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第15話 留守番勇者

「アオイめ!いつもいつも馬鹿にして!!私はお荷物呼ばわりか!!」


あぁ、そうか。私は必要ないと!それどころかミサキ共々足手まといにしかならないから封印勇者に鞍替えしたと!そういう事だな!?



「ね、ねぇ。落ち着いて?シオンちゃん」



「ミサキは悔しくはないのか!?私達は置いて行かれた…この戦いには着いてこれないと言われたのだぞ!?」



「それは違うよ?だってあおちゃんの考えは…」



『そうよ!あんた達は置いて行かれたのよ!』



「お前は…アオイの担当女神の…」



「シルフィ!シルフィなの?」



『えぇ、シルフィよ。あいつは貴方達を裏切って、勝ち馬に乗ったの。封印勇者という最強の勝ち馬にね』



「何だと…?」



『あいつは図書館にいるわよ。気になるなら来なさい』



シルフィの言われるがまま図書館に行くと奥にある大きなテーブルに本を並べ、何かを話し合っていた。



「これは…作戦会議かな?」



「…近くの本を取って、一般人のフリをしよう」



「う、うん。分かった」



奴は異常な勘の鋭さがあるが、気配を殺し、一般人のフリをすれば問題あるまい。



『来たわね。二人とも。見なさい、あいつはまるでゲームのように人の個体能力の厳選を平然とやってのける最低男よ。だからあんな真似が出来るのよ』



ふむ、確かにそんな光景は容易に想像できる。勝ち馬に乗る行為が悪だと?何故目まぐるしく戦況が変わる中で当然行うべき行為を非難されなければならないのだ。…くらいは言いそうだな。



『そうね、今封印勇者が紹介するあいつも弱っちかったら…ふん、使えないな。お前達は連れて行くに値しない。とか言い出すに決まっているわ』



あいつは恐らくシルフィの言う通りの行動をするだろう。勝つためなら足手まといは必要ないと考えているだろうからな。



『紹介するわ。今回連れて行くのはバトルマスターのヒルドとウィザードのヨルダ。この二人よ』



『ウィザードのヨルダです』



『…ヒルド。よろしくな』



ヨルダはともかくヒルド。あいつまで出てくるとは。王都の狂戦士ヒルド。ヨルダは双子の妹。人当たりが良い妹とは打って変わり、下手に近づくと噛みつかれると噂されている危険な女だ。数多の身体強化スキルで自身を極限まで強化し、蹂躙する戦闘スタイルは正に狂戦士。



亜美が手懐けたものの、基本妹か亜美の言うことしか聞かない。しかし、この少数精鋭チームであればこれ以上とない戦略だろう。私達を計算に入れていないならなぁ!!



『ヨルダ…あの時付き添いにいたやつか。後方支援はある程度回復魔法や補助魔法が使えるなら問題はない。あとはヒルドだが…』



『亜美様。気は確かですか?私はこんなヒョロい男が強いとは思えないのですが』



ヒルドが不満を漏らす。それも当然。自分が尊敬している勇者が得体の知れない男を評価している上に極めて重要な戦場に連れて行くのだから気持ちは分かる。



『ほう、なら少しだけ付き合ってやる。貴様のような即堕ちチョロインなど5秒で分からせてやる』



『細かい意味は全然分からねぇが、ケンカ売ってるのはよーく分かった。なら私は3秒で後悔させてやるよ。泣いて謝るんなら今のうちだぞ』



『アオイ、ヒルド。引きなさい』



『アミ様!…だが!』



『今いがみ合っている暇は無いの。難しい話かもしれないけれど彼を信じる私を信じなさい。それと…ここは図書館。静かにしなさい』



『分かった。引いてやるよ』



『命拾いしたな』



フン、と嘲笑気味に鼻を鳴らして挑発する。ここで戦っていればお前の方が負けていたとでも言いたげに。



『あ゛?ざけんな、ここで死にたいのか?ヒョロガリ野郎』



あいつは何故やたらとケンカを売るんだろうなぁ。火のない所にガソリンをぶっかけ、火種をぶん投げてから安全圏内で大声をあげてソーラン節を踊る。そんな感じで相手をおちょくるのに全力すぎる。



