2, キス with 体操着
後書き参照。今回は重要かも。
今の心情を表すと、「今期アニメのエロ担当? かのこん? トラブル? いや俺だろ」です。
ネコミミ事件から数分後。さっそくで悪いが神は死んだ。
小学校や中学校ではなかなかお目にかかれない状況だが、高校生活には授業一時間目に『体育』が存在する場合がある。我々寝起きの学生にとっては地獄のような時間でしかないが、今の俺にとってはさらに地獄だ。いや煉獄だろう。
「は〜る〜きゅ〜ん!」
だから誰だよはるきゅんって。きめぇって。
遠くで手を振る女子生徒、もう説明の必要も無いだろう。白鳥準こと準先輩フューチャリングネコミミインザ体操着だ。なんかこうして言葉にして考えてみると、恐ろしいものに見えて仕方が無い。
女子と男子が活動場所が違う。それが航行の体育のあるべき姿であるが、ならば学年が違った場合はどうだろうか。この広いグラウンドだ。体育をするに置いてたまたま違う学年の男女が出くわすのは何ら不思議ではない。不思議ではないが、やはり有り得てはならない。
この意見、まさに俺しか通らないのだが。
周りを見てみれば一目瞭然、クラスメイトの冷たい視線を浴びて冷や汗を流す俺。やめてくれ、あれはどう見たって宇宙人だろ。ミミ生えてるし。
「おいおい、またあいつだよ」「変態だよな、絶対」「準先輩に好かれる男は全員死ね!」「ところでブルマーについてどう思うかね諸君」「美学だと思います」「はぁはぁ準にゃん可愛いよ準にゃん」……あれ、なんかリフレイン。
「はるく〜ん! 前、前ぇ〜!」
……前?
俺は視線を準先輩から離し、そのまま前にぐふぉあっ!?
突如顔面に突撃してきたサッカーボール。そう言えば体育の授業中でした。鼻のてっぺんを突き破るような勢いでサッカーボールが俺の顔面にめり込む。頭蓋がぐわんぐわんと大きく揺れ、視界全体が陽炎のような、テレビの砂嵐のような、良く分からないものに支配される。なんとか足で踏ん張って地に膝を付かないようにしたが、努力もむなしく手の平まで地面とご対面。鼻血ももれなく特典でついてきました。
非常に不味い。このパターン、今の俺には未来予知が出来る。
「は、はるくんっ!?」
遠くから駆け寄ってくる足音がする。そうはさせまいと、俺は感覚も無い腕を上げて準先輩に待ったをかける。
「お、俺のことは良いです。ここは俺に任せて、この先の魔王を討伐してください……」
「ま、魔王って何!? そんなことより鼻血出てるよ!」
「これは歴戦の勇者がもつべき戦の証です。つまりケチャップです。どうですか、素晴らしい演出でしょう。だからここは放って魔王を討伐っていうか自分の授業に戻ってください……」
「でも物凄い膝とかが震えてるよ!」
「武者震いって奴ですよ……やりますね、サッカーボール。俺にここまで大量のケチャップを放出させるなんて、甘くて見ました。今から本気出します。だから準先輩は戻ってください……」
「このケチャップ血の味がするもん! 嘘ついちゃだめ!」
「間違えました。俺そういえばケチャップの代わりに昨日、顔面に輸血パックしこんできたんです。ハリウッド映画のメイク並みの技術を使って今まで隠してきたというのに、失念です。だから準先輩は……」
「これはるくんの血の味だもん。ボクには分かるんだからね!」
なんてこったい。レベルが高すぎてついていねぇよ親方ぁ。あと他人の血は舐めちゃダメですよ準先輩。
次第に意識が遠のいて行く。どうやら思った以上に当たり所が悪かったようだ。あと運動不足のせい。
視界には準先輩の泣き顔……ああ、ご立派に鼻水まで垂らしちゃって。
ギリギリの意識の中、俺は体操着のポケットに入っていたハンカチをようやく取り出して、準先輩の顔に押し当てる。どこに当たったかは分からないが、とりあえず渡せれば良いやと思った。この人、良く泣くけど、涙顔は似合わないんだよなぁ……。
いや、そんなことはどうでもいい。本当にどうでもいい。俺が最後に意識がある中でやらなければならないのはこんなことではない。
「じゅ、準先輩……お願いが、あるんです」
「な、何? キス? キスしてほしいの?」
今そんなことされたら死にますし、そんなこと思わせぶりな発言もしてません。
「お、俺が、目覚めた時、に」
「目覚めた時に? 何? ボクが裸で隣で寝てると良いなって?」
準先輩。実はあなた、俺のこと心配して無いんじゃないですか?
