表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

第11話 才能との向き合い方

「は?今何て言った?」



この兜男の突拍子のない発言に私はつい聞き返してしまった。ミサキを引き抜く…だと?



「赤羽美咲を俺の仲間として引き抜きたい。だが、お前らは要らん。帰れ」



「お前なんぞにミサキをやれる訳がないだろう」



「俺はお前みたいな考え無しにミサキの命を預けておけない。お前らはこいつの才能を潰している」



「私が…ミサキの才能を…だと?」



「そうだ。こいつは精霊の力を制御出来ず、戦いであまり活躍出来なかったのではないか?」



痛いところを的確に突いてくるな…悔しいが、奴の言う通りだ。攻撃がからっきしだったから後方支援と回復をメインにしていた。それがミサキの力を縛っていたのか?



「先程の戦いでミサキは水の精霊の力を我が物としてレオルに致命傷を負わせた。それは見ていたか?」



「…そう、お前らはミサキの!真の力の!!1%すら引き出せてねぇんだよ!!」




「俺ならミサキの才能を引き出す事が出来る。他の精霊も同じく力を引き出せれば攻撃も支援もあらゆる敵やシチュエーションに対応出来る最強勇者の完成!人類の勝ちだ。だから貰っていく。簡単だろう?」



奴の言う通りであるのなら…もしかしたらミサキには隠された力が解放出来て、世界を救う重要な役割を担う事になるのかもしれない。



だが、こいつのことは信用ならない。先程から聞いていれば能力が欲しいだけにしか聞こえない。目的のためなら…あるいは使えないのなら躊躇なく切り捨てそうだ。ミサキを預けるなんて出来ない。



「ミサキは私達の仲間だ。どんな理由があろうとも絶対に渡さん。たとえ全て貴様の言い分通りだったにしてもだ!才能があるのなら引き出すのは私の役目だ」




「お前には不可能だと言っている。それが何故分からない」



「貴様!そんなものはやってみなければ—」



「ねぇ、どこの誰か知らないけど…これ以上私の親友を侮辱しないで。それと人に物を言うときは…まず兜取ってから話しなさい!」



私が兜男の胸ぐらを掴もうとしたその時、ミサキは兜男に詰め寄り、兜を取った。



「あっ、お前ちょっと、待てって—…はぁ、マジかぁ…」



兜を取られたその男はばつが悪そうな顔をして、頬をぽりぽりかいている。



「…やはりお前だったか。アオイ」



散々敵を煽り、ありとあらゆる卑怯な手でレオンハルトを葬り、レオルを撤退まで追い込んだ13番目の勇者。青井龍一だ。



「あおちゃん…あおちゃんだよね?」



「あおちゃんだと?」



ミサキは確かに社交的で誰とでもすぐに仲良くなれるタイプの人間だ。だが、初対面の男性に対していきなり馴れ馴れしいあだ名で呼ぶことはない。



「さぁ?何を言っているのやら…とにかく!ミサキさんを俺にください!」



何度言われても。どんな条件を突き出されようとも…絶対渡さない。私が死んでもな。そう、決意を固めていたところアオイは打って変わってなけなしの誠実さを捻り出して丁寧な言葉で懇願してきた。



「当然変なことをするつもりはありません。あくまで私が先程行ったようなサポートやちょっとした技術指導をするだけです。必ず世界は救います。そしてその犠牲も極力出さないように努めます。この二つを達成するには私やシオンの力だけでは圧倒的に足りないです。私の初見殺しはそう何度も通用する手ではありません。下手をすれば次のサキュバスにも勝てないかもしれません」




おい、何だ。さっきまでの不遜な態度は…自分より強い者は存在しないと言わんばかりの傲慢さは何処に行った。負ける…?何故そんな事をわざわざ口に出すのだ。



「貴方方の経緯も聞いてます。魔王も以前に特効仕掛けた時以上の実力を付けているはずです。他の勇者がどこまで信頼に値するかが分からない以上はミサキの力は存分に発揮出来るようにする必要があります。ですから…お願いします。ミサキを…俺に任せてはくれないでしょうか…認めてはくれませんか?」