『だからそこまで!まずはサキュバスの説明よ』



喧嘩を収めたアミはサキュバスの説明を始める。基本的な能力やスキルの他にもアミが見つけ出した弱点など…積み上げられたデータを基に効率的に攻略方法を編み出していった。



『サキュバスの魅力は同性を魅了出来ない。これは誰でも分かる至極当然の話だ』



『つまり!ほぼ女性だけのこのメンバーで攻めるなら確実に勝てるという事ですね!アミ様!』



『なんて思うんなら甘いよなぁ、ムスビメ。その理論なら聖剣勇者を連れて行こうが勝てる。そうなるだろう』



全く、お前は詰めが甘いなと言いたげにニヤニヤしながらアミに目を向ける。



は?今なんて言った!?私がいたら勝てないだと!?デタラメ言うのもいい加減にしろよ…



「待って、ストップストップ!あれは平常運転だよ!平常運転!…たぶんね」



『人の言葉を取らないで』



『すまんて、そうかっかすんな。言葉を取ったついでだ。僭越ながら俺の意見も話させてもらう。俺は先の侵略には何かしら別の意図があると思っている。男達を誘拐したのは本当に魔力やスキル目当てだけだと思うか?』



魔力やスキル目当て以外の目的?サキュバスは男以外から魔力やスキルをドレイン出来ない。だがしかし、主戦力の男勇者達や国王失うのは致命的。戦力を削ぐ事と王都の混乱も兼ねているのだろうな。



『サキュバスの魅了は基本的には同性…つまり女性には通じない。けれど女性でも強い勇者は沢山いる』



『つまり。女性特効のやべー敵がサキュバスの本拠地にいるか王都に攻め込んでくるか…何にせよ油断ならない。俺達が総出でサキュバスの本拠地を叩いていたら国が先に落ちていた…なんて事は避けたい』



落ち着いて話を聞いてみるとアオイは存外他の事…というか様々なプランを練った上で私達を王都に残していたのか。



『アオイさんが防衛を厚くしたいって言った理由が分かりました。確かに…それなら恋愛勇者様は防衛側に回ってもらう方が良いですね』



なるほど、女性特効の敵が男であるならアオイのような例外中の例外で無ければミレイの魅了が刺さる。



『あとはシンプルに王都にいる男共が洗脳され、襲いかかってくるかもしれん。身内が相手だと本気を出せなさそうな事からシオンとミサキは置いていくのが賢明と判断した。そんな奴らと戦わせるのは荷が重い』




