探索と衝撃
「なんだこれ!?うめぇ!!」
俺は異世界へ来てから初めての食事をしていた。
「ロペルさんめっちゃ料理上手ですね!」
ロペルさんとは俺が死にかけた時助けてくれた張本人だ。
「がははは!そうじゃろうキュウリくん!」
このめっちゃ笑ってる人はロペルさんの夫、ドラードさんだ。湾曲した角が生えているがどうやら人間とドラフのハーフらしい。
「てか、俺の名前は矢野窮真!キュウリじゃなくてキュウマですよぉ!」
「そうじゃったな、がははは!」
「あ、それより魔王がどうとかって話、もう一回お願いできますか?」
そう、俺は今この世界の常識などを聞き出している。この情報は生き抜く為にも必須だ。
「そういえばキュウリくんは記憶喪失じゃったのう」
俺は自分の名前と出身以外忘れてしまった事にしておいた。その方が色々都合がいいしな。
「だからキュウリじゃ・・・」
てか、この世界にもキュウリあるんだ。
「魔王ねぇ、あまり楽しい話ではないけれど、その事も忘れてしまったんじゃねぇ」
俺はすいませんと呟きながら話を聞く。
「今から丁度290年前、魔王を名乗る者が現れたわ。その魔王に、たった2日で世界のだいたい半分を占領されたわ。そして魔王領の中心に城を建てて、そこで魔力を今でも蓄えているの。世界を滅ぼす大魔法を撃つためにね」
俺は生唾を飲み込みながら一つの疑問点を聞いてみた。
「その大魔法っていつ溜まるんですか?」
「えっと、占領されてから300年後に撃つらしいから、後10年ね」
後10年。それが俺が元の世界へ帰る為のタイムリミット。
「なんとかならないんですか?」
「・・・なるかも、今から三年前に、勇者の召喚に成功したからね」
勇者。ゲームとかあまりやらない俺でも男心を擽る単語だ。
「あぁ、勇者はつよいぞう。何せ今まで12体しか倒されてなかった魔獣をたった三年で40体くらい倒したからの!がははは!」
「魔獣?」
「魔王城には98層の結界が張ってあるんだけど、その結界を守る番人の様なものよ。モンスターより遥に強いの」
モンスターと聞いて腹の傷が少し疼いてしまった。それより遥に強い、か。
「まぁその勇者様がいれば安心ですね」
「だといいんだけど・・・」
何故か二人は暗い顔をした。俺何かまずいこと言ったかな?
「そんなことより!キュウマくん!こんど町へ出てみない?」
「え!いいんですか?是非お願いします!」
よかった。何か落ち込んでると思ったけど元気そうだ。
一週間後。
「おお!思ってたよりでけぇ!すげー!」
すごいしか言えない自分のボキャブラリーを呪いつつも、まるで絵本の中のような美しい町に胸を踊らせていた。
「ふふ、ここはバルビの町って言うのよ。ここら辺じゃ三番目に大きい町だね」
「ロペルさん早く行きましょうよ!早く!」
「ふふ、全く男の子なんだなら」
俺がこの町でやるべきことは2つある。一つ目は制服しか持ってないから新しい服を買ってもらうこと。二つ目は元の世界へ帰る方法を探す。あの黒猫を探して帰りたいがこの世界も中々広そうだし、別の方法が良さそうと判断した。まぁ無けりゃ猫探すけど。
「って、全く手がかりねぇー」
「ごめんねぇキュウちゃん。貴方の町の情報何も解らなくて」
俺はあれからロペルさんにはキュウちゃん。ドラードさんにはキュウ坊と呼ばれるようになった。
「いえ、ロペルさんは気にしないでください」
ロペルさんには元の俺の町に帰る方法を探していたと伝えている。まぁ異世界のこととか信じてもらえないだろうし。
「じゃあ私は晩ご飯作るからいつも通りリビングで寛いでてね」
本来ご飯作るのとか手伝うべきなんだろうけど俺はケンカくらいしかできないからな。あとは物をよく壊すことか。
「あ、新聞」
俺はテーブルに置かれていた新聞を読んで見ることにした。いつもはどうせ文字なんて読めないだろうと無視してきたが。
「ん?これって」
そこには英語を左右対称になった文字が書かれていた。そういやロペルさんとか普通に日本語喋ってるしな。いや、にしても驚いた。
「これなら読めるな、よし・・・!?」
俺は新聞を一枚捲ると、そこには衝撃の写真が写っていた。
翌々考えてみると、この小説って恋愛(異世界)じゃなくてハイファンタジーじゃん\(^^)/