘いんだよ、ボケェェ!!」



零距離で繰り出すアッパーカット。俺であろうと魔力で身体を強化することで不意を突くことは可能だ。トドメはムスビメに任せるから問題あるまい。



「ば、バカな…ありえない…拘束はしっかりされていた。魔力もほとんど無かった。抵抗なんて出来ないはず…それに魅了は…」



「貴方の敗因は三つよ。一つ目、そもそもアオイ君は拘束されていなかった。二つ目、アオイ君に魅了魔法は効かない。三つ目私はアオイ君を置いて逃げるような真似は決してしない。それらを見抜けなかった貴方は負けるべくして負けたのよ」



見張りのサキュバスに擬態していたムスビメが正体を現し、巨大な水の塊をサキュバス相手にぶつけ、気絶させる。…窒息ってお前結構えぐいことすんなぁ…



水の塊がサキュバスの顔を完全に覆い尽くし、呼吸を封じる。当然相手も抗うため、必死にもがくが、水を掴む事は不可能。対抗策がなかったがためにすぐさまピクリとも動かなくなった。



「ったく、こんな回りくどい事本当にする必要あったのか?」



ヒルドとヨルダも同じく擬態を解除させる。あんま使えなかったか。



「もしも上手くいったらこのままボスの場所まで向かって、闇討ちする予定だった。しかし、組織のルールを守らず、勝手な行動を取る奴はやはりどこにでも一定数はいるか…」



「貴方随分と卑怯な手を使いますね…」



うるせぇ、卑怯で人類が救えるなら俺はいくらでも卑怯な手を使い倒すわ。仲間を囮にしたりとかそういう非人道的なラインは絶対超えないから許せ。



「ヒルド、覚えておけ。自らの手を汚す事で救える命があるなら俺はこの手をいくらでも汚す覚悟は出来ている。俺はそのために来た13人目だからな」



「アオイさん…」



「だから俺は例え誰に何を言われようが卑怯な手をやめるつもりは無い」



「…貴方の事を少しでも見直そうと思った私が馬鹿でしたわ」





俺達が突撃する少し前、ヒルドが気絶させたこいつらを俺が隠すと提案したところヒルドが反論をぶつけてきた。



『倒したこいつらを一旦隠しておけって…殺した方が良いんじゃねぇのか?』



「ふむ、お前が死体はもちろん、血の一滴すらも残さずにこいつをこの世界から抹消出来るならそうしてくれ。しかし、それが無理なら殺した方が足がつきやすいからやめろ。男共を助けた後でゆっくり集団で殲滅させよう。さて、ここで俺のスキルを使ってあいつらの見た目そっくりにコピーする」



可能性として魔力が完全に消滅すると探知されたりするかもしれん。とりあえずは生かしておこう。



「見た目のコピー?」



「あくまで表面だけだ。まだ声帯とかの模写は出来ん。お前らの表面を偽装し、俺が捕まったフリをする」



「やけに慎重ですが…本当に縄で縛って良いのですか?」



「安心しろ。そっちは縛られたフリで乗り切る」



確かに縄で縛られている状態だった。しかし、縛られる前に縄を短くするように握っていた。つまりは…握った拳を放せばゆとりが出来て即自由。油断せずによく確認しような。



「貴方がそこまでやるのなら私もスキルで貴方の魔力を封印する。もちろんもしバレてもすぐに解放出来るわ。そうすることでぱっと見は一切抵抗出来ないようにしか見えない。これならより確実に相手を騙せるわ」





気絶させたサキュバスは縛って、あの排水路にでも捨てておくか。まぁ、余程のことが無ければすぐに探される場所ではあるまい。



「オラァ!落ちろ!」



「なんて容赦の無い…」



「命を取らないだけ十分聖人君子だろ。俺の善行に全米が涙するわ」



「ゼンベイ?誰かの名前か?」



「私達が元いた国の話。あんまり深く考えなくて良いわ」



「俺達はこのルートを堂々と駆け抜ける。そこに敵はいないはずだ」



そう、堂々と正門から攻めると宣言した以上、敵の戦力の大半はそちらに割かれる。あの場で一人勝手な行動をしていた奴がいたことには少し焦りを感じたが、誰かに伝える前に倒したので問題は無い。