『そうね…ねぇ、ちょっと待って。アオイ君、貴方私の事を身内でも躊躇なく倒す冷酷な女だと思ってない?』



『やーいやーい!女の地雷踏んでやんのー!女心は読めなかった?読めなかったかな?ざまぁ!!あははははは!うぇぇぇい!!』



水を得た魚のごとくマウントを取り始め、ゲラゲラ笑う女神。アオイ、お前…パートナー女神にめちゃくちゃ嫌われているではないか。



『他の勇者よりはマシかなと思っただけだ。気を害したのなら謝る。すまなかった』



あ、謝る…?あ、あ、あ、謝っている…?あいつの口からまさかそんな言葉が出てくるだなんて…



『ありえない…何なのよあいつ!私達からアオイを奪うつもり!?』



別に私達の物ではないとは思うのだが…というかあんだけ散々煽っておきながらこの女神はアオイを所有物扱いか。



『確かに今いるメンバーと比較すればそうかもしれないわね』



『それにお前の予測は恐らくそこまで広くはないと見ている。せいぜい目で見える範囲。いけても数100mが限界だろう。人数が増え—』



『それは今この場で言うべきではないわ』



見透かしたのように解析をするアオイの口に向けて人差し指を突きつける。



『てことは…あれに気づいているわけだな?』



『当たり前でしょ。貸切にしたのに気づかないとでも?』



『じゃあ、ヒルドのテストだ。俺達で座標を教える。お前の力を試させてくれ』



『ちっ、上から目線で偉そうに…黙って見てな』



実力テスト?一体何を試すんだ?アオイとアミが邪魔で見えないな。どうにかその様子を覗こうと台に上り、少し上から眺めていたら丸められた紙が凄い速さで顔に飛んできた。



「痛っ!?」



『盗み聞きしている暇があるならパトロールでもしてろ、脳筋勇者。アオイ』



『うむ、合格。自身の身体能力を強化だけではなく、物質の強度も上げられるのは評価値高いぞ』



「っ!!」



「行くぞ、ミサキ!」



「ま、待って!シオンちゃん!!」





「はい、そうですか、そうですか!!奴はアミの能力すら見破ったが、それをお前には教えてたくないってことか!」



あいつはただの一度もこちらを見ていなかったし、私はあいつに一切危害を加えてもいない。何故見破る事が出来たのだろうか…



アミならより具体的な位置が分かると踏んだハッタリか…?あるいは…格上との連戦やミサキとの訓練で更にレベルを上げたか…?いや、どちらにせよ…




「これ以上は言葉が出てこない…こんな屈辱は初めてだ」



「まぁまぁ。あおちゃんが執拗にサキュバスの本拠地に私達を連れて行かないのには理由があるんじゃないのかな?」



「…具体的には?」



「例えば…」



「王都には戦えない女子供が沢山いるから。じゃない?」



「誰だ?お前は…」



ポニーテールにキャップという恋愛勇者が一時期流行らせた格好をした怪しい女が私達の目の前に現れた。誰だ?こんなやつが王都にいたか?しかし、ここにいるという事は入国審査は通っているか。



アオイは入国審査の時に都合良く私の顔パスを利用し、即追放したがなぁ!



しまった。気を立てはいけないな。リラックスリラックス。



「私は錬金勇者ハジメの直属の部下よ。貴方、もしかして傲慢不遜な彼に心ない事を言われたんじゃないかな?」



あのゴーレムが友達。人付き合いが嫌いなハジメに直属の部下。普段であれば疑問に思うのだろうが、アオイに散々要らない呼ばわりされ、気が立っていた私は気にも止めていなかった。



「あぁ、私よりもゴーレムの方がマシだとなぁ!」



「ならさ、その防衛をゴーレムに任せちゃえば良いじゃん」



「それが出来れば苦労はしていない!私はゴーレムを1体遠隔操作する事すらままならないんだぞ」



たとえプロのアルケミストでもこの世界では10体まとめて遠隔操作出来れば良い方でそれ以上数を増やすなら自動にするか強度を落とさなければいけなくなる。



「これ、ハジメ様がもしもの時があった場合に残していた最後の切り札。これがあれば500以上のゴーレムが破壊されるまでずっと活動し続けるわ」



「ご、500だと…?」



ハジメ…お前もか。何故お前らは世界を救う大事な戦いなのに自分自身のことを何も話さないんだ。なぁ、私と意思疎通するのはそんなに嫌か?



「それってことはつまり!」



「これがあれば王都全体を守らせてもお釣りが来る。そうすれば貴方達は彼等に合流出来るわ」



『ハジメ…生意気なクソガキだったけどそんな切り札を遺してくれていたのね…』



「勝手に死んだ事にするな!あいつらはそう簡単に死なないだろう!?」



『死なないとは思うけど…けど全能勇者とミユキは…』



「だからこそ!私達は二度とそのような犠牲を出さないように動かなければならない。そうだろう?」



「うん。私もこれ以上誰かが犠牲にはなって欲しくない。だけど今回の私達はあくまで防衛。これは揺らがないと思う」



「例え大量のゴーレムがフル稼働で王都を守ると言っても…アオイはそれだけで私達を連れて行くとは思えないな」



ゴーレムなんてただの理由付け。私にはどうにも別の理由がありそうな気がしている。



「多分、ゴーレムで補え切れない部分をお前らが補えで終わりだと思う。基本人の感情的な部分を汲み取ったりはしないし…」



「それは簡単よ。聖剣勇者、貴方を連れて行かざるを得ない理由を作れば良いじゃない」



「連れて行かざるを得ない理由?」



「今回封印勇者はミサキを連れて行きたかった。しかし、シオンも連れて行かなければならないと言われ、断念した。しかし、君を連れて行かなければならない相手は必ず存在する。それはどんな時だと思う?」