「変なことを……」
「変なこと? それなら大丈夫! ボクの準備はいつでもおっけーだから! お財布の中にちゃんとアレも用意してあるし、はるくんが心配することじゃないよ!」
まずい。怒涛の切り返しに言葉が紡ぎだされなくなってきた。勢いに負けるな俺。この程度、いつものことじゃないか。俺の状態がいつものものじゃないけどさ。
「しない……で」
「竹刀で!? そ、そんなっ。はるくんがそういうのが好きだなんて知らなかった……。でも良いよ、ボクははるくんのためだった受けでも攻めでもやってあげるから! で、どっち!?」
拝啓、日本の皆様へ。
祖国語というのはとても大切です。将来のためには役に立たない、覚えていても価値がない、などと嫌っていてはいけません。このように、会話する両者のうちどちらかが祖国語を勉強していないだけで、会話のキャッチボールが成り立たなくなり、相手を不快にさせてしまうことがあるかもしれないからです。
文脈から相手の気持ちを正しく読み取って、相手にとっても、自分にとっても気持ちの良い祖国語を学びましょう。
以上、俺からのお願いでした。
「……ガクッ」
あ、天国おばあちゃん。今日からいつでも一緒だネ☆
「は、はるくん? どうしたのはるくん? ねぇ、目を開けてよ? 返事をしてよ? はるくーーん!!」
――――
かくして俺は勇者が魔王を討伐するための一つの駒となり、空に消えたのだった。
という現実逃避をやめ、俺は意識を覚醒させる。激しい頭痛と瞼を開けてもいないのに襲ってくる眩暈。相当なダメージを頭に負ったようだった。歯を食いしばって、眉間周辺に力を込める。加えてなんだか異様に息が荒い。気絶すると呼吸困難に陥るなどという話はそう聞かないが……不慮の自体だ、有り得ない話ではないだろう。
ぐらっと頭が傾いたかと思えば、抵抗する手段も気力も無く、そのまま何かやわらかいものの上に倒れこんでしまった。
「こ、こらダメだよ! まだ安静にしてないと」
頭上から声がする。随分と聞きなれた声のように感じるが、誰だったか思い出せない。どうやら意識はまだ闇の中に足を突っ込んでいるようだ。
ところでこの、なんだろうか、俺が顔を押付けているベッドにしてはやわらか過ぎるものは。やわらかいに加えてなんだか人温かく、きめ細かくすべすべしているようにも思える。
……いや待て、冷静になろうか俺。
動かしかけた首を自らの筋肉でがっちりとホールドし、壊れたロボットのように微塵も動かなくする。これはきっと動いたら負けなのだろうと俺は一瞬にして悟った。
某ラブコメのベタ展開として上げられる、いわゆる一種の「やっちゃったぜ事故」に遭遇するわけには行かない。記憶を巡れば簡単なことだ。先ほど聞こえた声が準先輩であることは間違いなく、ならばこの俺がのっかっているものは……。
「んふふ〜。ボクの膝枕、気持ちいい?」
……そういうことだ。
……どういうことだ? 何故俺は準先輩に膝枕されている。頭上を見上げれば体操着姿の準先輩。下から見上げたその双房はまさに度迫力で、汗のせいで服が張り付いており、形がくっきりと確認できる。さらにその奥には白い体操着と対を成す色をした下着が垣間見れる。
脳天に神経を集中させればとても危険な区域に遭遇することが出来そうだ。運動で地味に引き締まっているふとももが俺の頬を挟むようにして配置されている。色っぽい状態でもあるが、言えば『捕食』されました。
サッカーボールでノックダウンしたところまでは記憶がある。ならば、何故俺は保健室でぐっすりと惰眠をむさぼっていない。というか今何時間目?
