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安全な道は?

「すぅ…………はぁ…………」


 上空の索敵を雄二に任せた俺は深呼吸を一つした後、変わったであろう状況を再確認するためにアラウンドサーチを使う。

 脳内に波が広がると同時に早速いくつもの赤い光点が浮かび上がり、真っ直ぐこちらに向かってくるのが見えた。

 しかも、その数はどんどん増えていき、ありとあらゆる方角から、まるで俺たちをこの森から絶対に逃がさないという大いなる意思が働いているのではないか思うほどの速さで、包囲網が敷かれはじめていた。


「…………」


 この状況は非常にマズイ。何がマズいって、包囲網が完全に出来てしまっては敵と戦わずにこの森を抜けるのが不可能になってしまうからだ。

 その理由として俺たち三人は、今まで複数人を相手にしての戦闘を行ったことはない。

 いや、その言い方には少し語弊があるかもしれない。

 グラディエーター・レジェンズは九十九人が争うバトルロイヤルなのだから、複数人と戦った経験はそれなりにある。

 だが、それはあくまでゲーム内の出来事であり、さらには戦う相手の情報がある程度わかり、その対策法を講じた上で戦ったことしかない。

 そして何より、その戦いは俺たちの代わりにゲーム内のアバターが戦うという命を賭けた戦いではなかった。


 もし戦いになったら、俺たちは確実にテオさんたちの足を引っ張ることことになる。


 その所為でテオさんたちに迷惑かけるだけでなく、命の危機に晒すような状況にならないためにも、ここでの俺の指示はかなり重要なものとなる。

 ここで失敗するわけにはいかないと、俺は地図を手にすると、ボウガンの準備をしているテオさんアドバイスを求めることにする。


「テオさん、かなりの敵が全包囲からやって来ます」

「ほう、何処から来る敵が多い?」

「出口に一番近い北が一番です。次は……」


 俺はアラウンドサーチで見た敵の大まかな位置をテオさんに伝えていく。


「聖域の方からは元々魔物が少ないせいか、殆どこっちからは来ないようです。一旦、聖域まで戻りますか?」

「それが最も安全だが、そうなると今日中に帰れなくなるな……」


 テオさんは「う~ん」と唸り声を上げなら地図を何度も指でなぞりながら最適のルートを模索していく。


「よしっ!」


 どうやら考えがまとまったようで、テオさんは地図に書かれたいくつかの出口の中から二つを選んで俺に指示を出す。


「ここだ。もしくはここの出口に向かおう」


 そう言って指差す先は、最短の出口である真北からやや西にずれた細い道の出口と、一見すると大量の魔物が現れそうな広い道の出口だった。


「ここなら街からそんなに遠くないし、狭い方は魔物たちが潜むには地形的に難しく、広い方は近づかれる前に通り抜けられる可能性がある。どちらを進むかは、その時の状況を見てコーイチが判断してエイラに指示を出してくれ」

「……わかりました。ここですね」


 その二か所は、最短の出口の近くとあって魔物が集まっている個所ではあるが、テオさんがそこでいけると判断したのならば、それに従うべきだろう。


「それじゃあ、後はどちらから敵が来るか逐一報告しますから……」

「ああ、そいつはワシが蹴散らしやるから任せておけ」


 そう言うと、テオさんは馬車から身を乗り出すと、いきなり空に向かってボウガンを放つ。

 放たれた矢は『ピィィィィッ!』という甲高い音を響かせながら飛んでいき、上空でパンと破裂する。

 何の説明もなしに放たれた矢に、俺は思わず呆気に取られてしまうが、すぐに気を取り直してテオさんに質問する。


「テ、テオさん……今のは?」

「ああ、今のは先端が笛になっていてある程度飛ぶと破裂するという特性の矢でな。どうせ魔物たちに居場所がバレているんだ。だったらこっちも盛大に仲間を呼んでやろうと思ってな」


 今放った矢で、グランドの街にいるテオさんの仲間たちに自分たちが危機的状況に陥っていることを知らせることができるという。


「さあ、これで後は森を無事に抜けるだけだ。全員協力して絶対に生き延びるぞ!」

「「「「はい!」」」


 テオさんの呼びかけに、エイラさんも含む俺たち四人は、腹から声を出して返事を返すと、各々に与えられた職務を全うするために行動を開始する。

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