「さっきからその妙な言い回しをやめろ!私は結婚に断固反対する頑固親父か何かか!!」



柄にもなく真面目かと思いきや…こいつはどこかでふざけなければ死ぬ病にでもかかっているのだろうか。



「私、信じてみるよ。あおちゃんのこと」



「よっしゃぁぁぁぁ!!言質取ったりぃぃぃぃ!!」



やはりクズだった。一瞬で態度を改め、してやったりとでも言いたげな人を不快にさせる笑みでこちらを見ている。



…そうか。アオイとは何やら顔見知りらしいし、ミサキも信頼できるのなら私がこれ以上束縛するのは…




「ただし!条件があります!あおちゃんはもっとシオンちゃんと仲良くしてください!!それが条件!」



「…なぁ、お前俺の話聞いてたか?」



「あおちゃんが私の才能を引き出してくれるって事でしょ?」



やはりミサキは私達の味方だった。アオイは珍しくぽかんと間の抜けた表情になり、焦ってミサキに確認を取る。



「要点はそこじゃねぇよ。俺に着くかシオンに着くかって話をしてんだ!そこが一番大事なんだよ!」



「私はあおちゃんとシオンちゃんが仲良く協力した方が良いと思う!」



「俺はミサキはシオンの管理下から逃れ、俺が選抜する精鋭パーティに入るべきだと思う。俺とあいつが分かり合う事などない」



「そんなことないよ!仲良くしようよ!ほら、シオンちゃんも!」



「無理だな。貴様のような卑怯者にミサキは任せておけん。お前はいつかミサキにも見切りを付けるのだろう?私にそうしたように」



私が最も信用ならない点はそこだ。仮にミサキステータスは優秀だとして、凄まじい強さを持っていたとしよう。だが、アオイの気まぐれ一つでミサキが捨てられる可能性があるという事だ。



ミサキは戦闘向きの性格をしていない。そのせいで切られる可能性は高いだろう。無論、そうでなくとも渡して良いとはならないがな。



「お前のようななりゆきテンプレ俺TUEEE勇者とミサキを一緒にするな。貴様のような量産型と組めば間違いなく魔王に勝てない。お前の力は必要な時には利用するが、お前の仲間にはなりたくはない」



「貴様こそ最近よくいる斜に構えた若者の良い例だな。友達いるか?」



「そういうお前は妙に高圧的かつ偉そうで何かとデカい態度を取って敵を作るタイプだろ。友達いるか?」



「貴様よりはな…」



「俺もお前よりはいると思うんだけどなぁ〜!」



アオイに乗って、ついレベルの低い言い争いをしていたところにミサキが割って入り、アオイに話しかける。



「あおちゃん。ここは私に免じて引いてくれないかな?」



「…分かった。そこまで言うなら致し方ない」



ミサキが懇願するようにアオイを見つめるとおもむろにため息をつきながらしぶしぶ承諾した。



あの人の弱点を見つけようものなら執拗に。相手の精神がボロボロになるまで叩くアオイが口をつぐむ…だと…?



「なぁ、一つ気になるんだが…」



「何だ?」



「お前達はどういう関係なんだ?」



アオイが素直に指示を聞くだなんてありえない光景だった。それを可能にする並々ならぬ関係があるのだろうか。



「…初対面だ」



「あおちゃんは私のファンクラブの1番なんだよ!」



アオイが堂々と嘘を吐く一方で素直に答えるミサキ。…ただのファンか。



「…は?何故それを知ってる」



アオイがいつにもなく間の抜けた表情でミサキに問いかける。



「ごめんね、1番だけの限定直筆サインを封入した時につい…出来心で会員証の名前を見ちゃったの…」




「だが、それだけでブルーアイだとは分からないはずだ。同業者は山ほどいる」



貴様のような煽りカス野郎が跋扈しているとかこの世の終わりか!?と突っ込みたい衝動に駆られたが、今は話を遮る場面ではない。自重するか。



「あおちゃん、私が欲しいものリストに昔のゲームソフトを載せた時の話は覚えてる?」



「あぁ、知ってるとも。今買えば万はくだらないゲームをお前の心優しいリスナーがくれたんだろ?」



「うん。それで届いたデータを見た時、名前がブルーアイだったの…これって偶然かな?」



「そ、そんな物では俺が送り主という証拠にはならな—」



「極め付けはブルーアイの去年の配信で使っていたデータと中身が一致していたこと!そして中の取り扱い説明書に…名前がフルネームでバッチリ書いてあったこと!それで全部分かったの」



「…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



アオイはただひたすらに頭を地面に打ち付けていた。

人を散々煽りまくっておきながら忙しいやつだな。



「…なぁ、シオン。とりあえず死んでいいか?日本には様々な自殺スポットがあるだろう?この世界には何処か良い場所はないか…?魔王城か?魔王城に行けばいいんか?」



そしてアオイは自暴自棄になり、この世の終わりの様な顔をしていた。



…いや、ダメだろう!流石に私が止めなかったばかりに死者を出させるわけにはいかん!たとえそれがアオイだろうと!