「確かに…ここら一体に反応は全く無いわね」



「敵はいないはず…?何をしたのですか?」



違和感を覚えたヨルダが俺に問いかける。仕方ない。能力を秘密にしすぎるのも不信感が募るか。



「何って…あのメスガキは今真実を喋る事が出来ないから今頃大量の虚偽報告でもしてるんだろうぜ」



「真実を喋る事が出来ない?」



「あぁ、対象にかければ俺自身が解除するか数時間経過しない限り誰にも真実を話す事は出来ない。そして極め付けは俺自身の進化。本人ですら術中にハマれば偽りの真実だと気づけないようになっている」



まっ、基本的に正反対。正反対に出来なければ真実では無い事をテキトーに喋るだけ。撹乱に使うのならともかく、決まった動きをさせるのは少し手間がかかるな。



「貴方、本当に回りくどいスキルしか無いのね。攻撃は私が中心とは聞いていたけどこれほどまでとは思わなかったわ」



おい、こっちは貧弱能力でどうにか戦っているというのに…こちとら煽りスキル以外に極めた能力が無いんだぞ。まぁ、そんなことをわざわざ言う必要も無い。この場はちょっと誤魔化そう。



「今回は例外だ。真っ向勝負で潰せる相手なら男勇者共が全滅するはずが無いだろ。効果が効いている間で確実にボスを殺害しろ」



「確実にどうこう以前にお前は魅了が効かないじゃねーか」



「魅了が効かないだけで俺TUEEE出来るなら苦労はしない。冷静に考えろ。魅了魔法一つで王都にいる全ての野郎が落ちると思うか?」



「思う」

「そう考えても仕方ないかと」



ヒルドとヨルダが揃ってバッサリと切り捨てる。おい、あいつら微塵も信頼されてねぇな…やはりどこの世界だろうと人類に国民性だの求めるのは酷か。俺自身もド底辺だしな。あんま人のこと偉そうに言えたりはしないからこっちも言わないし、期待もしていない。





「ただ魅了だけではなく、別の技も用意していた可能性はあるわね」





「だろ?そうだろう?問題はそれが何かだ…ってヨルダ。お前よく気づいたな」



「え?私は何も言っていませんが…」



は?だとしたら…さっきのは一体…



「答えが知りたい?なら私と戦いましょう。勇者様」



スカラ・ラキアか。いきなり四天王直属の幹部が出てくる事は想定していなかったが…せっかくの機会だ。このまま始末しよう。そう、決意した時にスカラの後ろに何やら怪しい人影が見えた。



「ねぇ、お姉ちゃん達…だ—」



見た瞬間悟った。年端もないショタガ—少年の容姿をしてはいるが、悪魔の翼を生やしている事からあれはもう敵で間違いはないだろう。



【攻撃予測】


 魅了


危険度:0



危険度0。つまりは俺には効かない魅了のようだが…何か嫌な予感がするな。



「無垢ヲ穢ス海神ノ裁キ!!」



大事を取って殺しておこう。スクロールを開くと凝縮された激流がショタガキを無惨に呑み込む。こいつは名前こそテキトーだが、確かにムスビメが以前使っていた技海神の咆哮(ポセイドン・シャウト)のはずだ。しかし、あの惨状を見るにどうやら俺に撃った時は相当出力を抑えていたらしいな。



「うぇっへっへっ…実に儚いなぁ!弱い!弱すぎるぞ、雑魚め!!あーっはっはっはっ!」



「あ、貴方…なんてことを…」



ヨルダの瞳から光が消え、その虚な瞳から大粒の雫が溢れる。いや、悪かった。この技のさじ加減を知らなかったんだ。知ってたらあんなショッキング映像流さないって!悪かったよ、謝るから!!



「あいつが対女性特効の魅了を発動してたから変な事される前に潰しただけだが?」



だが、その前にもっともらしい言い訳をさせてくれ。あれは正当防衛だ。それに悪魔討伐は勇者の責務だろう。勤めを果たしたのだから文句はあるまいて。




「だけだが?って!限度がありますよね!?」



しかし、そんな申し開きで許されるはずもなく、激昂するヒルド。…しょうがない。お前にあの格言を授けよう。アレを聞けばこちらの話も納得するはず



「俺の世界にはこんな言葉がある『お姉さんにマウントを取ろうとするガキは殺せ』とな」



「そんな世紀末な世界があるわけありませんよね!?」



あるんだな、これが。二次創作で一定数言っているやつはいるんだ。もちろんリアルで有言実行したやつは見た事ないけど。



「ヨルダ、あれは彼の判断が正しいわ。やり方はともかく…ね」



「お、おい…嘘だろ…お前、何もいきなり殺すことはないだろ!!いくら何でも酷すぎ…はっ!」



おや、この様子を見るに個人差はあるものの、やはりあのショタガキには女を魅了する効果があったのか。



「もしも彼が倒していなければ私が同じ事をしていたもの」



ムスビメの右手の辺りには大量の水の弾丸が生成されており、あのショタガキサキュバス…いや、インキュバスを蜂の巣にするつもりだったのだろう。そしてその動きの速さから恐らく魅了は効いていないな。



