予感と予兆
「はっはっはっは!無理だね。勇者様は基本誰とも会いたがらないから。意地悪じゃなくて、魔獣退治者の常識さ」
そんなに勇者に会いたがる人が珍しかったのか、豪快に笑われた俺は、頬を熱くさせながらもいや、と言葉を続ける。
「それなら矢野・・・」
矢野窮真。そう言えば会ってくれるはずです。そう続けようとしたが、思い止まった。異世界から召喚されたはずの真矢に友人など、まず怪しまれる。
勇者の騎士団にいるなら、この人とも共闘する可能性だってあるんだ。違和感を覚えさせる訳にはいかない。
「いや、何でもない無いです」
「お、おぉ、そうか」
何か変な空気になってしまったが、師匠が気を利かせ帰ろうと言ってくれた。
「それじゃあ、また会いましょうルソルグさん」
「おう!今度は魔獣討伐の時にな!」
師匠が俺についてルソルグさんに説明していたらしく、また会いましょうの意味をしっかり受け取ってくれたようだ。
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俺は師匠の家へ帰った後、デバイスをいじっていた。
「初めましてキュウマ様。私はデバイス使用支援者、リノです。」
デバイス、というのはギルドで貰った紺碧のスマホみたいなひし形を立体にしたみたいな例のアレだ。
リノ、というのはデバイスを開いた時に流れ始めた音声ガイダンスのことだろう。多分。
「まずはデバイスを額辺りに当てて下さい。」
俺は言われた通りに額に当てる。
「はい、これで脳内リンクが繋がりました。」
「うおおおおおっ!?」
俺がこんなにも驚いてしまったのは、脳内に直接音声ガイダンスが流れたからである。
「視覚内へステータスウィンドウを表示します。」
「どおおおおおっ!?」
すると目の前にゲームのステータス画面みたいなのが表示された。
「これが現在のあなたのステータスです。スキルボタンは押すと覚えいるスキルを表示し、確認できます。終了ボタンを押せば画面が閉じます。」
よく見るとステータスの右端にスキル。左端に終了と書かれた枠があった。実際に終了ボタンを押すと他の画面が終了ボタンに吸い込まれるように消えていった。
終了ボタンは他の画面が消えると同時に展開と書かれ直されていた。ここを押したら今度はそのボタンから先程の画面が出てきた。
「うわー、よくわかんないけど異世界ってすげー・・・」
「お、やってんなキュウマ」
すると装備をはずし終えた師匠が別室から戻ってきた。
「てか今のデバイスは随分かっけぇよな。俺のころはほれ、こんな風に腕につけるやつだぞ」
すると師匠は腕時計型のデバイスを俺に見せる。
「キュウマのそれは頭に直接話すわ飛ぶわですげぇよな」
「え!?これ飛ぶの!?」
師匠は俺が驚いていることに驚いているようだったが、そんな事を気にするよりデバイスが浮遊することに気がいってしまった。
「あ、あぁ、手ぇ離してみろよ」
俺はゆっくりデバイスを離すとふわふわと俺の左肩辺りに移動してきた。
「おおー・・・」
最早言葉に出来なかった。
「あ、そうだスキル見てみよ」
俺は目の前のステータスウィンドウを操作を再開した。
「あー、まだねえと思うぞ。俺まだなんも教えてねぇからな。まぁあるとしたら黄色の枠が攻撃スキルで青が防御スキルだ」
「へぇ、じゃあ黒は?」
「なっ!?お前・・・嘘だろ!?」
俺のスキル一覧には一つだけ、黒枠のとあるスキルが載っていた。
にしても何で師匠はこんなにも焦っているのだろうか?
後で本編にも書きますが、この世界ではスキルと魔法は別物として扱われています。