「もう三時間目の授業が始まっちゃってる頃だと思うよ?」
「……先輩、授業は?」
「いやー、はるくんがあまりに可愛い寝顔を見せてくれるから、そのまま200回くらいキスしてたらなんだかどうでも良くなっちゃって」
「何してんすか!?」
俺は慌てて頬やら額やら唇やらをチェックする。しかし、そこには誰かが何かで触れたような形跡は無い。ちなみに頭は準先輩の膝の上のままだ。動けないし、動きたくももない。
「もう、冗談だよはるくん。いくらボクでもそんな気がおかしくなったみたいなことはしないよ〜」
有り得ない話じゃないから恐いんです。
「でも、その、ね、あまりに可愛かったから、ちょっとだけ、違うことやっちゃった……」
ほら、裏がある。ていうかそんなに赤面しないで下さい。
準先輩はもじもじとふとももを擦り合せた。その上には俺の頭があるわけで、その素肌に触れている部分がなんとも言えない感触に襲われる。ぶっちゃけ恥ずかしいのは俺も同じです。
逃げようと頭を上げようとするが、その洞察力は鬼の如し、準先輩に一瞬にして定位置に戻される。しかも赤面したままで。
「な、何を、したんですか」
逃げることは挫折し、震える声でそう聞いた。
「その……口で言うのは恥ずかしいから、今から同じことやってもいい?」
前言撤回! 逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ!!
急いでこの檻から逃げようとするが、時既に遅し。頬に優しく素手を当てられ俺はノックダウン。背筋に桃色の衝撃が走る。熱いまなざしと俺の視線が交錯する。準先輩の世界に引き込まれたように一気に身体から力が抜けた。
「はるくんがイケナイんだ……こんなにボクを夢中にさせるから……」
準先輩は全ての責任やその他もろもろを押付けるようにして――俺の唇に自分のそれを重ねた。
「……っ!? んむっ!?」
重ねた、などと優しいものではなかった。貪るように、それこそ捕らえた獲物に喰らい付く様に唇と舌で俺の口内を犯す。準先輩の狂おしいほどの好意が唾液とともに俺の中に流れてくる。その恐ろしい感情の量に、心が捻り潰されそうだった。流石の俺も頭の中で物事を考えることを放棄した。
口内で舌が暴れ回る。全てを奪いに来たとでも言いたげなほどに攻撃的だ。時折感じる準先輩の香りにどんどん脳内が侵食されて行く。ぐちゅぐちゅと絡み合うたびに卑猥な音が聞こえる。俺の聴力は自然とそちらに向かっていた。
しばらくそうしていると、準先輩が一度呼吸を整えるためか、俺の唇から口惜しそうに離れた。離れたところには俺と準先輩を繋いでいる銀色の細い糸が引いた。準先輩はそれを愛しそうに眺め、艶美な微笑を零すと口元を舌で舐め取った。
「はるくんが口を切ってたから、こうやって消毒してあげたの」
驚きとある種の気持ちよさで俺は言葉が利けなかった。ただ坦々と、妙に大人な表情をした準先輩を眺めていた。
「このネコミミのおかげなのかな。いつもよりも、もっと、もっとはるくんを好きでいられる気がする……」
そうか、そのミミのせいなのか。
確かに準先輩は過激なほどのスキンシップをしてくるが、いくらなんでもここまでの行為はしなかった。キスも初めてではなかったが、こんなに深くしてくることもなかった。
もしも本当に準先輩をここまでしてしまったのがネコミミのせいだと言うのならば、俺は全力でネコミミを恨みたい。
……タイミングが悪すぎるんだよ、クソッ。
「俺は……俺は先輩に――」
その時、校内から授業終了のベルが鳴った。俺の言葉は遮られ、準先輩に届くことは無かった。俺には、言わなきゃならないことがあるのに。
そんな気持ちを汲む仕草など片鱗も見せず、準先輩は満面の笑みで言った。
「もうお楽しみタイムは終わり! 先生に怒られるとイヤだから帰ろっか、はるくん!」
楽しそうで、嬉しそうで、幸せそうな準先輩の顔を見ていたらなんだかどうでもよくなってきた。成せば成る、時の流れに身を任せるとしよう。
「ところで準先輩、三時間目がどうのこうのって言ってましたが、まさかとは思いますが先生には一言……?」
「なーんにも言ってないよ?」
ですよねー。
まあ、生涯初の体操着状態での膝枕を堪能したからここは俺が一歩引くことにした。
どうも蜻蛉です。
書いている途中、「あれ?これ官能小説(ry」なんて葛藤を開始してましたが、もう放置することにしました。子どもには見れない作品に仕上がる可能性も否定できません。
この作品ですが、恐らくよくある80話とかそんくらい続いている作品のようにはならず、あくまで「描写の勉強」に使っているために6話前後での完結となります。更新速度は最高で一日ペース、最悪で一週間辺りかと。
まあ、「こんなのも書いて欲しい!」なんてシチュがありましたら場合によってはリクに答えないことも無いですが。
あとは作家紹介のHOMEからブログ飛べるようにしました。
では、次回でお会いしましょう。