「お、おい!落ち着け!お前はミサキのファンなのだろう!?そんなお前が!ミサキを置いて何もかもを放り出すと言うのか!」



「はっ…そうだった。推しの命を守れるなんざ一生に一度来るか来ないかの大役。…そして言質とりましたよ。お義父さん。必ずやお子さんを最強の勇者にして見せましょう」



そう言い放つと先程の態度とは打って変わって澄んだ瞳をしている。本当に忙しい奴だな。なんだ、この男は。



いいや、待て…つい聞き逃していたが…



「だから私は結婚に反対する父親ではない!!」



「はいはい、それと話は変わるが…お前、部下の教育どうなってんの?」



「部下の…教育?」



「お姉様達に擦り寄る不届き者ですわね!ここで今!成敗してやりますわ!」



「ほら、こいつ。見るまでもないけどさ」



言葉通り見てすらいないのに右にほんの少しだけ身体をズラし、振り下ろされた剣を避ける。それも物すごく気怠げに欠伸をしながら。



「な、生意気な…次で確実に仕留めてやりますわ!」



「どなたかは存じ上げてないが、覚えておくといい」



「『日本人は異世界にて最強!!』」



「…いつまでその減らず口が叩けるか見物ですわね!」



異世界人にとって日本人はあまり良く思われていない。少なくとも私達が転移した世界では。



自分は神々に選ばれた勇者だと言い、横柄な態度を取る勇者が少なからず存在しているからだ。



国民から搾取した金を酒、女、ギャンブルに費やす者もいれば男や財宝にしか興味が無い女勇者。他にも挙げればキリがないが、傍から見ればいきなり何処からともなくやって来た異界の人間達が国を牛耳ったのだ。当然国のお偉いさんや戦士達は面白くない。



そんな事を知ってか知らずかアオイはライムを執拗に刺激する。挑発する材料としては十分すぎる。



「てめぇらは雑魚狩りや遺体処理、物質調達でもやってな、現地人!!」



「待って!あおちゃんは敵じゃないって!」



ミサキが呼びかけるもアオイは聞こえないフリをしているのか軽くジャンプし、手をぶらぶらさせてウォーミングアップをしている。



「…まぁ、いいだろう。遊んでやるよ。かかってきな」



「さっきから…言わせておけば!」



ライムのやつ…あんなに早く剣を振る事が出来たのか。



「自分が見せ物になっていると気づかないとは実に滑稽だぞ、アイムくぅぅん!子供のチャンバラごっこに付き合ってやれる程俺は優しくないぞ」




見せ物。そう、まさしくそうなっていると言わざるを得ない光景だった。ライムは必死に剣を振るうもアオイは必要最低限の動きのみで全て回避する。



「ライムですわ!」



再び剣でなぎ払うが、それも虚しく空を斬る。だが、ライムは最初から剣を当てようとはしていなかった。

アオイもそれが分かっていたのか刃が眼前にあっても一歩も引いていない。だが、彼女の狙いは剣ではないと口元を見て悟った。もしかして…



「ラピッド・ファイア!」



空けた左手から火の玉が数多の方向に放たれた。ライムは数少ない複数属性の適性者だ。その才能は鍛えれば剣術に関しても魔法に関しても王都で5本の指に入るだろう。

私達勇者を除けば…だが。しかし、それでも私達に追随するレベルにはなりうるだろう。至近距離から炎の拡散弾。全回避は不可能だと思ったが…



「ダメだな。当てない事が分かりきっている攻撃など別の目的がありますって言ってるようなもんだぞ。ケイムくん」



それすらもアオイは軽々と回避する。おまけに短距離瞬間移動は使わずに自らの反射神経のみでかわし、ライムに肉迫する。



私にはどうもあいつの力の正体が分からない。プロの陸上選手の反射速度は速い方で大体0.13秒。と、聞いたことがある。あれはそれを遥かに超えている。もしかして人間の限界を遥かに超越した反射神経を与えられたのか?



