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反転攻勢

 どうやら泰三一人ではメガロスパイダーを倒し切れなくて、クラベリナさんに手伝ってもらったようだ。


 改めて対峙してわかったが、メガロスパイダーは決して容易に倒せるような魔物ではなく、自警団の面々が負傷者が出ないように立ち回り続けることがどれだけ難しく、立派だったかを痛感した。


 泰三ほどの実力と、自由騎士の力があったとしても一人では倒せなかったのだ。

 ラドロさんとネロさん、そして二羽のトントバーニィという規格外の仲間が来てくれなかったら、メガロスパイダーはもちろん、アラクネを倒すことができただろうか?


 絶対勝てなかったとは思わないが、それでも流石に一人であの魔物に挑むのは少々蛮勇だったようだ。


「あっ……」


 同じことを思ったのか、俺と目が合った泰三は苦笑を漏らして小さくかぶりを振る。


 異世界生活はままならない。


 もう二年近くこの世界で過ごしてきたが、お互いにまだまだ一人立ちする日は遠そうだ。


 だけどこれでサイクロプスにメガロスパイダー、そしてアラクネといった数々の強敵を倒したのだ。

 流石にこれ以上の強敵は勘弁願いたいし、そろそろこちらも反撃に打って出たい。


 ひとまず魔物たちを退けることに成功したようで、エルフ、獣人の戦士たちと自警団たちがそれぞれに別れて損傷状況などをチェックしている。


「……いかんな」

「いけませんわね」


 すると、俺の右にクラベリナさんが、左にフィーロ様がやって来て同じように腕を組んで立つ。


「命を賭けて戦うのに壁を感じるのはよくないな。そう思わないか、コーイチ?」

「せっかく外から命懸けで救援に来て下さったのに、よそよそしいのは感心しませんわね。ねえ、コーイチ?」

「「……ん?」」


 俺を挟んで勝手に会話を始めた二人の視線が交錯する。


「フッ、どうやら私と志を共にする同士がいたようだな」

「ええ、話が早くて助かりますわ」


 同氏を見つけた女性たちは、俺を押し退けて手を差し伸べ合う。


「クラベリナだ。自警団の団長をやっている」

「フィーロですわ。エルフの姫として自警団の皆様を歓迎いたします」


 固く握手を交わした二人は、それぞれに別れている二つの集団を一つにまとめるべく、議論を交わしながら去っていく。


「あ、あの……」


 話しかけられたと思ったら、自己完結されてしまったんだけど……、


 俺もクラベリナさんたちと同じように、二つ組織が仲良くなることは賛成だし、勝手に解決してくれたのなら非常にありがたいのだが、何だか空しい気持ちだ。


「コーイチ、落ち込んでいる場合ではありませんよ」


 所在なさげに佇む俺に、二羽のトントバーニィを抱えたネロさんが話しかけてくる。


「私とラドロもここでは知り合いが誰もいないのです。今後の作戦のためにも、我々の紹介もお願いします」

「あっ、わかりました」


 助っ人として参戦してくれた人たちは、基本的に俺と三姉妹しか知らないのだ。

 円滑なコミュニケーションを取るためにも、俺が積極的に橋渡し役として動かなければならない。


「それじゃあ、まずは俺の親友から紹介しますよ」


 そう言って俺は、こちらにやって来た泰三を紹介するため二人と二羽を引き連れて歩き出した。



 簡単に自己紹介をした俺たちは、そこから怒涛の反撃へと打って出る。


「さあ、お前たち、お姉さんに続けよ!」


 真っ赤なビキニアーマーのクラベリナさんが叫びながら突撃すると、自警団と獣人の混合軍が突撃していく。


「弾け飛べ!」


 クラベリナさんの突撃に、前衛のリザードマンたちが爆発に巻き込まれたように宙を舞う。

 レイピアという刺突武器を使って、どうして敵が激しく吹き飛ぶのか意味が分からないが、続く獣人たちもクラベリナさんに負けじと、最初の一撃で戸惑いがみえる魔物たちに正面にぶつかっていき、容赦なく排除していく。


「ハッハッハッ! まだまだこんなものじゃないぞ!」


 前衛をあっという間に無効化し、続く一回り大きなリザードマンたちが現れたところで、クラベリナさんが首だけ後ろへ向けて叫ぶ。


「タイゾー、ラドロ!」

「はい!」

「いきます!」


 クラベリナさんに声をかけられた泰三たちが前へと出る。


「ディメンションスラストスロー!」


 登場と同時に投擲された長槍が、三体ものリザードマンを串刺しにしてみせ、


「うおおおおおおおおおおおおおぉぉ!」


 鬼人(オーガ)の力を解放したラドロさんが、重戦車が轢き殺すように体当たりをしてリザードマンたちを次々と吹き飛ばしていく。


「さあ、わたくしたちも続きますわよ!」


 そこへさらにフィーロ様の指示によってエルフたちによる魔法の援護攻撃が加わり、魔物たちを次々と爆散させていく。


「おおっ……」


 腕の中で甘えるようにすり寄って来るそうめんの頭を撫でながら、俺は目の前の光景に目を奪われていた。


 クラベリナさんという指揮をする人間がいるだけで、戦闘がこんなにも変わるとは思わなかった。


 ターロンさんも指揮官として優秀だと思ったが、クラベリナさんはそこに絶対的な戦闘力も加わり、さらに人を煽るような文言も相まって誰もが実力以上の戦闘力を発揮しているように思えた。


「このままいけば、混沌なる者が見えるところまで……」

「いえ、そう簡単にはいかないようです」


 すると、隣でしらたきを抱いていたネロさんから緊張したような声が聞こえる。


「敵の方も、とっておきの魔物を出してきたようです」

「……えっ?」


 ネロさんが指差す先を見やると、他の魔物とは一回り以上も大きな巨大なトカゲの影が見えた。

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