~或る少年~
ふと気が付けば、なんだか体が窮屈なことになっていた。
腕は後ろ手に縛られ、椅子に拘束されている。
顔をあげてあたりを見回せば、どうも使われていない倉庫のようなところに閉じ込められているらしいことがわかった。
(…また、誰かの恨みでもかったのかな…)
最近、ちょっとした嫌がらせが続いていた。物を隠されたり、変な手紙が届いたり。どうもぼくの存在を疎ましく思う人たちがいるらしい。さすがに連れ去られるとは思わなかったが。
学校林の遊歩道を歩いていたところ、背後から襲われてこうなっているようだが、今現在、近くに人の気配は感じられない。どうやら放置されているようだ。
それにぼくのような平民は、攫ったら身代金を要求するより売り飛ばしたほうが金になるはず。しかし、大人しく縛られているわけにも売り飛ばされるわけにもいかない。
(夕方までに戻らないと、さすがにアレクシオス様が気づいちゃうだろうし…)
ここは習ったばかりの縄抜けと開錠の技術を実践するいい機会だと思いなおす。暗部クラスの授業も、もぐりで受けてみるものだ。
縄抜けは魔法科で習った炎で焼き切るだけ。こういう時、魔法は便利だ。外から鍵のかかった扉は魔法で破壊してもいいけど、せっかくなので袖口に仕込んでおいた針金を2本使って開錠を試してみる。
(あ、ホントに開いた。)
体感時間15分。職業選択の幅が広がりそうである。
閉じ込められたところは学校からほど近い倉庫街の一角だった。周りは同じような倉庫ばかりで、実行犯もどこに閉じ込めたかわからなくなるんじゃないかな、と場違いな心配をしてしまった。ここからでもよく見える学校の時計塔の尖塔を目指して歩き出す。
空の感じからすると、まだ寮の夕食には十分間に合う時間のようである。誰が犯人だか首謀者だかわからないので、とりあえず目立たぬように部屋へ戻るのが最優先。時間が許せばアレクシオス様を迎えに行こう。
初投稿で不慣れな点も多々あるかと思いますがここまでお読みいただいたことに感謝申し上げます。
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