つまりあいつが出遅れた理由はやはり放出された魔力の流れを見て、攻撃予測をしているからか。



その仮説が正しければサキュバスの魅了攻撃は魔力を発しない固有スキル…みたいな物だと解釈するのが丸いな。



「おい、まさかあんなショタガキが切り札…なんて死ぬほどつまんねーことは言わないよなぁ?ん?ん?」



「あれはあくまでプランの一つ。失敗しても問題ないわ」



ん、存外冷静だな。声に動揺しているような揺らぎが感じられないし、最初からあれで倒せるとは考えていなかったのか?



「そうかよ、じゃあせいぜい余興を楽しませてくれよ!」



「そうね、ディメンション・スナイプ!!」



【攻撃予測】



射った矢が空間を跳躍し、確実に相手を射抜く。



俺の挑発に乗ったのか。すぐさま天に向かって矢を放ち、それを異空間に放る。あいも変わらずワームホールを使った攻撃か。呆れるな。とりあえず俺のは右足の辺りからワームホールをあけようとしている。上に視線を誘導し、警戒が薄れた足元を攻撃しようってわけね。



「ヒルドの後ろとヨルダの真上!」



やはりムスビメは魔力の流れが見えているな。それに視野の外であったにしても自分の近くであれば敏感にそれを察知する。そして俺に放たれる矢は自分で察知して避けられるだろうってか。



「ちっ!」



「アクア・バインド!」



ヒルドが剣で迎撃し、ヨルダはアクア・バインドで矢を絡めとる。中々の芸当だが…



「ぐぁぁぁぁぁっ!」



雷魔法と水魔法。これほど相性の良い組み合わせもあるまい。同時に炸裂する一撃に悶えるが良いぞ、羽虫め。



「いくらワームホールを早く閉じようとも」



「先に開く場所を予知していればタイミングを合わせて攻撃を放つぐらい余裕よ」



俺がアサルト・サンダーを。ムスビメがお得意の水魔法をワームホールに撃つだけ。それもちょうど矢がゲートから出てくるタイミングで。予知で完璧にタイミングが分かる俺達ならではの芸当。流石にこれは想定外だろう。




「おいおいおい!しっかりしてくれよ、あんた四天王直属の幹部だろう!?弱すぎて話にならんわ」



「ふふふ…なーんちゃって!!雷魔法?水魔法?そんな物は私の前では無力!貴方達は勇者達の莫大な魔力やスキルを吸収した私に傷一つ…」



「アンリミテッド・シャイン!」



第一のスクロール。大量の光が天上から降り注ぐ大規模範囲攻撃。本来なら一人相手に撃つ技では無いが…



「悪くない判断ね。けれどそれは大勢の敵に撃つ技じゃないかしら?」



「あぁ、そうだ。本来ならな。スポット・ライト!光栄に思うが良い!今回の主役は貴様だ!!あらゆる方向からの光を独り占めしな」



それならターゲットをスカラに絞ってしまえば何も問題は無い。軌道を変え、光という光がスカラに襲いかかる。範囲攻撃が全て収束する恐怖を存分に味わえ。



「やるじゃない。けど甘いわね、ワームホール!全部貴方に返してあげる!集めたのが仇となったわね!」



【攻撃予測】



アンリミテッド・シャイン



危険度 61



ほう、これで俺の後ろをアンリミテッド・シャインで穿つつもりか。だが、悪いな。お前の攻撃が俺に当たる事はない。



「術式圧殺…」



突如空中に出現したムスビメがワームホールを握り潰した。お前にはそう見えるだろうな。



「そ、そんな…どうやってあれだけの距離を…?」




確かにさっきまで俺の隣くらいにいたであろうムスビメがスカラの発生させたワームホールを握り潰すのは奴の頭では信じ難いのかもしれないが、大方想定はつく。というかさっきから何度も見ているだろうに。




