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俺の異世界転移は何度目か  作者: 黒猫 犬
第1章 旅への嚆矢
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第1章―3 初見の1日目

 少し進むと森の中に差し掛かった。

 この森は村から見えていたもので、道といった道はない。確かに進むのは厳しいところもあるが、行けなくなるほどでもない。

 特に何事もなく進むので暇だ。

 何かアレシアに話しかけようといていたがどうも話す内容が思い浮かばない。

 そう、悩んでると、アレシアの方から話題が出た。


「ねねぇ、カイトてっ、どこからきたのー?」


 という質問が来た。普通の人なら難なく答えられるだろう。しかし、カイトの場合は違う。ここで本当のことを言うのは簡単だ、けれども今は説明ができない。ここの世界も地理を知らないためまともな嘘もつけないだろう。ならば本当のことを言うべきだ。


「俺は日本って言うところからきた。」


 異世界なのだから地球かどうかも分からない。地球から来たー、って言うのもなにかと抵抗があった。


「ニホンー?聞いたことないなぁ〜、まあ、僕あまり地理については詳しくないからなぁ〜」


 じゃあ、なぜ聞いた―、そう問いただしたくなった。

 しかし、アレシアの性格に救われた部分もある。


「ねぇーねぇー、ニホンてっ、何があるのー?食べ物はー??」


 どうと、アレシアは食い意地が張っており食べ物には興味津々のようだ。


「日本には寿司という食べ物がある!寿司は自分が食べた中でも1番美味しい食べ物だ!」


「スシ…スシ!もう名前を聞くだけでもよだれが出ちゃうよぉ〜」


 アレシアはまるで子供のようにキラキラした眼差しで見つめ、はしゃぎたい気持ちを抑えるように震えている。


「カイトの家に遊びにいこうかなぁ〜」


 こんな美人を家に呼ぶのは万々歳だ、しかし、カイトにそんな勇気はない。現実世界でも女の子と2人で遊んだことは数えるほどしかないからだ。


「そういう、アレシアは出身地はどこだ?」


 今のカイトでは出身地を聞いてもどこにあるかも全く分からない。しかし、話を続けるには何か質問する他に思い浮かばなかった。


「もぉ〜内緒ぉ、女性に出身地を聞くのは失礼だぞぉ!」


 アレシア人差し指を立て顎につけた。


 まだ、女性に年齢や体重を聞くなら失礼にあたるかもしれないが、出身地を聞いただけで失礼になるのはおかしい、よく分からない女性だ。それとも、異世界のせいなのか…。





「しー!………………。今日のご飯だぁ…」


 アレシアは歩いている途中に突然止まった。そして、人差し指を立て閉じた唇に当てた。

 カイトもつられるように足を止める。


 静かにする意味は伝わったが、最後に言ったことが理解できなかった。

 ―飯にしてははやすぎる…


 カイトは周りを見わたしたが特に変わった様子はない。しかし、アレシアだけが違った。さっきまで話していたが嘘のようになり、眉間にしわを寄せ微動だにせず、集中してるように見えた。


 2分くらいその状況が続き、

 静止している水面に水を差すようにアレシアは突然腕につけていたナイフを抜いた。


 その瞬間、アレシアは手を後ろに引き指先だけで持ったナイフを10メートルくらい先の茂みに投げ込んだのだ。

 現実世界にはリボルバーをホルスターから瞬時に抜くと同時に弾丸を放つという早打ちガンマンがあるが、まさにそれのナイフバージョンのようだ。


 ナイフは風を切り、まるで弾丸のように放たれ茂みの中に消えていく。


 カイトは声も出ずにいた。ナイフを投げるまでの動作が無駄なくまるでナイフ投げのショーを間近にしているようだ。ナイフに関しては素人のカイトでも分かるぐらいだ。


 少し経つと、アレシアは先ほど投げられたナイフの元へと駆け寄る。カイトも後を辿るようについっていった。


 進むとナイフのようなものが見え、その光景を見たときカイトは驚きのあまり息を飲んだ。


 ナイフの先には動物、否動物のようなものに刺さっていたのだ。

 急所を一撃ぜ刺されたようでピクリともしない。刺された動物はイノシシとネズミを合わせたようなハッキリ言うと不細工な動物だ。

 そこにも驚いたが、一番驚いたのは命中させたことだ。確かに大きさはあるが、茂みで見えなかったはず。

――まさか、音で聴き当てたのか…

この森には色々な音が混じっているがそれをピンポイントにあたるなどもはや人間業ではない。しかも、10メートルを離れており見えない獲物を一撃必殺など―、不可能に近い芸当だ。