私でなければいけない相手…?私の魅力…他の勇者には無いスキル…一体何だろうか。



「…思いつかなかったかな?光魔法…でしょ?」



光魔法…確かに言われてみれば光魔法に適性があるのは全能勇者を除けば私だけか。



「高出力の光魔法が必要不可欠。なんて言われたらあの二人は確実に貴方を仲間にするはずよ。良くも悪くも合理的に物を見ているから」



「そっか!たしかにそれならいけるね!…あっ、でもそれって誰が伝えるの?あの二人は根拠のない情報は信じないと思うよ?」



そうだった…確かにそんな光景が目に浮かぶな。『その情報のソースは何処だ?ソースが無いならそれって貴方の戯言ですよね?』『根拠は?いつ誰から聞いたの?まさか貴方の妄言じゃないわよね?』



「明確な情報源…それも手は打ってあるわ。シオン、貴方は図書館の様子をこれから指定する場所で見てなさい」





私だけならなんとか隠せると言われ、連れ込まれたが、本当にここの部屋ならあの二人には見つからないのだろうか。そして今あの二人は何をしているのだ?



『これでサキュバスの座学は終わったし、テストも満点。飲み込みが早くて助かるわ』



『まぁ、ゲームみたいなもんだろう。余裕だ』



あれだけ大量に山積みされた資料を1日足らずで網羅したというのか?なんて記憶力だ…関心が向いている事に関しては異常だな。



『あとは装備をまともにして。その格好は舐めてるとか以前に危険すぎるわ。しっかりと魔法耐性がある服に着替えなさい。ほら』



『すまんな、金無かったんだわ』



『嘘つき。アオイ君が大量に持っているスクロールやその他マジックアイテムや薬草。まともな防具が買えるくらい稼いだでしょ』



『いやいや、マジでピンチなんだ。全く、王都は宿泊費がかかって困る』



私も多少色をつけてお金を渡しただろうに…。そういえば村においてもマジックアイテムを始めとした消耗品をやたら欲しがる割に防具は重いから別の物にしてくれとか言って断っていたな。



『ならどうしてかけるべきところにお金をかけないの?それとも…お金をかける必要が無いって言う方が正しいのかしら?』



『俺はパワーが貧弱すぎるからモンスターを倒せない。倒すにしても汎用武器等で戦わなきゃならない。だから必然的に消耗品のスクロールなんかで金が飛ぶってだけだ。お前らが羨ましいぜ』



『…どうだか。それよりアオイ君の装備の弱さで負けるのは一番最悪。ほら、どれか着ていきなさい。そしてこれで打ち合わせ終わり!あとは明日の早朝。しっかり準備をして攻めに行きましょう』



ムスビメがアオイに防具の候補を渡し、解散する手前…図書館の司書が現れた。なるほどこの司書の女がハジメの部下の仕込みだな。



『あ、あの!一つよろしいですか?』



『ん?あー、俺達もう準備終わったからあとは朝を待つだけなんだわ』



『サキュバスの討伐に行かれるのですか?』



『えぇ、そうよ。貴方には留守番をお願いするわ。ボールペン習字勇者』



『はい、それは構いませんが一つ報告をさせてください』



『報告?』



『先程私の使い魔に偵察をさせたところマッスル勇者のスキルをドレインした肉弾戦最強のサキュバスが産まれてしまったのです』



『肉弾戦最強サキュバス?』




最強の肉弾戦サキュバス?ボールペン習字勇者め…あいつの数多の情報はどこからかき集めているんだ?



『ふむ、松駿のように大半の物理ダメージをほぼほぼカットし、全属性に対して高水準な魔法耐性を持つ彼のスキルを奪ったとなると厄介ね…』



『対策とかは分かったりするか?』



『はい、いくらマッスル勇者のスキルをドレインしようとサキュバスは悪魔。光魔法の耐性までは得られなかったのです。ですから光属性の魔法を操れる仲間を呼ぶ必要があるかと』



『…それならばあえての呪術のプロフェッショナルはいるか?いくら肉体が凄かろうが呪い殺してやろうぜ?』



何故そんな突拍子の無い発想をするんだよ、お前は!素直に光魔法の使い手を探せよ!!



『残念ながら王都にいる女性の中に呪術を使える人はいない。けど光魔法使いならいるわ。良い人がね』



『ほう、それは誰だ?』



やっぱりアミは分かっているなぁ。それに誰が一番かだなんてアオイも分かっているくせに…余程私を認めたくないのか?