「どうやってって言われても…さっきから見せているでしょ。貴方が出すワームホールには必ず出口が存在する。つまりはアオイ君を攻撃するためのワームホールから入れば防ぐためのワームホールへ出られる。貴方が使っている技でしょうに」



やはりそうだよな。さっきまで水や雷を飛ばしていたが、それがムスビメに変わっただけ。本当にそれだけなんだ。



「さぁ、野に咲く花のようにたっぷりと光を浴びなさい」



「ま、待って!来ないで!いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



数多の光がスカラを蹂躙する。無様だな。しかし、ダメージを与えたからといって油断は出来ん。これ以上ドレインでパワーアップされたら困る。あいつには確実なる死を与えなければならない。



「あんたの敗因は自分が有能だと思っていたからだ。無能からやり直しな。まっ、死んでからの話になるがなぁ!」



「待って、殺すのはあと。まずはさっさと捕まえた人達の居場所とボスの居場所を吐きなさい。スカラとか言ったかしら。隣には拷問のプロフェッショナルがいる。早めに吐いた方が貴方の身の為よ」



「ふふふ…あっはっはっはっは!」



「お?おっ?どうした?良い精神科でも紹介するか?あっ、悪魔じゃ門前払いだよなぁ〜!!あちゃ〜!!」



「素晴らしい。素晴らしいわ。流石封印勇者。女性最強の勇者なだけあるわ。そして神々の隠し玉である貴方もね」



「さぁ、何のことやら」



「でも!これだけはどうにも出来ないでしょうね!【マインド・チェンジ】!!」



【攻撃予測】


対象にした二人の魂を入れ替える



「ぐっ…」



「貴方…最初からそれを…」



「私はこの技のためにずっと準備をしていたのよ!屈辱的な思いをしてでも貴方達を倒すために!これでようやく全てのパワーが解放出来る!!」




あの技マインド・チェンジは恐らく成功するだろう。あいつは俺達が感知しても回避が出来ないように俺達二人が超至近距離まで近づいてくるのを待ったのだろう。さて、くらったもんは仕方ない。この後どうするかだ。まずはスペックの確認最優先っと。



気になるスキルは他に山ほどあるが、まずスカラ戦においては近接格闘でガンガンガンガンぶん殴って光魔法でトドメを刺すスタイルでいこう。そのための打ち合わせだ。



「狂化することで出せる出力と時間の限界は?」



「狂化100%なら1分。50%なら10分。といったように狂化のレベルと時間は反比例している。出力を下げて常時使うなら25%が限界。それ以下の狂化はパワーがほとんど上がらないし、規定以上出力や時間を増やせば身体が持たない」



「あと軽薄王だが…これはスキル表記通りのスペックだよな?」



「そうだよ。自分の自信に応じて身体能力が上がる。ただ自信を喪失すればその分の代償を一度に支払わなければならなくなるから気をつけて」



「それじゃあプランとしては…」



「何をこそこそ話しているかは知らないけど…作戦会議は終わったかしら?最もそんな状態じゃ戦闘すらままならないだろうけど—うぐっ!!」



俺とアミが同時にスカラの腹部を思い切り殴る。ダメージもそうだが、刹那の出来事にお前はついて来れまい。



「アミ様とアオイの野郎が一瞬で…な、何が起こっていやがるんだ…」



「ほら、預かってな、荷物持ちくぅぅん!」



「きゃっ!って!何をするんですか!?ちょっとアミ様に認められたからって良い気にならないでくださいね!!」



ヨルダにリュックを預けるが、流石にこの言われようじゃキレるか。しかし、今この速度について来れないやつはもれなく全員お荷物だ。許せ。



「アオイ、口が悪いわよ。私達は全力を解放したスカラを倒す。ヒルド、ヨルダ。二人には邪魔が入らないように見張りをお願いするわ」



「悪かったって、アミ。つーわけだ。頼むぞ、お前ら!」



「そ、そんな…貴方達は中身が入れ替わっているはずじゃ…」



「おうおう、よくぞ羽虫の分際で人間様に逆らってくれたな。叛逆者共には死あるのみだ」



「勇者の名の元に貴方達を駆除するわ。一匹残らず…ね」



「これから王の時間だ。始まるぜ、俺の…チャンピオンタイム!!」

「狂気解放50% 3minutes…貴方を倒すのなんて3分あれば充分よ」



片や金色の瞳を宿す煽り勇者、片や狂気と冷気を解放し、氷を纏う封印勇者。俺達なら負けない。確実に勝つぞ。

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