「今日の夜ご飯はもう心配ないねぇ〜」


 アレシアは嬉しそうに言うと、ナイフを引き抜きそこら辺の葉っぱで血を落としてからケースにしまった。


「お、お前本当に、に、人間か?」


 カイトは警戒し、鋭い目で睨むように見ていた。


「これくらい練習すれば、誰でもすぐにできるようになるよぉ〜」


 と言われ、カイトは少しカチンときたが顔には出さないようにしたていた。

 ――こんな芸当、何年やっても身につくものじゃねぇ、 まだ、ナイフは投げられるようになったとしても、あのように離れた獲物に気づくことはできない。


 しかし、このことを見させられてから逆に心強い案内者という、評価に変わった。


 そうこうしているうちにアレシアが先ほど仕留めた獲物の首を落とし血を抜いていた。それから、皮を剥ぎいつでも食べれる状態にしていた。

 とても、見ていられる状態ではない。カイトはグロ耐性はあったが、それをオーバーしていた。


「じゃぁ、これ持ってねぇ〜。甘いものを持つのは男の仕事ぉ〜」


 先ほど裁かれたものを渡された。

 まだ臭く、あれを見せられた後では気がひけるような仕事だった。





            ☆




 日も随分と落ち薄暗くなりこれ以上進むのは危険と判断しここで休むことを決る。

 少し広くなったところの木々を倒し、今日寝れる分くらいのスペースを作った。

 アレシアはそこらへんの小枝を集めていた。それを真ん中に持ってき、バックの中から赤い宝石のようなものを取り出した。

 その宝石を囲むように木々を配置、腰から剣を抜いたと思ったら宝石を叩き割ったのだ。

 宝石はバラバラに飛び散らと同時に火花を起こしていた。

 それらが木々に燃えうつり木を燃やした。焚き火の完成だ。


 今日とった皮の剥がされた物にアレシアが持参している棒を通し、Y字状の木を二本地面に突き刺しその上に置き焼いた。

 まるで、モ○ハンの焼肉のようだ。


 カイトはリアルでそれを見たことに感動をしている。

 アレシアは焼けるのを今か今かと脚をバタつかせまっていた。


「よし、焼けたぞ!」


 と、熱々の丸焼きを日から取り出し葉っぱの上に置いた。

 アレシアはもう待ちきれんと言わんばかりによだれが垂れかけていた。女性としてははしたなく思われるが逆にそこに可愛さが見えた。


 ナイフで切り分けるとアレシアはすぐに食らいついた。

 アレシアが食べ始めるとそこに光がさしたかのように幸福な顔をしていた。それほどお腹が空いていたのだろう。


 食事を終え、あたりが暗くなり光が完全に焚き火の明かりだけになる。

 就寝の準備に入る。美女とこんなところで2人で寝るなど如何わしいイメージが思い浮かんだ。しかし、アレシアにとってはそれはないだろうと思える人物だった。


 寝床を整備すると体を横に倒し寝る準備に入る。

 焚き火は何かの時のため消さずに置いた。焚き火の光が明るいがカイトはそのようなのは気にせず寝られる方だった。


 こうして、アレシアにおやすみの言葉を送ると瞼を閉じ、1日目を静かに終えたのだ。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ――――――――

 ――――

 ――




 日光が眼にさし、ゆっくりと目を開けた。体を起こすと少しだるさが残っていた。

 慣れない環境での生活でストレスが残り快眠ができなかったのだろう。

 立ち上がると手を上にあげ背伸びをした。

 意識をはっきりされるため両手で挟むように自分の頬を叩いた。


「今日も1日頑張るぞ!アレシ…ア?……」


 辺りを見回すが、昨晩まで共に寝ていたアレシアの姿が見つからないのだ。外していたアレシアのポーチも剣も何もかも見当たらないのだ。


 寝ていたところを触り温度を確かめ 「まだ、暖かい…このあたりにいるぞ!探せ!」という場面を期待したが、そう甘くはない。当然寝場所は冷たくまわりに気配がない。もし、そのような場面になったとしてもカイトは分からないだろう。


 最悪の場合、アレシアに見捨てられた可能性が頭の端っこに出てきていた。

 まだ、アレシアを完璧に信用しきってないからこそそのような考えが思い浮かぶ。


 カイトはここから都市に行く自信もないし、村に戻る自信もなかった。

 なんとしてでもアレシアをみつけなければ―、


「やばい、ひーじょーにまずいぞ……」


 カイトは髪の毛を手で掴み丸くなった状態で座り込み考え込んだ。


 遊びでされてるのならまだましだか、本気で置いていかれたら―、というマイナスの方に考えがいく、それだけ、心の余裕がなかった証拠だ。


 ガササッ


 後ろの草むらが聞こえた後で一瞬頭が真っ白になる。


 カイトはさっと立ち上がり、ナイフを抜き取り警戒をした。

 もし、カイト1人ではやばい生き物に鉢合わせしたら、生きて帰れる保証がない。


 緊迫した空気の中、茂みからの音が近寄ってくる。


 次の瞬間、その正体が出てきた。

 カイトは驚き、そして、安心した。

 その正体はよく見覚えのある人物だった。そう、アレシアだ。


「ふっ…ふっ…」


 アレシアそう、不敵な笑みを浮かべ出てきたのだ。






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