『美玲の側近のルミナ。彼女は隠しているけど光魔法が使えるわ。日本人を除けば間違いなく一番の実力よ』



『そうか。ならば採用だ。断ろうが連れて行く!早速行くぞ、亜美!』




「何でなんだよ!?そこは私じゃないのか!?」



「あ、いたのか。シオン。悪いけどお前の席はないよ?」



「何故光魔法が必要とまで来て、どうして私じゃないの!?…あっ、もしかして一度追放した私のことを認められないってわけ?」



「いや、ただ単純に指示とか聞かなそうだし」



「制御できない狂犬を連れて行くよりかは協調性のある人を連れて行く方が私達にとっては都合が良いわ」



お前達…私が個人プレイの傲慢不遜勇者だとでも思っているのか…?




「それとさ…お前とは何処かで必ず噛み合わなくなる。一緒に戦えば中学生の合唱コンクールあるあるレベルの低俗なケンカが起こるのは想像に難くない」



「合唱コンクールだと…?お前こそ何を根拠にそれを…」



「私はもう決めたの。程度の低い人と一緒に組むからあのような事件が起こった。だから選んだのよ。アオイ君をね」



そうだった。封印勇者もアオイのような仲間を選り好みする傾向が強かったよな…。仲間にしていたのも錬金勇者と弓勇者。互いに不干渉を貫いていたというチームでありながらチームではない部隊だったな。



だが、それにしてもだ。何故アオイは選ばれた?あれだけの戦いひとつで選ばれる理由があまり思い浮かばないな。



『うっわ…マジでこんな男のどこが良いわけ?良い趣味してるわね、あんた』



「そうね、少なくとも私とアオイ君は貴方が邪推するような関係ではないわ」



「ふむ、やはり下世話女神だったか。俺とムスビメはお前が想像しているような低俗な関係ではない。言うなればビジネスパートナーだ」



ビジネスパートナー…?お互いの利のためだけに徒党を組んだというわけか。




「あくまで魔王討伐という目的のために力だけ貸す。それだけよ」



「右に同じく。同じ目的を持ち、それに対する考え方もある程度似通っていた。これ以上にない戦力だ」



「なっ…考えが違うだけで引っ込んでいろと!?」



「考えが違うだけ?本当にその程度の認識しかないの?」



先の私の発言を聞いた二人は片や全てに失望しているかのような目を。片や頭の悪い可哀想な人間を見るかのような目を向けていた。



「いいか?なるべく簡単に説明するぞ。勇者というのはなまじ強いだけあって基本イカれた奴しかいないし、ごく一部の例外を除けばどいつもこいつも自分中心で引っ張りたい人間だらけだ」



「それを!お前が!!言うな!!!」



「そんな俺がもしも誰かの指示を聞くとしたらこいつだった。そんだけ」



「そうか、アオイの言い分は分かった。しかしアミ。今までどの勇者とも組まなかったお前はどうしてよりにもよってアオイを仲間にしたんだ」



「私は盗まれた仲間を取り返しただけ。こっちは貴方達に構っていられる程暇じゃないの。じゃあね」



「安心しろ。明日必ずサキュバスを根絶やしにしてくる。だからサキュバスは俺達に任せてお前らは新たな敵を警戒しろ。そして俺達は朝が早い。だから早く寝かせてくれ。じゃあな」



あぁ、そうか。この二人が何故周りの勇者を誰も呼ばないかが分かった。



きっと二人は誰にも期待しておらず、信用していないのだろう。アオイに至ってはシルフィすらも。



だから仲間の戦略に期待値を組み込まない。不確定要素が極力介入する余地の無い最低限遂行可能な行動しかさせないし、更にそれが失敗しても問題が無いように別のプランも可能な限り用意しておく。それこそがあの二人なのだろう。




これ以上抗議しても断固として意見を曲げそうにないな。なら任せるのが最善か。四天王一人の攻略。あの二人に任せても構わないか。



あらゆる状況をシミュレーションし、対抗策を用意する。全くもって問題はないはず。それなのに…嫌な予感がするのは何故なのだろうか。

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