「『アクア・バレット!』」



「ふふ…アオイさんとやら…今、何かしましたか?痛くも痒くもありませんわよ?こんなもので勝ったつもりでして?」



「今のが上位魔法だったら致命傷だったなぁ?一応これでも手加減はしてたんだ。だが…もうやめとけ。だが、それでも挑むってならお前の無謀さに敬意を評して全力を出してあげなくもないよ?テイムくぅぅぅん!」



「上等ですわ。私の全力をここで今見せてあげますわ」



「よく言ったな、タヒチくぅん!!お前の心も身体も全部ぶっ壊してやんよ!!」



「もう一箇所も合ってないではありませんか!ふざけるのも大概にしなさいな!」



相変わらず他者を見下した不遜な態度は崩さず、服の中に仕込んでいたであろう巻物を4本取り出す。



アオイは本当に巻物を使うのか…?巻物を戦闘に使う者などほとんどいない。何故なら自分で詠唱する方が明らかに効率が良い上に応用が利くからだ。わざわざ使い捨ての巻物を使う状況などない。



だからこそそれを使ってくる辺り嫌な予感しかしない。



「そこまで!二人ともストップ!」



「ダメか?」



「うん、絶対ダメ。あおちゃん、心折るまでやるでしょ」




「やるよ。こいつの自尊心を粉々にするまで」



これを真顔で言っているのだから本当にヤバいやつだ。サイコパスが極まっている。



「それがダメなの!」



「待ってください、お姉様!私がこんな男一人に負けるとでもお思いですか!?」



「うん、負けるよ。絶対負ける。あおちゃんは負ける試合は絶対にしない。負ける試合ならもう逃げてる。そしてライムちゃんやシオンちゃんが考えている10倍策略を巡らせている」



「緑は〜!不人気の〜!緑ぃぃぃぃぃぃぃ!!」



「あれが本当に策略考えている人ですの…?お姉様は私があんなのに負けると本気でお思いですか?」



「ライムちゃん、一つだけアドバイスするよ。…何が起こっても絶対油断しないでね」



「当然!アオイさんとやら!貴方の強さ…今ここで証明してくださいな!!…フレイム・テンペスト!!」



火属性と風属性の合わせ技。炎の竜巻を発生させ、周囲の物を飲み込んでいく。




「おいおいおい!ちょっとは手加減しろよ!!当たったら確実に死ぬだろ!」




「そうとも限りませんわ。これを無傷で受けられる人もいるくらいですし。もっとも…貴方自身や服に高度な魔法耐性があれば…ですけどね」



そう彼女は言うが、あれを無効化出来る程レベルの高い耐性を持つのは私のギフトである鎧や竜化したドラゴン勇者。マッスル勇者ぐらいだ。



大半の勇者は回避や阻止に回る。他の勇者にも耐性に優れた者は何人もいるが、あれに当たってわずかなダメージで済ませるのは難しい。



「え、ちょっと待って!速い!速すぎだって!これどこまで追ってくんの!?ヤバい、待って!助け—うぉぉぉぉぉぉ!!もう…やめるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




「どこまで追ってくる?愚問ですわね。貴方の心と肉体を徹底的にへし折るまでに決まっているでしょう」




炎の竜巻は万物を巻き込み、やがて一人の人影が呑まれ、中で蹂躙される様が…待て、アオイがやられている!?



「ライム、早く解除しろ!ミサキは手当てに回れ!」



「助けてくれぇぇぇ!!」



「えぇ、そろそろ解放してあげましょうか…」



「ねぇ、あの竜巻の中にいるにしては妙に声が大きく聞こえない?」



「気のせいですわ。あれを食らって無事で済む訳がないのですから」



違和感を感じる。何か凄い違和感が。早く気づかなければ…!それなのに私達は違和感の正体に気づくのがあまりにも遅すぎた。



「…な、何ですの…これ」



炎に焼かれ、竜巻に全身を切り刻まれ、落ちてきたのは私達が倒した犬の獣人だった。



「ミサキ、お前は手当てに回れ。ただし、こいつのな」



「な、何故貴方がここに…きゃっ!」



ライムがあっけに取られている隙に乗じてアオイは巻物を開ける。巻物の中身はさっきと同じ『アクア・バレット』か。先程無効化されたようにライムの鎧には私の鎧程ではないが、全体的にバランス良く高水準の魔法耐性がある。アオイは0距離で放ったようだが、ライムの鎧にはわずかな痕すら残っていない。せいぜい鎧に水が滴り、髪を多少濡らしただけだった。



