暴露と約束
「そんで、一人息子がいた」
一人息子がいた、ということは今は・・・。
だが、俺が今住ませてもらっている部屋や、元からあった三人分の食器などの謎は解った。
「あの子は、私達が冒険者をやっていたからか、昔から冒険者に憧れててねぇ。魔獣にさえ手を出さなければ、ほとんど安全だし」
「じゃがある日・・・ドラゴンに殺されちまった」
「っ!?」
解ってはいた。解ってはいたが、いざ本人達の口から聞くと、感情が込み上げてくる。
「金色の鱗に青色の瞳、竜の王とも言われるレディアントドラゴン。そんなのに出くわしちゃ、歯もたたず、逃げることも叶わなかったみたいで、・・・うぅ」
「ロペルさん・・・」
「さ、次はキュウ坊の番じゃ」
「・・・俺、記憶喪失じゃ無いんです。」 「「っ・・・・・・」」
二人は悲しい顔をした。きっと、何となく分かっていたけど、どこかで信じてくれていたのだろう。
「そんで実は、此処とは別の世界から来たんです。」
「べ、別の世界じゃと?」
「その世界って・・・」
「そうです。真矢、勇者の住んでいた世界です」
「やっぱり、名前の規則性が似てるから、もしやとは思っていたけれど」
俺は話を続ける。
「それで、真矢は召喚された時、俺は何が起こっ たのか分からなくて、あっ、俺達恋人の関係だったんですけど、何処探しても見つからなくて、まぁ、当たり前ですよね。だって別の世界にいるんだもん。それで、ある日猫に泥棒されちゃって、追いかけてたらいつの間 にかこの世界に来ていた・・・って事なんですけど。」
二人は難しい顔をしていた。
「だから、俺が魔獣や魔王を倒せば、少しでも早く帰れるかなって、そうすれば、真矢の負担も減ると思うし、なので」
俺は気づけば苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
「ありがとう、キュウちゃん。そしてごめんね。」
ロペルさんは涙ぐんでいた。
「私達の勝手な都合で、あなた達を離ればなれにさせちゃって。本当にごめんなさい」
謝られると思っていなかった俺は驚いてしまった。
「そ、そんな、ロペルさんのせいじゃないです。謝らないで下さい」
どれくらい静かな時間が経っただろうか。またもや静寂を破ったのは、ドラードさんだった」
「キュウ坊の覚悟は伝わった。わしらじゃ止められんことも解った。だがキュウ坊、一つだけ約束してくれ」
約束それがどんなものだろうと、おれは守ろうとこの時思った。
「死ぬな」
「っ・・・はい!」
皆が悲しみに包まれてるなか、ドラードさんのその言葉は温かく、冷えてしまった俺の心には心地よかった。
翌日。俺の旅立ちの朝。
「キュウちゃん。行く前にこれを持っていって」
俺が渡されたのは藍色の少し古びたマントだった。
「それはわしらの息子・・・イルアの形見じゃ、わしらの気持ちももってっとくれ」
「ありがとうございます。行ってきます!」
こうして、俺の冒険者としての人生が始まった。
冒険者の人生と言っても、今の俺だと忽ちモンスター達に殺されてしまうだろう。そこでロペルさん達からの提案で、この森に家を建て住んでいる、ドミリという人を紹介してくれた。その人に戦いかたなどの冒険者として必要なことを聞けとのこと。
「お、この家かな?ごめんくださーい」
森のなかにある家なんてロペルさんのとこの家くらいしか無いらしいので、この家で間違いないと思うんだが・・・。
「返事がない!」
どうなってんだ?俺がいつ着いてもいいように、今日は家で1日待っててもらう約束なんだが。
「さ、探しに行くか・・・?」
俺は森のなかでうろちょろする危険性に、まだ気づけないでいた。
なぜキュウマは前に森で襲われたのに、また同じ過ちを犯すのだろうか・・・?こいつきっと将来大物になるな。