「だからお前は死体処理しろって言ったじゃん。有効活用させて貰ったぜ」



「それにしても魔法耐性という奴は厄介だな。だが、しかし!いくら耐性があろうと水には濡れるはず。だから今回は水浴びの刑で勘弁してやろう」



「何を…すぐに反撃してやりますわ!」



「はぁ…よく現状を見ろ」



「なっ!」



「…ま、参りました…私の負けですわ」



「何だって!?よく聞こえんなぁ!」



「参りました!!私の負けで—」



「ほら、痛くも痒くもありません!だっけか?さて、まずは4ついってみようか!」



「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」



ライムの叫び声も虚しく、アオイの水浴びの刑が執行されてしまった。




そこからのアオイは外道の極みだった。ダメージが全く通らない事を良いことに無抵抗のライムに大量の『アクア・バレット』を浴びせた。



「さ、最低ですわ…負けを認めたのに…」



「命拾いしたな。魔物を殲滅するのに降伏を聞き入れる必要などない。降伏とは勝利ではない。次の確実な敗北に繋がるかもしれない。油断するな」



「覚えておくといい。敵は降伏させてからが本番だ。手を緩めるな。二度と煽らせないよう念入りに潰せ」



「あおちゃん!いくら何でもこれはあんまりだよ!」



やはりこれにはミサキも怒るか。ふっ、そのまま嫌われてしまえば良いのに。



「ダメージ与えてないじゃん。自慢の鎧と才能様がこんなゴミみてぇな初級魔法のダメージを全カットしてくれたじゃん」



「でも!ライムちゃん泣いちゃったじゃん!どうしてもっと手加減しなかったの!」



「な、泣いてなんか…へくしっ!」



「殺そうとしてきた奴に対して水をしこたまぶっかける程度で済ませてやったんだ。むしろ俺の寛大な対応に対して感涙に咽び泣いてくれてもいいんだぜ?」



殺そうとしていた。それは事実だし、それに対して大したお咎めが無いというのは言われてみれば寛大な対応かもしれない。自分から言ってさえいなければ。



「殺して…やりますわ…殺してやりますわ!!」



「おっと、やめときたまえよ。ラァァイムくぅぅん!水浸し状態で土属性魔法をくらって体中泥まみれになりたいか?それともアサルト・サンダーで多少痛い目に遭いたいか?」



「まぁ、よくある定番コンボだよね…」



「あの程度でライムが屈服する可能性は低かったからな。隙を見て、切りかかってきた時に有利に戦えるために仕掛けておいた…って言っても布石にしてはお粗末すぎるがな」




「やーい、やーい。ハイムくんさぁ!ほれ、自慢の炎出してみれば〜?まぁ、暖をとるくらいにしか使えんだろうがな。きゃっきゃっきゃっ」




「きゃっきゃっ…痛っ!何するんだよ!」



「あれはライムちゃんが仕掛けた戦いだから多少は目を瞑っていたけど…流石にやりすぎ」



アオイのやつめ。ミサキに思い切り耳を引っ張られているな。良い気味だ。このまま信頼が地の底まで落ちてしまえばいいのに。



「そんなに私とシオンちゃん達を切り離したいの?」



「別に交友関係にまでは口出ししないさ。ただこいつらに命預けるのはやめとけって話」



「分かった。あおちゃん、それなら取引しない?」



「取引?」



突如ミサキが普段発しないような言葉に私は首をかしげる。何を言い出すつもりなんだ?



「あおちゃんには私の1週間をあげる。その時間で2種類…いや、3種類の精霊を私が使えるようになったらあおちゃんの勝ち。貴方だけの仲間になる」



「待て、ミサキ!正気か!?」



突拍子もなく危ない提案をするミサキに待ったをかけるが、それでもミサキは止まらない。



「うん、本気だよ。ただし!あおちゃんが条件を達成出来なければ私の仲間になってもらいます!そして私の言うことに従うこと!」



「よし、乗った。水の精霊の次は火の精霊、風の精霊、雷の精霊…辺りか?」



「違うよ?水の精霊を操れたのはあおちゃんが裏から上手く操っていたからでしょ?水の精霊も完璧に使えるようにしてね」



そう…なのか?



…って、という事はつまり!アオイはハッタリかまして口から出まかせを言っていたということか!?



「…おいおい、あれを見抜くとは…オーケーだ。明日から俺流の指導ってもんを見せてやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